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【コミカライズ】「きみを愛することはできない」と言った旦那さまは、前世で愛を告白してきた教え子でした  作者: 葵 すみれ
本編

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24.素っ気ない旦那さま

 ひとまずは、日常が戻ってきた。

 いずれキャンベル伯爵の報復があるかもしれないが、今のところコーデリアにできることは何もない。


 ジェナとミミの魔力発動については、念のために隠しておくことにした。

 キャンベル伯爵たち相手に魔術を使ったのは、コーデリアということになった。

 ただ、平民でも魔力が発動することは稀にあることで、一般的には発現理由は知られていない。

 いざとなれば、稀に発現した例だということにする。

 銀月茶のことさえ明らかにしなければ、珍しくはあってもおかしなことではない。


「……私が浅はかだったわ。目先の実験のことしか考えなくて……ごめんなさい」


 自室にて、コーデリアはうなだれる。


「いいえ! 私は魔術が使えるようになって、とても嬉しかったです。それに、自分の意思で実験に参加したのです。奥方さまが謝るようなことは何もありません」


「わ、私もです……! それに、平民の魔術師はほとんどが孤児だと聞きました。私たちも孤児なので、もし知られても大丈夫だと思います……!」


 ジェナとミミは、コーデリアを励ましてくれる。二人の心遣いに、コーデリアはうっすらと涙がにじんできた。


「ありがとう……」


「ところで、奥方さまも魔力が発現していましたよね。しかも、かなりの強さでした。測定してみてはいかがですか?」


 ジェナにすすめられ、コーデリアは測定器を手に取ってみる。ボタンを押すと、十段階ある目盛りの七つ目まで上がっていった。


「す……凄いです!」


「さすが奥方さま!」


 二人の驚嘆する声を聞きながら、コーデリアは呆然と測定器を眺める。

 つい先日までは一つ目の目盛りにさえ届かなかったのに、一気に跳ね上がった。

 魔力が発現したとき、かなりの魔力を秘めているようだとは思ったが、間違っていなかったらしい。

 ジェナとミミは二つ目から三つ目程度なので、おそらく一般的な魔術師は四つ目から五つ目程度と思われる。


「……旦那さまは、やっぱり最後の目盛りまで達するのかしら」


 コーデリアは、ぼそりと呟く。

 クライブのことを考えると、胸が苦しくなってくる。少しばかり女扱いされただけで意識してしまうなど、浅ましいことだと自己嫌悪に陥ってしまう。

 このようなことではいけない。しっかりと、お飾りの妻稼業を務めなくてはならないのだと、コーデリアは己に言い聞かせた。




「旦那さま、このお肉は一角猪でしょうか。美味しいですわね」


「ああ、そうだな」


 普段と変わらないように振る舞うコーデリアだが、クライブの態度が素っ気なくなってきた。

 もともと契約結婚とはいえ、お互いの目的の下、関係は良好だったはずだ。

 それなのに、クライブはどことなくコーデリアから距離を置こうとしているように感じられる。


「……最近、旦那さまの態度がよそよそしいような気がするわ。やっぱり、ご迷惑をかけているのかしら……嫌われてしまっていたら……」


 自室にて、コーデリアはため息と共に呟きを吐き出す。

 銀月茶による魔力発現の実験、父と妹による襲撃など、思い当たることはいくつもある。

 愛想を尽かされてしまったのだろうか。

 三食昼寝付きにデザートを添えて、茶と菓子の時間までと、契約内容はしっかり守られている。だが、一方的に享受しているだけではないだろうか。コーデリアは己が役立たずではないかと震えそうになってしまう。


「きっと、お忙しいだけですよ。お食事は一緒に取っていますし、嫌われているなんてあり得ないと思います」


「そうですよ。忙しい時期が終わったら、また元通りですよ……!」


「……そうだといいわ」


 励ましてくれる二人に、コーデリアは頷く。

 だが、自分はいったい何を望んでいるのだろうか。

 契約内容は守られているのだから、これ以上望むことはないはずだ。

 いや、きっと自分がお飾りの妻としての役割をきちんと果たせていないことの焦りと、契約を打ち切られることへの恐怖だ。コーデリアはそう思おうとする。


 クライブの心にいるのは、ブリジットなのだ。

 亡くなってからもずっと彼女だけを想い続けている一途さに、コーデリアが入る余地などない。

 余計な想いを抱いてしまっては、お飾りの妻稼業に支障が出る。

 もしかしたらクライブも、コーデリアの淡い想いに気付いて、距離を置こうとしているのかもしれない。


「やっぱり、普段と同じように振る舞うしかないわよね……」


 結局、そこにしかたどり着かない。

 コーデリアは食事の席でクライブに会ったときも、適度に話しかけて、良好な関係を築こうとする。

 だが、やはりクライブはどこか素っ気ない。

 コーデリアをないがしろにするわけではないのだが、最低限の会話しか続かない。


「どうすればいいのかしら……」


 心の中に入り込みたいなどと、贅沢なことは言わない。

 せめて、以前のように普通に接していきたい。そう思いながら、コーデリアは打つ手が見つからず、ため息をつくことが増えた。

 いっそ勇気を出して、クライブと話し合ってみるべきだろうか。

 食事のときに、後で少し時間をくださいと言ってみようと、コーデリアは決意する。


「お……王家からの使いが来ました! 奥方さまを出せと……!」


 ところが、そのタイミングで招かれざる客がやって来てしまった。

 王家からいったい何事かと、コーデリアは嫌な予感が胸に渦巻いていった。

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