第六十七頁 アイラVS魔力防壁
「ふむ、魔力量は中々だな。悪くない……」
なるほど、これが“魔力防壁”か……
その熱風の中、涼しげな顔でオーク先生が呟いた。
なんとなく、わかったぞ。
俺は感覚で魔力を水に例えた。まるで水が高い所から低い所へと流れる様に、魔力は濃い所から薄い所へと流れて行くと……
それに添って考えるなら、あの“魔力防壁”なる物は氷だ。この考えでニュアンス的には間違っていないだろう。
流れる水の中に氷を入れれば、水は氷を避けて流れていくことになる。あの“魔力防壁”も同じ感じだった。
非常に密度の濃い魔力の塊を、薄い密度の魔力の流れは避けて、流れて行ってしまうと言う所だろう。
「どうした、もう終わりか?」
オーク先生はそう言うと、グレイス先生の方に視線を向けた。その視線を受けて、グレイス先生がこちらに視線へと投げ掛けてくる。
「どうですか、アイラさん……」
俺は直ぐに首を横に振ってみせた。
まだだ、まだ終わりじゃない。
「“アレ”を使ってもいいですか?」
俺はそう言うと一体の甲冑象を指差した。“アレ”で少しやってみたい事がある。そんな視線をグレイス先生に向ける。
すると、その様子を眺めていたオーク先生が眉をしかめてみせた。
「なんだ、剣を使って切りかかって来るつもりか? 野蛮な奴め……」
「違います……」
俺はそう言うとおもむろに甲冑象に近づく。そして、その手に掲げられた剣を手に取った。
そして、その剣に魔力を込める。
すると、蒼い光が剣から溢れ出てきた。
よし、よし、出来る出来る。
出来たら次だ……
俺は込めた魔力をあるものに変化させてみる。
すると、蒼い光がバチバチと弾け初め。その光はやがて稲光を発し初めた。
よし、これも出来る……
俺は咄嗟にグレイス先生に視線を向けた。
すると、彼は俺が何をするつもりか、何となく察しているらしく小さく頷くと口を開いた。
「試験は続行します」
「ふん、何をするつもりか知らんが、さっさと済ませてくれ」
そう言うと、オーク先生が呆れた顔でこちらを眺めてくる。恐らく、グレイス先生とは反対に、彼は俺が何をするかわかっていない様だ、そんな雰囲気がする。
今に見ておれ、目に物見せてくれる。
俺は剣と腕にありったけの魔力を込める。
それと同時に剣から発せられる稲光が増していく。
俺はそれを確認すると、込める魔力に新たな細工を施す。
俺の予想ではこれで上手く行くはず。魔力は俺が思ってるより遥かに万能で自由だ。これくらいの事、きっと出来るはずだ……
その瞬間、俺の握ってる剣が独りでに動き出そうとしている感覚がした。
よし、来たぞ……
俺はその瞬間、手に持った剣に全力で魔力を注ぎ込んだ。
その瞬間、俺の手から剣が凄まじい勢いで飛んで行った。
それも、オーク先生に向けて……




