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幻想のグリモアール  作者: ふたばみつき
第2話 出会い~encounter~
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第十五頁 飛び出し美人

 急いで外へと飛び出し、彼等の元へと向かう。


 俺の姿を見ると、その場にいた全員が凍り付いた様な眼差しを俺に向けた。スミスさんにシーナさん。それにギルドから来たのであろう、二人の男達も……


 不味い、明らかに不審な目で見られている。

 やはり、人殺しと勘違いされているに違いない。

 誤解を解かなくては!!


「あの、すいません!! じ、実は、これはあの…… ずっと向こうにある洞窟で見つけまして!! どうにか弔ってあげたいと思って持っていた物でしてッ!! 決して、怪しい者ではッ!!」


 そう言って、布に包まれた物の中身を見せようとしたその時、俺にとてつもない怒号が向けられた。


「お、お前!! まずはまともな服を着ろ!!」


 その怒号に俺は思わず肩を震わせた。


 見ると、その声を発したのは槍を背負った青年らしく、何故か、顔を真っ赤にしてコチラを睨み付けている。

 ど、どうしよう。何故だかわからないけど、大変怒ってらっしゃる。


「へ、へは!? あ、あのッ!? その……」


 全く、意味がわからない。

 

 俺がまごついていると。青年は突然、スゴい勢いで隣にいた少年の外套を剥ぎ取ると、俺の方に投げて寄越した。 


「お、お前の国じゃ。下着同然の格好で歩き回るのかぁ!? 痴女も良いとこだぞ、まったく!! お願いだから、それを羽織ってくれ!! でねぇと、オチオチ話もできねぇ!!」

「えぇ? ち、痴女?」


 俺が皆に視線を向けると、その場にいた男性陣が一斉に、目のやり場に困った様子で、彼方の方を向いた。

 そして、唯一の女性であるシーナさんだけが、「早く、それを被んなさい」とジェスチャーで教えてくれていた。


 その瞬間、ハッとする。

 しまった、完全に失念していた。


 瞬時に俺は自分の姿を見下ろした。


 そう白のネグリジェ、しかも、スケスケである。スケベな下着もうっすらと見える。それに何より俺は今、女の子なんだぞッ!! 


 しかも、巨乳のッ!! 


 それがネグリジェ姿で飛び出して来たら、そら凍り付いた眼差しを向ける訳だッ!!


「す、すいません!! ごめんなさい!!」


 俺は直ぐに渡された外套を羽織るとその場で縮こまってみせた。


 なんと、恥ずかしい。まさか、こんな大ミスをやらかすとは。本当にとんだ痴女だよ、あたしゃ……


 うぅ、恥ずかしいよぉ……


 そんな俺の様子を見ていた槍を背負った青年が、驚愕した様子でコチラを眺めており。おもむろにその口を開いた。


 青年の表情は明らかに呆れた様子だ……


「お、おい…… まさか、お前、ただの天然で…… そんな姿で飛び出して来た訳じゃねぇよな?」

 

 くそぉ、なんだよ天然ってぇ。ああ、そうだよ。正真正銘の天然で飛び出して来ちゃったよ。本当に俺は馬鹿だよ天然だよ。


 うわ~ん。なんで、こんな事しちゃったんだよぉ…… 

 恥ずかしいよぉぉ…… 泣けてくるよぉぉ……


「お、おい…… おまッ、まさか、泣いてんのか……」

「な゛い゛て゛ま゛せ゛ン゛ッ゛」


 何故か頬を雫が伝う。


「いや!! 泣いてんじゃん!!」


 泣いてないって言ってんだろぉ!!


 俺は下唇を噛み締めながら青年を睨み付けた。完全な逆恨みだし、青年も複雑な表情を作っていたが。俺は俺で、もうどうしようもないので青年を睨み付けた。

 

 もう俺にはそれしか出来なかった。

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