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幻想のグリモアール  作者: ふたばみつき
第8話 学園編~school Life~
87/100

第八十六頁 説教

 グレイス先生の部屋から、何故か追い出された後、私は意味もわからず呆けていた。

 何だか、意味がわからん。

 

 しかし、取り敢えず日も暮れていたので、その日は寮室で休んで明日の授業に備えようと眠りについた。


 そこまでは覚えている。

 多分、ちゃんと部屋の鍵もかけた。


「おい、起きろ! 起きるんじゃ!! アイラ!!」


 何故かわからんが、学長が私の顔を覗き込んでいたのだ。


「え?」


 周りを見ると、そこは私の寮室だった。となると私が変な所で寝てる訳ではないらしい。

 それに多分だけど部屋の鍵はちゃんとかけたはずだ。


 なのにどうして……

 夢、かな?


「不思議そうな顔をしておるの。まあ、わしに取っては壁なんぞ無いに等しいと思っておけ。それよりだ! 先ずはおぬし!! そこに座れ!!」


 そう言うと学長は部屋に置いてある勉強机を指差した。そして、その机の備え付けの椅子を掴むとガタガタと揺らして見せた。


 つまり、その椅子に座れと言うことだろう……

 

「は、はい……」


 私は寝起きの身体を起こすと重たい足取りで椅子に座った。

 外を見ると空が白んでいたので。我ながら、かなりの早起きだなと思った。


 なんか、得することでもあるかな?


 私はそんな事を思いながら学長に視線を戻した。すると、彼女は勢いよく口を開いた……


「まったく、おぬしは入学してさっそく厄介事を引き起こしてくれたの!」

「え?」


 なんだろう、全然心当たりがない。それともあの天元突破女の事だろうか?


「言っておくが、ラスカの娘についてはおぬしに非はないから怒ってはおらん!」

「え!? じゃあ、なにを怒って……」

「わからんのか!? 昨日の事を思い出せ!」


 わからん、私は何かをやらかしただろうか?

 偉い人に失礼な事とかしたか?

  

 いや、してない……

 いや、してるわ!!


「もしかして、王子様に失礼な態度取ったとかですか?」

「それも違う! まあ、そこも面倒なことになってはいるが、それもおぬしが悪い訳ではないか怒ってはおらん!!」


 そう言うと学長は私の胸をつんつんとつついてみせた。そして、頬を僅かに膨らませると、こちらを上目遣いで見詰めてきた。

 恐らく、大層怒っているのだろうが全然怖くない。すごく可愛い。愛しちゃいそう。


 いや、それはいいとして。まったく心当たりがない……


「わからんのか?」

「は、はい。わかりません……」


 私がそう言うと学長は深い溜め息を吐くと腕をだらりと下ろした。

 そして、眉間に皺を寄せると、それを指で押さえながら難しい顔を浮かべた。


「普通、年頃の女の子が男の部屋に一人で行くとか有り得ないだろ!? それに相手は講師だぞ!? 変な噂でも流れたらどうするつもりだったんだ!? お前はそんな事もわからん常識知らずのお嬢様なのか!?」


 そう言うと学長は指先で私のおでこをつついてみせた。

 その言葉で、やっと昨日の出来事が鮮明に脳裏に浮かんだ。


「あ、あわわわわわ!! や、やっぱり、あれって不味かったんですか?」

「不味いに決まっておろう!! この天然世間知らず娘!! 相手がグレイスでなかったら、どうなっていたかわからんぞ!!」


 うっ、全く持って反論の余地がない。完全に私が悪い。

 な、なんで、私はそんな大事なこともわからなかったんだ……

 

 あ、男だからか……


 そうだ、そうだった。頭のどっかで男だから大丈夫、大丈夫程度に思っていた。完全に甘い考えだった。やってしまった。

 次からは徹底して気をつけなければ……

 

 ま、まって。

 も、もしかしてグレイス先生にも迷惑を掛けてしまったのでは……


「あ、あのグレイス先生は?」

「安心しろ、今回は誰にもバレなかった。と言うことにした」


 した? な、なにそれ、怖い。

 私が不思議そうな顔をしていたのがわかったのか、学長は直ぐに口を開いた。


「しょうもない覗き魔がいたんだ。まあ、そいつはグレイスが魔術で記憶を消したから心配はない。それで、今回は何もなかった、と言うことで話を進めることにしたんだ」

「覗き魔?」


 え? そんなのいるの、この学園……

 こ、怖いんですけど……


「安心しろ、学園には特殊な術式が施されていて、普通は覗きなんてできん。出来たとしても直ぐにバレる」

「は、はあ……」


 なるほど、それでグレイス先生が覗き魔をとっちめたのか。それで記憶をポカンとしたと……

 

「全く、今回は上手く隠蔽出来たから良かったが、次は無いと思え、いいな!?」

「は、はい!! 申し訳ありませんでした!!」


 私は出来る限り全力で声を上げた。みると、学長はそんな私の様子を見て満足したらしく笑みを浮かべている。


「よし、今回はそれで許すとしよう。いいか、おぬしは可愛い可愛い女の子なんだぞ。次からはもっと警戒しろ。男なんぞ、所詮は皆、狼なんじゃ……」

「は、はい!」


 はあ、よかった~

 グレイス先生のお陰で面倒なことにならずにすんだ~


「ところで……」


 不意に学長の声が響いた。

 見ると、学長は不適な笑みを浮かべながらこちらを眺めていた……


「昨日、グレイスとはどこまで行ったんじゃ~?」


 そう言うと学長は鼻息を荒くしながら私を見詰めてきた。その姿は、彼女のその可愛らしい姿からは想像もつかない程のスケベ顔を浮かべていた。

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