第二十七頁 真夜中の侵入者
きゃはは、うふふ、あはは♪
あ! あそこに可愛いお洋服が♪
あ! あの服可愛い、欲しい♪
わー、この靴ほしー♪
どう? この髪型可愛い?
どうかな、似合ってる?
もー なんで髪切ったの気づいてくれないの!?
そこには、女の子女の子しているアイラインこと、俺がいた。
可愛らしいワンピースにギルドの受付嬢が来ていた様なベストにタイトなスカート。それと今現在身に纏っている“童貞殺し”。
そして、最後にはお姫様の様な、きらびやかなドレス。
そして、コチラを見て少し恥ずかしそうに、はにかむアイライン。
そう、つまり、俺……
違う違う違う、俺は男、俺は男、俺は男。
俺は男だァァァァァァーー!!!
「ハァッ!! ハァッ!! ハァッ!! ゆ、夢か……」
俺は悪魔から目覚め、ベットから飛び起きた。
見ると、外はいつの間にか夜になっていたらしく、窓からは月明かりが伸び、心地好い夜風が窓から入り、俺の頬を撫でていた。
ベッドと小さい机が有るだけの小さな部屋が目の前に広がっている。
そして、ベットのふもとにはマシマロが小さな寝息を立てて眠っている。
その時、ふとあることに気が付いた。
俺は窓を開けたまま寝ていただろうか?
思い出せない。何せ、余りに疲れていたから、ベットに倒れ込むと同時に意識を失ったんだ。覚えているはずもない。
まさに、そんな事をする間もなく眠りに就いたんだ。
だから、窓を開けたはずがない。
なのに、窓は開いている。
はじめから開いていたとも考えにくい。それだったら、それで覚えていそうなものだ、多分、俺なら「普通、ホテルとか入った時に窓とか開いてるはずねーべや」とでも小言を言ってそうな物だ。
だが、そんな事を言った記憶もない。
その時、不意に頭上から何かが動く気配がした。
まるで天井で何かが擦れるような気配。そして、それがゆっくりとゆっくりと動いている、そんな音が微かにする。
まるで何かが這いずる様な、そんな言い様のない不気味な音が確かに耳に届いてくる。
一体、この音の正体はなんだ?
俺は恐怖にも似た感情を抱きながらも、意を決して天井に視線を向けた。
「イ、イヤャャァァァァァ!!!」
思わず叫び声を上げてしまう。それは、まるで絹を裂くような悲鳴。その悲鳴に改めて、この身体が自分の物ではないと痛感する。
それと同時に自分が冷静さを取り戻すのがわかる。
「な、なんなんですか。貴方は!?」
俺は思わず叫び声と共に、天井に張り付いていた異形の生物に声を発した。
そこにいたのは、緑色の鱗を身体中に纏った巨大な蜥蜴だった。




