第九十七頁 波乱
グレイス先生と王子様がにらみ合い、今にも何かが弾けて起こりそうな気配が立ち込める、
そして、何故かラスカさんは私を睨み付けてくる。
こっちはこっち何かが起きてしまいそうだ。
あぁ、ユヅキさん、ザックさん、ロランさん。皆に会いたいよぉ。そして、スミスさんとシーナさんの所に帰りたい。
もしかしたら、私は平和に暮らしたいだけなのかもしれない……
あぁ、オークレイ先生……
オーク先生とか言ってごめんなさい。
貴方の大人の包容力はステキでした。でも、私は何となくわかります、女になってからそこら辺の勘が鋭くなりました。オークレイ先生、貴方の所帯持ちでしょ、あの大人の余裕、絶対に所帯持ちです。
なんなら、娘が居ます。間違いない。
マジでこの展開メンドクサイ。オーク先生が居れば絶対に止めてくれた。断言できる。
「シャーー!! 全員掛かってこいやーーー!!」
私は目一杯に叫んだ。
もうどうなってもいい。これが最後でいい。もう飛べなくなってもいい。テーピングでガチガチに固めてくれ!!
「ア、アイラさん、ど、どうしたんですか!?」
「ア、アイラちゃん!?」
「な、なんですか貴女。突然叫んで!!」
三者三様に驚愕の表情を浮かべた。
でも、そんなの関係無い!!
もう、無茶苦茶にしてやる!!
「グレイス先生!! 思う存分、戦っていい場所って有りますか!? ありますやね!?」
「は、はい!! 都の外れに演習場が!!」
「よし!! そこで決着を着けましょう!! 皆、まとめて掛かってこいや!!」
私はこれ見よがしに片腕を挙げてみせる。そして、そのまはま学園の外に向けて歩き出す!!
そして、私はこのまま姿を消し、学園には二度と姿を見せない!! 学園編、完!!
どうせ、皆ドン引きして付いて来ねぇだろ!!
この勢いのまま、私は姿を消す!!
そして、ユヅキに慰めてもらう!!
くたばれ!! 学園編!!
大体のなろう小説の学園編面白くないんじゃ!!
折角、異世界に来たんだから冒険しろい!! 一つの町に止まってんじゃねぇぞ!! 異世界に来てまで引き籠ってんじゃねぇぞ!!
「うがーー!! うがーー!!」
「ア、アイラさん!! 大丈夫ですか!?」
「アイラちゃん、どうしたんだい!?」
げっ!! ついてきてるーー!? ついてきてるーー!?
な、なんで、なんで!?
しかも、よく見るとアイラさんも着いて来てる!!
なんで!? なんでなんで!?
やっべぇ、どうしよう。幽体離脱しそう!!
いや、もういい!!
やってまえ!! いてまえ!!
私はそのままの勢いで「ウガウガ」言いながら、演習場までやって来た。やって来てしまった。
「貴女、こんな所に私達を連れてきて何をさせるつもり。下らない事だった、容赦しないわよ!」
ラスカさんはかなり御立腹な様子でコチラに突っかかった来た、
「ア、アイラ、大丈夫ですか?」
「ア、アイラちゃん、どうしたの?」
王子とグレイス先生の二人はむしろ冷静になって、私の心配をしてくれてる。
その冷静さがもう少し速く欲しかった。
もう遅い。全員、ギッタンギッタンにしてくれる!!
「さあ!! 全員まとめて掛かって来なさい!! 私が勝ったら!! 皆、仲良くすること!! 心の中で、どう思ってるかは自由だけど!! 私の目の前では皆、仲良くすること!! 良いですね!!」
「いや、アイラさん。それはちょっと!!」
「アイラちゃん、それは無茶苦茶だよ!!」
「貴女、あたまがおかしいんじゃないですか!!」
「わーー!! わーーーー!! わーーーー!! 私が仲良くするったら!! 皆、仲良くするんですーーーーー!!」
もう、皆の所為で目茶苦茶なんだ!!
私だって目茶苦茶にしてやるんだから!!
私はえらく久しぶりに本を開いた。
そして、魔力を注ぎ込み。私の仲間達を呼ぶ。
「来て!! マシマロ!! ボアちゃん!!」
もう召喚術を隠すとかそう言うのもいい、面倒!!
目映い光が二つ現れると、目の前に二匹の魔物が姿を現した。
「こ、これは!! まさか!!」
「な、なんだい、それは!!」
「い、一体なんですか、その化物は!!」
「化物とは失礼な!! 私の大切な仲間ですよ!!」
「もあ~♪」
「ブルワァァ!!」
久し振りの呼び出しに興奮しているのか、二匹とも元気モリモリだ!!
ぶっちゃけ、勢いで二匹呼んだけど、以外と行けるみたい。それに……
その時、黒い陰が私の前に現れた。
疾風の様に速く、影の様に私の元に現れてくれる。
そう、ユヅキさんだ!!
「おい、アイラ。これは一体どういう状況だ?」
どういう状況? それは私もわからない!!
「こ、これは正しく召喚術!! しかも、現代の召喚術ではなく。真の召喚術!!」
グレイスさんが目を丸くしてコチラを見ている。
「す、凄い、アイラちゃん!! こんなに間近で魔物を見れるなんて!!」
王子様は呑気にも、こちらの方を目を輝かせて眺めている。
特にユヅキさんに霧中らしく、彼の巨体を眺めている。
「な、なんですかこれは!? あ、あり得ない、あり得なませんわ!!」
そう言うとラスカさんは一歩後ずさった。
さあ、もう無茶苦茶にしてやる!!
「さあ!! 皆さん!! 全力でじゃれろ!!」
私のその号令で、マシマロとボアちゃんが走り出した。
それを見て、グレイス先生とラスカさんが逃げ出す。しかし、それを見た二匹は野生の本能が刺激されたのか、一目散に二人を追いかけ、あっという間に追い付くと思う存分じゃれついて見せた。
どうだ、参ったか!!
「おい、アイラ。もう一度聞くが、これはどういう状況なんだ?」
「……す、すいません。私もわかりません」




