プロローグ
背中の大きな傷を鏡で確認する。横腹に残っている火傷痕は、薄いがはっきりと分かる。
「あぁ、いけない。早くしなきゃ、リリーに怒られてしまうわ。」
私が生きた証をそっとなぞって、『ティアレイン学園』の制服を手に取る。ブレザーとセーラー服を、足して割ったようなデザインは、乙女ゲームの舞台だからか、とても凝っていると感じる。
私ももう子供じゃない。服くらい着れるのだと言い張って、支度を自分でするようになった。学園初日からこうでは、リリーとハンナにお小言を貰ってしまう。
いそいそと可愛らしい制服に着替え、寝室のドアを開ける。
「おはようございます、アメリア様。」
「おはようございます。あと少しで呼びに行くところでした。」
「……おはよう。ハンナ、リリー。」
青い髪のショートボブを耳にかけて、ハンナはニコニコと紺色の目を細める。その隣で赤茶色の髪を一つにまとめ、無言で「早くしろ」と催促をするリリーを横目に、ソファに座った。
貴族が通うこの学園では寮生活になるのだが、身の回りの世話をする使用人を、連れてくることが出来る。私は公爵家という身分上、二人まで許されているため、いつも私の世話を焼いていた、リリーとハンナにお願いした。
二人は二十五歳で貴族なのだが、婚約者はいないらしい。私の顔が好きらしく、いつまでも仕えるのだとよく話をしていた。
「本日は入学式だけでしょう。寄り道をせずにお戻りくださいね。」
「……私を何歳だと思ってるの、ハンナ。」
紅茶を用意しながら、言いつけるハンナに苦笑する。すると、リリーが薄い黄色の瞳を細めて、疑うように私を見る。
「アメリア様は、大変お転婆ですので。」
リリーの言葉に、返すことが出来なくなってしまう。黙ってしまった私へため息をつくと、二人は朝食を食べたら早く行けと目線で言う。
いつも通り、フルーツと紅茶だけ貰うとカバンを手にした。扉に手をかける前に振り返り、二人に向かって制服のスカートを広げる。
「どう?変じゃない?」
「見た目だけは完璧でございます。」
「ええ。とてもお美しいですよ。」
二人の反応に「そうじゃないんだが」と思うが、いつも通りの反応に諦めた。
「まぁ、いいわ。……じゃあ、行ってくるわ。」
ニコッと笑って告げると、「行ってらっしゃいませ」と二人に言われ部屋を出た。




