第二十五頁 ギルド加入
「テメェ等! コイツはアイラってんだ!! 今日からこのギルドに入る事になった。当分は俺が面倒を見る、手出すんじゃねぇぞ!!」
おお、流石はザックさん。男らしい。
もしかして、この男は結構な顔役だったりするのかな?
見ると、先程のザックさんの口上を聞いた周りの冒険者達が「何か困ったら気軽に聞いてくれよ~」とか「取り敢えず、よろしくな~」とか「俺達と一緒に飲もうぜ~」等と言ってくれている。
取り敢えずは、温かく迎え入れてくれているのだろうか?
俺は声のする方向に向かって何度か会釈してみせた。
「あ~ いい子じゃねぇか~」
「紅一点って奴だね~ 羨ましい~」
「ウチのパーティーの紅一点も可愛いぞ~ 仲良くしてやってくれ~」
「ここのオススメはワームの串焼きだぞ~」
ワームの串焼き!!
絶対に食べたくない!!
「ほら、こんなのんべぇ共は放っといて、行くぞ!」
そう言うと、ザックさんが俺の手を引いて奥へとズカズカと進んでいく。そして、カウンターの様な所にたどり着くと、そこに立っていた受付嬢と何やら話し始めた。
とっても、美人な受付嬢さんだ。
栗色の髪に素朴だが整った顔立ちに控えめな胸。そして、それを包むベスト。
そして、トドメのタイトめなスカートが脚線美を存分に見せつけており、男性の視線を集めるには申し分無いと言った感じだ。
きっと、隠れファンとか多いだろう。
ただ、何故か俺の男としての部分は全く反応しない。
まあ、男としての肉体的な部分が反応しないのは仕方ない、何故なら無くなっちゃったから。
だがメンタル的な部分は問題だ。
これ、めっちゃッ大問題だ。
俺は受付嬢を見る。
出来る限りスケベな気持ちで……
しかし、こうムラッと来る感じがない。
不味い、これは不味いぞ。
これは精神が肉体に引っ張られているのではないか?
もし、そうなら俺はこれからどうなってしまうんだ?
もし、この後、無事に元の世界に戻れたとしても中身が完全に女の子になっちゃってたとしたら、中々ややこしいことになるぞ。
ああ、一刻も早く元の世界と身体に戻らなくては……
「ア…… ラ……」
まだ、男でいられる内に……
「アイラ!」
ふと、俺を呼ぶ声で意識が戻る。
見ると、ザックさんが俺の前に立って怪訝そうな表情を浮かべている。しかし、俺がハッとするのを確認したからか直ぐに元の笑顔を見せてくれた。
「ほれ、これが認識証だ。無くすなよ」
そう言うと、ザックさんは俺の前に赤褐色のドックタグを出して来た。
正直、なんだこれは? とは思いながらも、おもむろにそれを受け取って見せた。そんな、俺の様子を見たザックさんはなにやら満足そうな顔でコチラを見ている。
「あ、あの、これは?」




