表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/25

2

「ーーあの大通りのカフェにあるケーキがおすすめで、今の季節だとーー」


ペラペラと、あまり興味のない内容を自慢げに話す、目の前の令息に少しイライラとする。それをおくびにも出さず、ニコニコと笑ってはいるが、段々と聞き流すのすら飽きてきた。


(……これ、いつまで続くのかしら。)


つい先程、担任の話が終わり、今日は解散となった教室で、帰りの支度をして席を立った。廊下に出て歩いていると、私の進行を邪魔する令息がいたことに驚いた。


(私のことを知らないのか、なめているのかよね……。どうしようかしら。)


一応黙っていれば、儚げで守りたくなる美少女と言われた私は、傷物でなければ早く婚約も決まっていただろう。

そのためか、公爵家との繋がりが欲しい者や、私の容姿や魔法の素質が欲しい者からの、求婚は絶えないらしい。


ため息をつくのをぐっと我慢して、観察をする。

目の前の令息の目的が分からず、対応に困っていると、後ろから足音が聞こえた。

ふわっとラベンダーの香りがして、私の腰に腕が回る。


「リア。迎えに来たよ。」


「あっ、シリウス。」


私が名前を呼んだことで、目の前の令息の眉がピクリと動いた。私に向けて微笑んでいたシリウスは、黙ってしまった令息へ目を向けると、表情が消えて冷たい印象になる。


「……リアに何か用?というか、君誰?公爵令嬢であるリアを馬鹿にしてる?僕も知らないってことは、君、子爵以下だろ?」


冷たく言い放ったシリウスに、ぎょっとしてしまう。

ーーゲームでのシリウスも、アメリアが見てきたシリウスも、とても優しかったから。


(……物語とずれていると知ってるけど、これが本来のシリウスなのかしら?)


私が呑気なことを考えている間にも、シリウスは更に彼へ詰め寄っている。


「なんとか言ったら?君ごときが、リアを手にできると思ってるの?」


「シリウスっ!私は大丈夫だわ。……ほら、ね?」


ガタガタと震える、目の前の彼から気を逸らすように、シリウスの腕を撫でる。険しさの消えた顔で、私をジッと見た後、腰に回した腕に力を入れ、引き寄せられた。


「えっ。」


私が抗議をする前に横抱きにされ、有無を言わさずにどこかへ連れていかれる。


「シ、シリウス?私重いわよ?」


程よく筋肉をつけているため、他の令嬢より重いだろうと、シリウスへ告げたが目線を私に向けた後、ふわっと微笑んだ。その表情に、周りで見ていた令嬢が騒いでいるのが聞こえる。


「リア、可愛いよ。」


「……今、そんな話してなかったと思うわ。」


可愛いの言葉に、ドキドキと鳴る胸を落ち着かせて、答える。


「それよりも、下ろして。貴方のせいで目立ってるわ。」


文句を言うように頬を膨らませると、シリウスは、ふふっと笑う。


「僕だけのせいじゃないと思うけどね。」


小さく呟いたシリウスの言葉は、風に乗って消えていった。ジッと私に視線を落として、そっと下ろし立たせると、シリウスは私の手を引く。


「学園、案内するよ。迷子にならないでね。」


いつものように柔らかく微笑んだシリウスは、そのまま周囲に見せつけるように、私の腰に手を回して学園を案内してくれた。


学園は十六歳から三年通う中等部と、十九歳から三年通う高等部に別れている。貴族は中等部を出ることが普通だと言われており、高等部は跡継ぎや、王宮で文官として働きたい者が通う。

シリウスは高等部にあがり、校舎が違うのだが『ティアレイン騎士団』という、学生の騎士団のような隊で隊長をしている。そのため、よく中等部にも顔を出すのだと言っていた。


「私も、騎士団に入る予定なの。」


そう言うと、シリウスは困ったように笑う。


「……リア。無茶だけはしないでね。」


その言葉に素直に頷くと、ティアレイン騎士団について教えてくれる。


「中等部と高等部には、それぞれに隊長と副隊長がいるんだ。副隊長は三人で、隊長も副隊長も実力と推薦で決まる。」


「じゃあ、やっぱりシリウスはすごいのね。」


私の言葉に苦笑したシリウスは「次は守りたいからね」と呟く。よく聞こえなくて、聞き返そうとするがその前に、シリウスは続けた。


「騎士団は情報共有として、隊長と副隊長の合計八人で、週に一回会議があるんだ。」


だから中等部にも来ることがあるのだと、笑うシリウスに「そうなのね」と微笑む。

それから共用エリアの食堂や訓練場を見て周り、寮まで送ってもらった。


終始、微笑みながら柔らかく話すシリウスに、周りがザワザワとするくらい珍しいことなのだと、その時の私は知らなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
子爵以下ってマウント取っているけど拍車家だから公爵家の娘を呼び捨てってかなり調子に乗っているって周りに見られていてもおかしくないんだけどねシリウス君
う〜ん(ー_ー;)正式にお付き合いや婚約をしていない女性の腰に所有権を主張するかのように勝手に手を回してくる上に抱き上げる男は嫌だな(ー_ー;)やたらボディタッチしてくるヒドインと同じに思えて気持ち悪…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ