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第三十八話 「応戦」


 魔導師団は予想以上に苦戦を強いられていた。


 予想していた以上にヘドロカエルの数が多く、何人かはヘドロにやられてぐったりとしていた。

 ヘドロには微量の毒があり、命に別状はないが衰弱させるには十分だった。


「隊長! 事前の報告より数が多く苦戦しています!」

「見たらわかる! ルーカス、行くぞ!」


 チェイスはすぐに戦いに加わった。

 声をかけられたルーカスは頷いたが、動き出す前にそばにいるクロエを気にかけた。


 自分が離れたら、彼女を守る人がいなくなってしまう。


 ルーカスは動くか否か狼狽えたが、その背中を押したのは当のクロエだった。

 トンと押されて一歩前に踏み出したときにルーカスは驚いた表情と共に振り返った。


「自分の身は自分で守るわ。多少の防御魔法であれば心得があるから」


 クロエは、心配そうな顔を向けるルーカスを安心させるように力強く言葉を発する。

 ルーカスは一瞬戸惑いを見せたが、彼女を信じることにした。

 依然として不安は残っているけれど、こくりと頷いて魔道師団の元へと駆け出した。


 彼の背中を見送りながら、クロエはどうしようかと思案を始める。

 心得はある、と豪語してみせたが初歩の初歩。しかも試みる機会など殆どなく、ぶっつけ本番も良いところだ。


 とはいえ、やるしかない。

 自分も魔道所の一員なのだと奮い立たせて防御魔法を展開する


「……ふう、とりあえず成功はしたみたいね」


 クロエの周りに魔法の障壁が張られた。

 一先ず安心するが、肝心な部分はこのあとだ。実際に攻撃を受けたときに障壁が役立つか否か。


 クロエは攻撃がこちらに来ないことをひたすらに祈った。


 一方で、ルーカスは戦闘の渦中いた。

 そこまで手こずることのないはずの敵だというのに、数の暴力とは怖いものだと実感する。


 ヘドロカエルの弱点は炎。

 それを心得ているルーカスは火の魔法を主に使用する。


 しかし、周りの魔導師の一部はヘドロを洗い流すことで効果があると考えたのか、全く効果のない水の魔法を使用していた。

 自分が異動してからの間で、こんなにも魔導師団が脆弱になってしまったのかと少し苛立ちを感じる。


 だが、見たところ今回合同任務に参加しているのは新しい魔導師のようだとルーカスは推測する。

 というのも、彼の見知った顔は数人しかいないからだ。


 そんなに大変な任務ではないだろうと考えたチェイスは今回の合同任務を新人研修として活用したようだ。しかしながら、その選択は誤りだったらしい。


「しまった!」


 戦場であるにも関わらず、周りに気をとられて余計なことを考えていたルーカスはヘドロカエルに背後を取られる。

 気づいた頃には、魔法で応戦することも避けることも出来ない状況だった。


 そんなとき、ヘドロカエルの右側面に炎魔法が命中した。

 ルーカスが魔法が放たれた方向に視線を向けると、そこには彼がよく知る顔があった。


「ザザ!」


 久しぶりに会った旧友に笑顔を向けるルーカスと対照的にザザは厳しい視線を向けていた。

 眉間に皺を寄せて、全く歓迎されていないのだとルーカスはすぐに悟る。


「なんでテメェがここにいんだよ、挨拶もなく勝手に居なくなったくせして手助けなんかしやがって」

「……ごめん」

「しかも背後取られるなんて、腑抜けてやがる。むかっ腹が立つぜ」


 ザザはチッと大きめに舌打ちを立てながら周囲に群がるヘドロカエルに魔法を放つ。


「テメェがいなくなったせいで、オレが新人教育に駆り出されて散々だ」


 適当なザザが新人教育をしているから、こんなにも育っていないのかとルーカスは納得した。


 ザザはそのあと苛立ちを露わにしながらルーカスから離れていく。

 旧友の前でだらしない姿は見せられないと改めて気を引き締めてルーカスは再び周りの敵を蹴散らし始めた。


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