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第十五羽 突然のできごと

気づいたらそうなってた。

いつも一緒にいたはずの青虫が。

朝起きたら、そうなってた。

友達になれたと思ったはずの青虫が。



森の奥、風の当たらない枝がある。

太くもなく、目立ちもしない。

けれど、ぽてえなはその枝が好きだった。


そこに来ると、胸のざわざわが少し静まる。


枝の先には、動かないさなぎがある。

話しかけても返事はない。

触れても、何も起こらない。



それでも——

そこに“いる”。



ぽてえなは、羽をふくらませて枝に止まる。

離れたい気持ちと、離れたくない気持ちが、同じくらい胸にある。


「……ぷいっ」


小さくそっぽを向いてみるけれど、飛び立つことはできなかった。


ぽてえなは、毎日その枝に来た。



朝の冷たい空気の中。

昼のやわらかな光の中。

夕暮れの、影が長く伸びる時間にも。


雪が降る日も、月が満ちては欠ける夜も、

さなぎは動かない。


何も変わらない時間が、静かに続いた。


ある夜、風が強く吹いた。

枝が揺れ、森がざわざわと音を立てる。


ぽてえなは、少し離れた場所からさなぎを見た。


暗くて、よく見えない。


「……もう、いないのかな」


胸の奥が、ひやりと冷える。

近づくのが怖くて、そのまま動けなかった。



翌朝。



ぽてえなは、そっと枝に戻った。


……あった。


昨日と同じ場所に、

昨日と同じ形で。


「……あ」


声にならない声が、胸からこぼれた。


それから、ぽてえなは変わった。




話しかけるのをやめた。

つつくのも、確かめるのもやめた。


ただ、そばにいる。


飛びたい日もあった。

遠くまで行きたい気持ちもあった。


それでも、またこの枝に戻ってくる。


「……いまは、これでいい」


ぽてえなは、そう思えた。




ある日、ふと気づく。


動かないのは、止まっているからじゃない。

何も起きていないわけでもない。


変わる途中なのだ。


見えないところで、

ゆっくり、確かに。


ぽてえなは、羽をたたむ。



「……まつ」



ぷいっとするけれど、逃げない。


離れたくないけれど、何もしない。


何もできない時間を、受け入れる。


それが、いちばん大切なことだと

この枝で、ぽてえなは覚えた。


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