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幻想のグリモアール  作者: ふたばみつき
第8話 学園編~school Life~
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第八十八頁 初めての授業

「遅いぞ、アイラッ!!」


 オーク先生のそんな声が演習場に響き渡る。


 私は演習場に着くと早々、彼の声と共に大衆の注目を浴びることになった。

 見ると、オーク先生は少しイライラした様子でこちらを見ている。


 遅れちゃったのかな?


「授業が始まる前に準備をする事もあるんだ。今度からは少しは早めに来るようにするんだぞ! わかったか、アイラ!!」

「は、はい! わかりました!!」


 すると、オーク先生は満足したらしく頷くと他の生徒達に視線を向けた。

 と、取り敢えず、遅刻はしてないのかな?

 私はそろりそろりと生徒の元へと忍び寄り、彼等の集団と同化する。

 そして、集団と同化した私を確認するとオーク先生はおもむろに口を開いた。


「今日の授業は“魔力防壁”の授業だ。既に何度か授業を受けている者もいると思うが復習も兼ねて簡単な説明から入るぞ……」


 もしかして、私が来るまで待っててくれたのかな? そうだとしたら、オーク先生って悪い人じゃない?


 悪いオークじゃない?


「“魔力防壁”とは文字通り。自らの魔力で相手の魔術を押し退ける技術だ。これにより魔術に対する防御を可能にする。魔術同士の戦いに置いては必要不可欠な技術となる」


 うんうん。なんとなくだけど、私の考えた仮説はそこそこ合っていたみたいだな。

 思わず、頷いてしまう。


 そんな折り、小さな声が私の耳に入って来た……


「アレが特待生試験受かったって言う奴か?」

「本当にアレが受かったのかよ、なんかの間違いじゃないか?」

「でも、俺は見たぞ。彼女がオークレイ教授の“魔力防壁”を越えて攻撃を通したのを……」

「でも、アレって最終的には魔術じゃなくて物理的な方法で勝ったって感じじゃないの? それで合格ってありなの?」


 ははは、なんも言えねぇ……

 確かにアレは魔術ではなく、物理ですね……


 私の魔力で剣に電気を纏わせて電磁石に変え、それで私の体内の魔力も電気に還元して反発させる。

 そして、勢いよく飛んでった剣は防壁に差し掛かった所で電気を纏った魔力は弾かれる。だけど、剣自体は慣性の法則でそのまま相手に飛んでいく。相手は死ぬって感じ……

 あれ、マジでグレイス先生が助けに入ってくれなかったらヤバかったな……

 

 と、私がそんな事を思っている最中も周りの生徒達はヒソヒソと小声で話している。


「それにあの娘だけローブが変なのよ。風紀が乱れるって注意しても聞かなかったんですよ」

「その話、知ってます。ラスカ様が注意したのにろくに聞きもしなかったそうですよね。まったく、失礼な人です」


 いやはや、好き勝手言われておる。それにラスカ様だか、ドリル様に注意されたんじゃなくて、その取り巻きに注意されたんじゃなかったっけ?

 まあ、私自身、好き勝手やってる自覚があるから、反論もしませんしけど……


 我ながら、ちゃんと問題児ですね……


 今朝も学長から直々に怒られましたし。

 そして、恋ばなをされそうになったし。


 はあ、もしかしたら。私の学園生活は既に暗礁に乗り上げてしまったのかも……


「おい!! 私語は慎め!!」


 その時、先程までの小声を遮る様にオーク先生の声が響き渡った。やはり、先生に怒られるとしょんぼりしてしまうのか、全員静かになった。


 すると、それを見てオーク先生は満足した様に頷く、私に視線を向けた。


「おい、アイラ! 先ずはお前だ、取り敢えず皆の前でやってみろ!!」

「えぇ!?」


 いやいやいや、出来ません出来ません!!

 出来ないから教えてもらいに来たんですよ!!


 私はブンブンと思いっきり首を振ってみせた。しかし、そんな私の様子なんてお構い無しにオーク先生はこっちに来いと手招きをしてみせた。


「いいから来い、アイラ! ここにいる者は“魔力防壁”を修得しておらんのだ。出来なくとも笑う奴などおらん。笑う資格もない。だから、安心しろ……」


 そう言うとオーク先生は尚もこちらに手招きをしている。


 その目はどこか優しげな目をしているようにも見える。なんだろう、一応、私に気を使ってくれてるのかな? もしかしてこの人、本当にいい人なのかな?


「わ、わかりました……」


 私はそう言うと、意を決して足を踏み出した。そして、皆の前に出ると、視線が一斉に私に集まるのがわかった。


 まるで、値踏みするかの様な視線。あるいは完全に下心が見え隠れする視線。これは私の胸をチラチラ見ているのでまるわかりだ……

 それと、明らかな敵意を向けて来ている視線も感じる……


 はうぅ…… どうしよう…… 

 どうすれば良いんですか先生?


 助けを求める様にオーク先生に視線を向けると、先生はゆっくりと頷いてみせた。

 そして、その口をおもむろに口を開いた。


「先ずは魔力を放出しろ」

「は、はい!!」


 私はそう言うと全力で魔力を放出してみせた。

 それと同時に蒼い光が私から溢れ出て来た。そして、それを確認するとオーク先生が口を開いた。


「よし、次は魔力を自分の周りに滞留させろ、自分から魔力が離れ過ぎないように流れ作るのだ。そうすれば自然と魔力は球形を作り出す!」

「はい!!」


 なんとなくイメージは出来る。恐らく、流れるプール的な感じだろう、それに水が溢れないように水を足して行く様な感じだろう。

 

「むむむ……」


 頭の中でイメージを作り、それを魔力にトレースする。

 すると、私の身体から溢れる光がゆっくりと流れを作り出し、少しずつ私の周りを滞留し始めた。

 これに更に魔力を放出する……


 すると、少しずつ魔力の滞留が強まって行き、球形を作り出し始めた。

 

「うむ、いいぞ。やはり、才がある。そのまま続けるんだ……」

「はい!!」


 オーク先生の言う通り、私は魔力を放出し続ける。少しずつ魔力を注ぎ込み、やがて魔力は球形を作り挙げた。


「よし!! いいぞ、流石だ!!」

「は、はい!!」


 な、なんとか形にはなった。


 な、なったけど今のどんくらい時間かかった? オーク先生はこれを一瞬でやってたの? それに先生の防壁は綺麗な球形をだった。でも、私の防壁は少し不安定なのか、時おり歪んだりしている……

 

 やはり、いきなり完璧とは行かないのだろうか? 

 だけど、先生を見ると、笑顔で頷いている。


「どうだアイラ。これが“魔力防壁”だぞ」


 そう言うとオーク先生は火の玉を作るとこちらに投げてみせた。

 もちろん“魔力防壁”により火の玉は私には届かず、防壁の境で破裂すると飛散した。


 おお、す、すごい。私にも出来た……

 で、でも……


「でも、先生みたいに綺麗な球形じゃないですし。時間もすごい掛かっちゃいました……」

「うむ、それは仕方ない。数を重ね、安定性と速さを突き詰め、練度を上げて行けばいいだけの話だ」


 そう言うと、オーク先生は力強く頷いた。

 私もそれに答えるように頷いてみせる。


「よし、アイラ“魔力防壁”習得だ。あとは自己研鑽に勤めるように!」

「はい!!」


 オーク先生はそう言うと手で生徒達の方へと戻るように諭してくれた。

 私は防壁を解くと、それにしたがって生徒達の中へと戻った。


「はあ……」


 思わず溜め息を吐いてしまう。

 でも、この疲労感は何処と無く充実感も伴っていて心地がいい。


 それになにより楽しい……

 この学園に来てよかった……


「お疲れ様、アイラちゃん」


 その時、背後から誰かが私の名前を呼ぶと肩を叩いた。それに誘われて振り替えると、そこには噂の王子様がいた。


 その姿を見て、私は思わず目を丸くしてしまった。

 そして、彼は私の驚愕の表情を見ると、何故だか嬉しそうに微笑んでみせた。

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