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13

強い日差しの中、こまめに水分補給を行いながら声を上げる。いつも通りの訓練が終わり、解散の合図が投げられる。

放課後、騎士団の活動が終わり確認作業を行っていた。


「お疲れ様!」


後ろからノアの声がして振り返る。


「お疲れ様。」


「今日も暑いね。」


片付けの手伝いをしながらニコニコと笑うノアに、ありがとうとお礼を言い、世間話をする。


「あ、ノア。聞きたいことがあるんだけど。」


「ん?なぁに?」


リリアーナの言っていたことを確かめたくて、お昼の話を要約して説明する。すると、私の話を聞いたノアは、きょとんとしていて首を傾げた。


「アメリア、知らなかったの?」


「……え?」


私の顔を見て手を止めたノアは、おかしいというように笑う。


「私のクラスでも有名だよ?『妖精姫』だって。容姿端麗、頭脳明晰で努力家。優しい上に芯があって強い、公爵令嬢でなんで婚約者が居ないのかって。」


私の嫌そうな顔を面白がるノアをじっと見る。


「……誰よ、それ。そんな人知らないわ。」


「えー?私もこうやって笑ってるけど、大体合ってると思うけどな。正直アメリアが言ってるように、傷物だとか言う人はいないわよ。」


笑いながら呆れたように言うノアは、また片付けを始める。私も作業をしながらノアの話を聞く。


「じゃなきゃ王太子妃候補じゃないか、って言われてないわよ。」


ノアの言葉に驚いて顔を上げる。小さく「なにそれ」と漏らした私に、ノアは続ける。


「歳が近くて身分も申し分ない。能力もあって、容姿もいい。そう思われても仕方ないわよね。……まぁ、誰かのせいでアメリアに近づけないだろうけど。」


チラッとシリウスが居る方向に顔を向けたノアは、片付けが終わったからと私のそばにしゃがみ込む。


「アメリアはヴェルディア様が好きなんでしょ?」


「……そうだけど……。」


否定できない私が素直にそう言うと、ノアはニヤニヤと私を見上げる。


「まぁ、そうだよね。あれだけ大切だってアピールされたら、普通はそうなるよね!」


ケラケラと笑うノアから顔を背けると、訓練場の入口にゼインが見え、目が合った気がした。なぜいるのかとじっと見てしまうと、ゼインは背を向けて立ち去ってしまう。不思議な行動に首を傾げると、ノアに「どうしたの」と聞かれる。


「……ゼイン様が見えたから。」


「ゼイン様?」


首を傾げるノアに頷く。


「そう。ゼイン・マクリス。私と同じクラスの子息ね。」


私の答えに思い出したかのように、ノアは手を打って声を上げる。


「あぁ!彼も人気よね。……でも、珍しいね。噂しか知らないけど、訓練場に来るような人に思えないな。」


「人気なのね……。」


感心するように私が呟くと、ノアは「興味無さそうね」と呆れたような顔をした。目線を逸らした私にノアはため息をついて、「まぁ、いいや」と言う。


「どうせ、アメリアのことは、ヴェルディア様がフォローするんでしょうし。それよりも、夏季休暇。予定あるの?」


急にはしゃぐ子供のようなノアに苦笑する。


「まだ、なにも。剣の練習か魔道具の研究か。何しようかしら。」


頬に手を当てて真剣に考えると、ノアはポカンと口を開けて固まった。その様子に、何かおかしかっただろうかと首を傾げると、困ったように笑う。


「遊びの予定のつもりで聞いたんだけど、アメリアにその考えはないのね。……良かったら夏季休暇も、会わない?」


ノアの提案に、つい「いいの!?」と身を乗り出してしまう。そんな私に笑ったノアは、「もちろん!」と頷く。


「遊ぶって何するの?うちに来る?」


「え。それは……。公爵家だなんて、緊張するから無理だわ!」


ノアは想像したのか、顔を押えて青ざめている。普通は何をするのだろうと考え込むと、そんな私をノアは苦笑して見ている。


「普通に街歩きをして、カフェでお茶しましょ。」


ノアの提案に頷いた私は、作業を終わらせてノアと校舎を歩く。

楽しみだなと笑っていると、後ろから手を引かれる。いつものようにシリウスだろうと振り返ると、そこに居たのはゼインだった。


「……え?」


理解出来ずに固まっていると、ノアが反対の手を掴みゼインから離す。


「……それは流石に、アメリアに失礼なのではないでしょうか。」


少し震える声でノアが言う。平民である彼女が、ゼインに注意をするのは、勇気がいることだろう。大丈夫と言うように、ノアの震える手を掴んで笑いかける。


「なにか御用でしょうか?」


ゼインに振り向いて問いかけると、一瞬怯んだ彼は眉間に皺を寄せて呟く。


「……いや、申し訳ありません。……無理をしていないかと気になっただけでした。」


それだけを言うと、ゼインは私たちに背を向けた。去っていくゼインを見ながら、不思議な人だなと、ノアと顔を見合せて首を傾げていた。

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