第二十八頁 ゴキブリ!?否、それはリザードマン!!
光沢のある鱗が月明かりを反射し、不気味で艶やかな輝きを帯びている。そして、その瞳は不思議な金色に輝いており、驚く程に長い尻尾を引きずり、天井に張り付き、ゆっくりと歩いて無言のままにコチラを眺めている。
それは、おもむろに窓際へと移動すると、ぬらりと光る大きな口を開き、唸るような声を発した。
蜥蜴のカラカラと痰の絡んだような声が部屋に響いた。
「動くなよ、お嬢ちゃん。アンタを傷付けるつもりはない。ただ“コレ”を頂戴しに来ただけだ……」
そう言うと、蜥蜴は自分の手の中にあった袋をコチラに見せてきた。
それは、俺がスミスさんとシーナさんから貰ったお金が入っている袋だった。
俺はそれを見た瞬間、何かを考えるでもなく。ただ単純に感情のままに声を発していた。
「ふざけないで下さい。さっさと、それを返しなさい! それは……」
俺がそう口にした瞬間、部屋のドアを強く叩く音と共にザックさんの声が聞こえてきた。
「おい、アイラ! どうした、何かあったのか!!」
「ザックさん! 部屋にデッカイ蜥蜴が居ます!!」
俺の言葉がえらく気に入らなかったのか蜥蜴は喉元を大きな膨らませながらコチラを睨み付けている。
「俺を蜥蜴って呼ぶんじゃねぇ!! 俺は歴としたリザードマンだ!!」
すると、蜥蜴はその大きな口を、ぐぱぁと開きながら俺に向かって飛び掛かってきた。
あわや、その牙が俺に襲い掛からんとする時、ベットの側で寝ていたマシマロが飛び起きると、それと同時に蜥蜴に向かって突進をブチかました。
「もあッ!!」
「な、なんだ!? コイツは!?」
突然、視界に飛び込んできたモコモコの生物に動揺したのか、蜥蜴は慌てふためいた様子でマシマロを腕で弾いて見せた。
「もあ~う」
弾き飛ばされたマシマロが虚しく床にコロコロと転がる。
ああ、流石はマシマロ。全然弱い。でも、ありがとう俺を助けてくれて。その勇姿しかと見届けたぜ。
しかし、その瞬間。部屋のドアが勢いよく開くとザックさんが槍をその手に携え飛び出して来た。
「アイラッ!! 無事か!!」
「は、はい! 私は無事ですッ!!」
蜥蜴はザックさんの姿を見ると「チッ」と小さく舌打ちをし、素早い動きで窓から外に飛び出して行った。
その手にはまだ、あの袋が握られている。
「ま、待ちなさい!! その袋は置いていきなさい!!」
しかし、蜥蜴は俺のその声に従う訳もなく。そのまま屋根へと登って、そのまま脱兎の如く駆けて行った。
俺は咄嗟に本を腕に抱えると、勢いよく窓から屋根をよじ登り。先程の蜥蜴と同じように屋根を伝って駆け出した。
「待ちなさ~い!! この泥棒~!!」
「おいおいおいおい!! お前、以外と身軽だなっ!! まて、アイラ!! 追うなっ!! 恐らく、アイツはスラムの住人だ!! 下手に刺激したらどうなるかわかんねぇぞ!!」
うるせぇ!! そんな、こそ泥ごときに臆していて、この先やっていけるかよ!!
スミスさんやシーナさんには「命を大切にするんだ」と言われたけど、こればっかりは絶対に許しちゃおけねぇ!!
アレは二人から貰った大切なお金なんだッ!!
絶対にあんな蜥蜴野郎なんかに渡してたまるものかッ!!
ブッ殺してやるッ!!




