第十一羽 青虫との出会い
春になって、森にあたたかい風が流れはじめた。
里香によってキャンプ用品がすっかり片づけられ、こたつもホットミルクももうない。
でもぽてえなは、前よりずっと軽い羽で、森の中を自由に飛び回っていた。
少しさびしいけれど、それ以上に「外の世界ってこんなに広かったんだ」と思えるようになっていた。
ある日、お腹がすいて餌を探していたぽてえなは、落ち葉の影でうごめく影を見つけた。
──青虫だ。
ぽてえなは首をかしげる。
前なら「おいしそう」と思っていたはずなのに、今はまったく興味がわかない。
ホットミルクの甘い香りと、体の奥からじんわり広がるあのぬくもりが、まだどこかに残っていて、
別のものを食べる気になれなかった。
青虫はぽてえなが自分を見つめていることに気づき、
「た、食べられる!」
と体を小さく丸めた。
しかし、いつまで待ってもぽてえなは襲ってこない。
ただ、ぽてえな特有の“ぷいっ”とした仕草で横を向き、
「べつに興味ないし…」みたいな態度をとるだけ。
青虫は怖がりながらも、逆に好奇心がむくむく湧いてきた。
「え、えっと……その……食べないの?」
「ぷいっ」
「そ、そうなんだ……じゃあ、ちょっと近くに行ってみてもいい?」
恐る恐る寄ってきた青虫の姿に、ぽてえなは首をかしげつつも逃げない。
春の日差しの中で、ふたりの距離はゆっくり、ゆっくりと縮まっていく。
こうして、奇妙でふしぎな“はじめましての友情”が芽生えはじめた。




