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幻想のグリモアール  作者: ふたばみつき
第1話 新たな世界へ~to be isekaied~
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第二頁 謎の遺体

 俺は呆然と何者かの遺体を眺めていた。

 自分の身体が芯まで固まっているのがわかる。まるで蛇に睨まれた蛙のように動けなくなってしまっている。自分の呼吸が段々と荒くなって行くのもわかる。

 落ち着け、落ち着くんだ自分。こういう時にテンパるのが一番良くない。それだけはなんとなくわかる。


 取り敢えず冷静にだ、冷静に……


 遺体に釘付けになった視線をやっとの思いで反らすと遺体を見ない様にしながらテントの奥へと視線を移す。

 なにかわからないが、そこに何かがあるのだ……


 あれは…… 箱だろうか?


 なにやら大切そうに保管されていそうな箱だ。

 果たして、どうするべきなのだろうか。あれを調べてみるか。それとも、このままそっとして置くべきなのか。

 少なくともあの箱を調べるには目の前にある遺体を物理的にも精神的にも越えて行かなくてはならない。

 

 正直、どうしてかわからないけれどあの箱は調べなくてはならない。そんな気がする。

 そして、この遺体もこのまま放置していて良いとも思えない。出来る物ならば墓の一つでも作って弔ってあげたい。


 もしかしたら、俺がここで目覚めた事に何か関係があるのかもしれない。これは酷く希望的な観測かもしれないが、そんな気がしてならない……


 そう、何故だかそんな気がする……


 俺は意を決して、テントの中にある遺体を丁寧に外に出すとテントの中へ戻り問題の箱へとにじりよった。

 その箱は非常に綺麗な金の装飾を施されており。まさに宝箱と言った風体をしている。

 大きさは段ボール箱程度の大きさだろうか結構大きい。鍵穴の様な物はなんでか見当たらない。

 一体、どうやって開ければ良いのだろうか。


 そんなことを思いながら俺は箱に触れた……

 すると次の瞬間、箱が青く輝き出し蓋が独りでに開いたのだ。


 俺は思わず目を見張ってしまう。そして、一度だけ遺体の方に視線を移した。

 既に肉を失った白骨は空洞になった瞳でこちらを見詰めている。俺はその瞳を見つめ返すと再び箱に視線を戻した。そして、箱をゆっくりと開けその中身を覗き込んだ。


「これは…… 服と本と眼鏡?」


 服は何故だろうか。あの…… 童貞を殺すワンピースが入っていた。あのコルセット的なのが腰にある奴。名前は知らん。


 取り敢えず、おもむろにそれらを拾い上げる。

 すると、ハラリと一枚の布切れが落ちた。


 黒のパンティである……

 しかも、スッケスケの奴……


 思わず振り向くと遺体を睨み付けてしまう。コイツは一体何者なんだ。もしやただの変態か? 

 全く意味がわかららん。何故にパンティが? そして、なぜブラジャーは無いんだ? 

 しかし、よく見てみると宝箱の奥にブラと革のブーツが置いてあった。どうやら服と本の下にあったらしい。


 そして、やっぱりブラも黒のスケスケである。

 

 いや、いやいやいや。きっと何か深い事情があるはず。ただの変態なんてそんな訳あるはずがない。多分……

 取り敢えず、童貞殺しとパンツとブラ。そして眼鏡と言う異色のカルテットを側に置いておくことにした。

 そして、おもむろに箱の中にあった本を手に取る。


 何故だかどこかで見たことがある気がする。

 一体どこで見たんだろうか。


 なにやら、とても仰々しい装丁をしている。角には金の補強がしてあり艶のある革に全体が覆われている。

 なんと言うか、見た目としては魔導書と言った風体をしている。

 

 もしかしたら、この本から何か情報が手に入るかもしれない。

 俺は、自然と慣れ親しんだ動きで本の中身を開いて眺めてみた。


「ん?」


 思わず眉が吊り上げる。

 

 それも仕方がない何せ中身が全て白紙なのだ。意味がわからないだろう。

 俺はその後もがむしゃらにページをめくってはみるが現れるページは全てが白紙だった。


 まったく、何か情報が手に入るかと思ったが取り越し苦労も良いところだ。役に立つ情報どころか全く持って情報はなかったぞ。

 

「まったく、なんだよ……」


 焦燥感と共に、俺は最後のページをめくった。

 しかし、そこには目を見張るものが写っていた。


 それは準備室で見た肖像画の少女だった。長い黒髪に大きな瞳。そして、どことなく眠そうなポーっとした表情。その下に刻まれたアイラインと言う名前。


 その瞬間、脳裏に稲妻が走る。

 それと同時に側に置いてあった服に視線を向ける。


「お、同じだ……」


 そう、肖像画に描かれた少女が着ている服。それこそ正しく“童貞殺し”なのだ。

 その瞬間、俺の脳内にはある答えが導き出された。


 直ぐ様、傍らに置いてあった眼鏡を手に取る。そして、急いで眼鏡の角度を変えレンズに自分が映るように調節していく。やがて、俺の顔がレンズにうっすらと浮かび上がってきた。


 その顔を見て心臓が止まりそうになった。


 俺の顔はなんと本に描かれた肖像画の少女アイラインそのものだった。


「ほ、ほげえぇぇぇぇあぁぁ!! 通りでおっぱいが大きい訳だぁぁぁ!!」


 俺は思わず洞窟の中で一人猿叫を上げた。

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