第五十七頁 王都デュラン
とてつもなく大きな城壁が俺達の前に広がっている。材質は岩を削り出した物だろう。とても綺麗に研磨されているのがわかる。
日が傾き、太陽も夕日色に変わる頃だからだろうか。その城壁も夕日色に輝いている様に見える。
城壁だけで、王都が技術の高い石工職人を抱えてるのがわかる。それにこの大きさを見るに建築、設計の能力も高いだろう。
やはり、王都と言うだけあって。色々と格が違うな。
城門の方を見ると、その向こうの景色が目に入ってくる。
その景色だけでも、かなりの人達が行き来している。黄昏時だと言うのにかなり活気づいているのが見てわかる。そこで初めて実感する……
やった、王都についたか……
そう思った矢先、ユヅキさんがおもむろに口を開いた。
「俺はここまでだ、お前達の幸運を祈るぞ。アイラも、何かあったら呼んでくれ、直ぐに駆け付ける」
そう言うと、ユヅキさんは颯爽と森の方へ駆け出し、その姿を消した。
その様子にザックさんとロランさんか不思議そうな顔を浮かべた。なんとなく言わんとしている事はわかる。
「あの人は本の中に入ってるのが性に合わないみたいなんです」
「ああ、成る程ね。つまり、放し飼いって奴か……」
そんな犬みたいな感じで言わないで欲しいけど、他に良い例えが思い浮かばなかったので、取り敢えずはそんな感じだと苦笑いと共に頷いて見せる。
「それにして、やっとつきましたね。昨日はワイバーンに襲撃されて、どうなるかと思いましたが。無事にたどり着けて良かったです……」
「ああ、全くだ。あの時は流石に肝を冷やしたぜ……」
「僕も矢が弾かれちゃうからどうしようかと思いましたよ……」
俺達は道中の思い出を語りながら城門をくぐり、王都へと足を踏み入れた。
「ふあ……」
見ると、そこは大きな街道になっており、道の両端には大きな建物が所狭しと並んでいる。
それもよく見ると服屋であったり、果物屋であったり、飲食店の様な物が立ち並んでいる様に見える。
大通り、メインストリート? と言う奴だろうか。人も沢山行き交っており、とんでもない賑わいを見せている。時折、馬車が見受けられるたりもしていて、明らかにアト・クラフトと比べると活気付いている。
アト・クラフトだったら、馬車道なんて滅多に見ないし。こんな黄昏時になったら、人通りも一気に減る。
「す、すごいですね……」
「ああ、ここが王都デュランか……」
「ですね……」
俺達は一同は思わず言葉を失っていた。
完全におのぼりさん状態である。
いかんいかん、都会の雰囲気に飲まれてはいかん。先ずはやることをやらねば……
と言った所で何をすればいいんだ?
「あの、これから何をすれば良いんですか。私達は?」
俺は思わず機能停止している二人に向かって問い掛けた。
すると、ザックさんが我に帰ったのか、あたふたしながらも口を開いた。
「あ、ああ…… 先ずはここのギルドに向かう。認識証を見せれば迎え入れてくれるはずだ。今日はそこで休もう。アイラもそれでいいか?」
ほう、成る程!!
俺は「納得した」と勢いよく頷いてみせた。
それを見たザックさんも頷いた。ロランさんも少し遅れるながらも頷いてみせた。
みんな、ちゃんと浮わついてしまってる。
俺達の反応を見たザックさんは再び頷くと、おもむろに口を開いた。
「よし、なら行くか……」
その言葉を切っ掛けに、俺達は王都のギルドに向かって歩み始めた。




