第一羽 ぷいっの距離
ある日の冬ーーーーー
雪の森に、小さなシマエナガたちが飛び回っていました。
その中のひとり――「ぽてえな」。
丸っこくて可愛いフォルム。
ぽてえなは、仲間と一緒に、雪景色を楽しみ、枝の間をひらりひらりと飛び回る毎日。
羽を広げるたび、冷たい風に乗って自由を感じる。
でも、今日のぽてえなの心は、いつもと少し違っていました。
遠くの森の中で、赤い焚火がゆらゆら揺れ、湯気の立つマグカップが光を反射している。
そして、小さなこたつまで。
「……なにそれ。ぬっくそう。」
怖い。
でも、気になる。
羽をぎゅっと丸めて、ぷいっと体を反対に向ける。
それでも、目はこっそり光景に向いている。
「……近づいたら、どうなるんだろう」
心臓が小さくドキドキする。
ちょこっと枝の上をちょこっと移動し、距離を保ちながら見守る。
怖い。でも、目が離せない。
ぽてえなの黒い瞳は、焚火の揺らめきやマグカップの湯気、こたつのぽかぽかとした赤い光に吸い寄せられる。
あたたかそう。
ぬっくそう。
でも、怖い。
人間たちは楽しそうに笑い合い、声をかけ合いながら薪をくべ、こたつに足を突っ込み、ホットミルクを手にして「あったかいね」と言い合っている。
小さな声で笑う子どもや、ふわっと香るチョコやミルクの匂いが、ぽてえなの鼻先まで届くような気がした。
「……むり、でも、見たい……」
ぷいっ
体をそっと反対に向けながら、羽を小さく震わせる。
それでも、ちょこっと前に出て、またちょこっと後ろに下がる。
心の奥が、じんわりあたたかくなる。
怖い。
でも、少し嬉しい。
目の前の光景が、ぽてえなを少しだけ夢中にさせる。
「……触れたら……どうなるんだろう」
羽を小さく震わせながら、枝の上で身を乗り出す。
ちょこっ、ぷいっ。
ぽてえなの第一羽は、まだこたつには届かない。
でも、初めて目にしたぬくもりと、人間たちの楽しそうな笑顔に、心は確かに羽ばたこうとしていました。
木の枝の上で、ちょこ…ぷいっ…
冬の森に、ぽてえなの小さな心の揺れを、静かに見守る時間が始まったのです。




