表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻想のグリモアール  作者: ふたばみつき
第2話 出会い~encounter~
15/100

第十四頁 微睡む朝

 朝日が窓から差し込んで来る。


 外はとても良い天気なんだろう。

 暖かく、心地の良い朝日が俺の身体を暖めてくれているのか、とても心地が良い。


 朝の微睡みと言う奴だろう。

 まぶたが重く、眠たい……


 でも、早く起きて学校に行かねば……

 遅刻……


 遅刻してしまう……


 うとうと微睡んでいると、聞き慣れない鳥の鳴き声が朝の訪れを告げていた。


 その鳴き声に、ハッと我に返る。

 そして、俺は勢いよく身体を起こした。


 すると、起こした身体を追う様に、長く艶のある黒髪が鎖骨を撫でた。そして、白く細くしなやかな女性の物と思われる指と腕、足が視界に映る。

 

「夢じゃなかった……」


 思わず溜め息を吐いてしまう。

 夢だったら、どんなに良かっただろうか…… 


「もあ~」


 その声に、俺は再び意識を呼び戻された。


 どうやら、俺はベッドの上で眠っていたらしい。

 そうだ、思い出した。確か、昨日はタスクボアという猪を倒した後、突然身体が重くなって、気を失ったんだ……


 見ると服も白いネグリジェの様な物を着ている。多分、シーナさんが着替えさせてくれたんだろう。


 これは中々に着心地が悪い。


 いや、着心地は良い。良いんだけど、なんと言うか落ち着かない。まあ、俺の中身が男だからだろう。とてつもなく、むず痒い。それに恥ずかしい。スケスケだから、下着もうっすら見えてしまっている。無論、黒いスケスケの奴だ……

 

 いや、きっと。とっても似合ってるとは思うよ。

 俺は見た目だけは可愛い女の子だし。

 

 だけど、なんと言うかエッチと言うか、色っぽい。

 なんだか、見れば見る程に着心地が悪くなって来た。


「もあもあ~」


 ふと足元からマシマロの声が聞こえる。

 そう言えば、さっきも声がしてたな……


「って、あれ!? 元の大きさに戻ってる!? なんで!?」


 そこには、昨日の事なんて覚えてないと言わんばかりに、呑気な顔をしたマシマロが俺の足にすり寄っていた。


 取り敢えず、可愛いのでヨシヨシと頭を撫でる。

 

「もあっきゅ~♪」


 俺が撫でると同時にマシマロは、気持ちよくて堪らないと言った感じで顔を緩めてみせた。


 ふふふ、可愛い奴め。

 もっと、なでなでしてやろう。


 その時、不意に外から話し声が聞こえた。


 俺は窓から外を眺めてみる。朝日が眩しく、思わず目を細める。


 暫くして、目が慣れると外の景色が視界に映ってきた。


 どうやら外でスミスさんとシーナさんが、誰かと話をしているらしい。


 一人は、鉄の防具と身の丈より少し長い槍を背負った赤髪の青年。そして、もう一人は外套を纏った青い髪をした可愛らしい感じの少年だ。

 

 多分、その格好からしてスミスさんが言ってたギルドの人達だろう。


 はてさて、俺は一体どうしたものか……


 スミスさんやシーナさんは俺の事をどう説明しているのだろうか? もし、この世界が魔女裁判だのを繰り広げる世界だとしたら、俺を魔女として彼等に突き出したりするのだろうか?


 いや、もしそんな世界だとしても。スミスさんとシーナさんはそんな事はしないだろう……


 我ながら、スミスさんとシーナさんを疑うなんて、余りにも恩知らず過ぎる。今にして思い返すと、俺が意識を失うその瞬間まで彼等は俺の事を心配してくれていた。


 彼等は間違いなく信用して良い。

 とても良い人達だ。

 

 だが……


 俺は視線を部屋の中に戻した。

 部屋の中には小さい机がひとつある。


 そして、そこには俺の持っていた荷物が置いてある。テントの布に包まれた白骨遺体。そして、不思議な本。


 これがここに置いてあると言う事は、スミスさんとシーナさんは中身を見たはずだ。


 となると、白骨遺体を目にしたと言う事になる。


 そうなると、普通の人ならどう言う反応をするだろうか。もしかしたら、俺の事を人殺しか何かと勘違いするかもしれない。


 もしそうだとしたら……


 流石に不味いかもしれない……

 先ずは、誤解を解かなくては……


 俺は直ぐ様、本と白骨遺体を胸に抱え込むと外へと飛び出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ