第六十五頁 演習場
とても大きい広間だ。
園内演習場とは言っていたが、雰囲気としては体育館って感じがする。良く見るとキャットウォークと言うかギャラリーと言うか、そんな所も設けられている。
それに何故かわからんが、剣を構えた西洋甲冑像が、あちらこちらに配置されている。その雰囲気も相まってか、何となくコロシアム見たいな雰囲気もしなくはない。
俺はひとしきり演習場に見渡すと視線を生徒達へと戻した。
見ると彼等の視線がこちらに集まっている。
あらあら、これは恥ずかしいぞ……
取り敢えず、軽く会釈をして見せる……
勿論、誰と返してはくれない……
見ると、生徒と思われる人達は皆、お揃いの黒いローブを纏っている。恐らく、あれが制服みたいなモンなんだろう。
黒色を主体としており、縁には金の装飾が施されていて、威厳とした雰囲気を感じさせる。
知ってる? デザイン業界ではね、黒に金ってのは安易に高級感を出すイメージとして多様されるんだよ。コンビニの金の○○って見たことない?
あれ、そう言う事なんだよ。
まあ、安易過ぎて胡散臭さも漂っちゃうことも有るんだけどね……
名刺が黒金は胡散臭さいぞ!! 皆も気を付けてね!!
まあ、そんな名刺の奴はホストくらいしかいないけどね!!
まあ、なんの話してるのってなってるだろうけど……
俺は今、果てしなく緊張してきたって事ですよ。
気を紛らわせる為に変な事を考えるしかないんだよ~
「何の用だグレイス。授業中だぞ!!」
その時、生徒達の奥から一人の男性が出てきた。
その出てきた男性を見て、俺は思わず眉を潜めてしまった。
「入学希望者です。試験の用意を頼みます」
「ふん! 授業中だと言うのに面倒な奴め!」
なんと、そこにはちっさいオークがいたのだ。
正しくはオークの様な顔をした、ちっちゃいおっさんがいたのだ。それはそれは、とにかくオークにそっくりさんだった。
それは人と呼ぶには余りにも豚顔過ぎた。豚顔で、鼻も大きく、二重顎で、そして、豚顔過ぎた。それは、まさにオークだった。
思わず「オーク」と口に出して言いそうになってしまったが、その言葉が口を出る寸前で急いで口をつぐんだ。
先程のグレイス先生の態度とかを見るからに、この人は多分偉い人なんだろう。だから、失礼があってはいけない。
取り敢えず、猫は被っておかなければ。
俺はそう思うと、勢い良く頭を下げた。
「御忙しいところ申し訳ありません。私はアイラと申します! どうぞ、よろしくお願いします!」
「はんッ! これで他愛もない手合いだったら、入学なんぞ承知せんからな!」
うひ~ この人は間違い無く苦手だ~
勘弁してよ。普通にパワハラでアカハラだよ~
俺が渋い顔をしているのを他所に、オークの様な顔をした先生が生徒達に向き直ると勢いよく声を荒げた。
「お前らは全員上に行っておれ! そして、この私が身の程知らずに魔術のいろはを見せ付ける所を良く見ておくのだぞ!」
そう宣言すると、彼はゆっくりと演習場の真ん中へ移動した。
そして、こちらに威圧する様な眼差しを飛ばすとその身体から紫色の魔力が溢れ出てきた。
そして、それは滞留する様に彼の周りにまとわりつくと、その量を増していき。やがては彼の身体を覆い尽くす様に、綺麗な球形を描く結界を築いて行った。
なるほど、多分アレが“魔力防壁”だな……
「さあ、こい小娘。このオークレイ・エルオディオス。貴様がどれ程世間知らずか教えてしんぜよう!」
そう言うと彼は、こちらに強い睨みを聞かせ威圧して来た。




