第十五頁 飛び出し美人
急いで外へと飛び出し、彼等の元へと向かう。
俺の姿を見ると、その場にいた全員が凍り付いた様な眼差しを俺に向けた。スミスさんにシーナさん。それにギルドから来たのであろう、二人の男達も……
不味い、明らかに不審な目で見られている。
やはり、人殺しと勘違いされているに違いない。
誤解を解かなくては!!
「あの、すいません!! じ、実は、これはあの…… ずっと向こうにある洞窟で見つけまして!! どうにか弔ってあげたいと思って持っていた物でしてッ!! 決して、怪しい者ではッ!!」
そう言って、布に包まれた物の中身を見せようとしたその時、俺にとてつもない怒号が向けられた。
「お、お前!! まずはまともな服を着ろ!!」
その怒号に俺は思わず肩を震わせた。
見ると、その声を発したのは槍を背負った青年らしく、何故か、顔を真っ赤にしてコチラを睨み付けている。
ど、どうしよう。何故だかわからないけど、大変怒ってらっしゃる。
「へ、へは!? あ、あのッ!? その……」
全く、意味がわからない。
俺がまごついていると。青年は突然、スゴい勢いで隣にいた少年の外套を剥ぎ取ると、俺の方に投げて寄越した。
「お、お前の国じゃ。下着同然の格好で歩き回るのかぁ!? 痴女も良いとこだぞ、まったく!! お願いだから、それを羽織ってくれ!! でねぇと、オチオチ話もできねぇ!!」
「えぇ? ち、痴女?」
俺が皆に視線を向けると、その場にいた男性陣が一斉に、目のやり場に困った様子で、彼方の方を向いた。
そして、唯一の女性であるシーナさんだけが、「早く、それを被んなさい」とジェスチャーで教えてくれていた。
その瞬間、ハッとする。
しまった、完全に失念していた。
瞬時に俺は自分の姿を見下ろした。
そう白のネグリジェ、しかも、スケスケである。スケベな下着もうっすらと見える。それに何より俺は今、女の子なんだぞッ!!
しかも、巨乳のッ!!
それがネグリジェ姿で飛び出して来たら、そら凍り付いた眼差しを向ける訳だッ!!
「す、すいません!! ごめんなさい!!」
俺は直ぐに渡された外套を羽織るとその場で縮こまってみせた。
なんと、恥ずかしい。まさか、こんな大ミスをやらかすとは。本当にとんだ痴女だよ、あたしゃ……
うぅ、恥ずかしいよぉ……
そんな俺の様子を見ていた槍を背負った青年が、驚愕した様子でコチラを眺めており。おもむろにその口を開いた。
青年の表情は明らかに呆れた様子だ……
「お、おい…… まさか、お前、ただの天然で…… そんな姿で飛び出して来た訳じゃねぇよな?」
くそぉ、なんだよ天然ってぇ。ああ、そうだよ。正真正銘の天然で飛び出して来ちゃったよ。本当に俺は馬鹿だよ天然だよ。
うわ~ん。なんで、こんな事しちゃったんだよぉ……
恥ずかしいよぉぉ…… 泣けてくるよぉぉ……
「お、おい…… おまッ、まさか、泣いてんのか……」
「な゛い゛て゛ま゛せ゛ン゛ッ゛」
何故か頬を雫が伝う。
「いや!! 泣いてんじゃん!!」
泣いてないって言ってんだろぉ!!
俺は下唇を噛み締めながら青年を睨み付けた。完全な逆恨みだし、青年も複雑な表情を作っていたが。俺は俺で、もうどうしようもないので青年を睨み付けた。
もう俺にはそれしか出来なかった。




