第五十八頁 王都のギルド
王都のギルド。それはそれは豪華で、凄まじい強者どもが集まっているのだろうと胸を踊らせていた俺達一行は、余りの衝撃に開いた口が塞がらなかった。
なんと言うか、その……
まあ、残念な事に、ここのギルドは酷く寂れていました……
それはもう惨たらしい程、酷い事に……
まるで廃墟と言った感じだ。
もちろん、窓ガラスも割れている。
さぞかし昔は立派な出で立ちをしていたであろう石造りの壁は所々ツタが蔓延り。そのツタのせいか、あちらこちらがほころんでもいる。
そして、窓ガラスも割れている。
美しい廃墟100選みたいなのがあったら96位くらいに入ってそうな出で立ちをしているが、ここはなんと廃墟ではないらしい。
なんと、窓ガラスが割れに割れているのにだ……
アト・クラフトにあったギルド《草原の狩人》とは雲泥の差だ。
一体、なんでこんなになっちゃったんですか?
殺人事件でもあったんですか?
あるいは幽霊が出るとかですか?
「な、なんじゃこりゃーー!!」
恐らく、一同が思っていたであろう事を隣にいたザックさんが大声で口に出していた。その余りのデカイ声に、俺は耳がキーンとなってしまった。
それにしても、本当になんじゃこりゃ……
「なんじゃ、お前らッーー!!」
その瞬間、天かデッカイ声が降ってきた。
そのデッカイ声にまたもや耳がキーンとなる。
これはまさか!? 髪の御告げか!? と、思う訳もなく視線を上に向けると、二階の窓から一人の老人がコチラを見下ろしていた。
もちろん、その窓のガラスも割れている。
「なんなんじゃ、お前らッーー!!」
余りのデカイ声に俺は思わず耳を塞いだ。
なんなんじゃ、あのジジイは……
ま、まさか!? 野生のホームレス!?
「おい、そこのじいさん!! ここはギルドじゃねぇのか!?」
「ここはギルドじゃーー!! なんのようじゃ!! なんなんじゃ、お前らッーー!!」
ザックさんの声も、ジジイの声もすっごく大きい。耳を塞いでいても丸聞こえだ。
しかし、俺のそんな様子を気にするつもりはないらしく、二人は尚もデッカイ声で会話を続けだした。
「俺等はアト・クラフトの『草原の狩人』から来た!! ここのギルドで世話になりたい!!」
「世話する余裕なぞ、ウチにはないわーー!!」
な、なんと清々しいジジイだ……
ここまで来ると寧ろ気持ちがいい……
「まじかよ!! じいさん、どうすりゃ俺等を泊めてくれる!?」
ザックさんは尚もジジイに向かって大声で声を発している。
て言うか、ここはもう諦めて普通に宿とか探した方が良いのでは?
「知るかーー!! そこら辺の宿でも借りてろーー!! とっとと帰って寝てろ、若僧がーー!!」
ああ、なんという事だ……
あれだけ、王都と言う環境にワクワクしていたのに、そのワクワクがドンドン失望に変わって行ってるのがわかる。なんだこれは……
なんだ、あのジジイは……
なんなんだ、このギルドは……
「ザックさん、行きましょう。どうやら、ここのギルドは忙しい様です。宿は他を当たりましょう……」
ロランさんがおもむろに呟くと、ギルドに背を向けて歩き出した。俺も、それに従って歩き出そうとした。その時、ギルドの扉を勢いよく何者かが開け放った。
その勢いで扉がガタンと音を立てて外れた。
しかし、そんなの全く気にもせずに一人の少女がそこから現れ、こちらへとズイズイと近づいて来た。
「いらっしゃいませ!! 冒険者様!! ようこそギルド『王の杖』へ!!」
そう言うと少女は俺達に向かって満面の笑みを向けてきた。
い、一体なんなんだ、このギルドは……
オラ、なんか違う意味でワクワクすっぞ!!
 




