公爵庶子リリアの違和感
なんだか違和感を感じながら今日も勉強をしている。
家のダンスホールでピアニストを呼びつけてダンスのレッスンなんて、流石は上級貴族だ。
レッスンを終えて自室に戻る時に廊下でソフィアお姉様と出会した。
「リリア。真面目に勉強しているみたいね」
「はい、良い講師を手配していただきありがとうございます。お姉様」
お姉様は大きなエメラルドが付いたブローチを胸元に飾っており、服装もなんだかお洒落だ。
「素敵なブローチですね。何処かにお出かけでしたか?」
マナーのレッスンでやった日常会話を実践してみる。
私だってやれば出来ると言う事を見せつけてやるのだ。
私の問いにソフィアお姉様は少し疲れた笑みを浮かべる。
「ええ、婚約者とお会いしていたのよ」
「そうでしたか」
ソフィアお姉様には婚約者が居るらしい。なんでもこの国の王子様だとか。
王子様の婚約者なんてなんだか大変そうだ。
お姉様と別れた後、すぐにお母様に呼び止められた。
「リリア。ソフィアさんと何を話していたのかしら? まさかソフィアさんに何かされたの?」
「いえ、お姉様のブローチが素敵だとお話ししていただけです」
「……そう」
「?」
それだけ言うとお母様は立ち去っていった。一体何が言いたかったのだろう?
翌日の午前は領地経営の勉強だ。
講師の男は事あるごとに眼鏡をクイっとする神経質そうなクソメガネ野郎だ。
嫌味で粘着質な男だが、勉強は分かりやすい。性格よりも実力を重視した人選なのだろう。
「この程度も分からないのですか?」とか「ソフィア様ならこの程度でつまずく事はありませんでしたよ」だとかネチネチと嫌味を言うのだ。お父様に言いつけて首にしてやろうかとも思ったが、このクソメガネに勉強を教わるとスルスルと頭に入ってくるので我慢している。
下町の奴らに比べれば大した事は無いしね。
そうして何時もの様に山の様に課題を出されて勉強の時間が終わった。
「ん〜?」
出された課題は公爵領の事業に関する物だ。
公爵家に納められる税と国に課される税、公共事業としての補助金などが絡むので難しい。
「あ、そうだ! お父様に聞けば良いんだ」
公爵家の当主なのだから当然これらの事柄はお父様が管理している。
なら本人に教えてもらうのが1番早い。
私は夕食の時にお父様に教えて貰おうと決めて、お昼のお茶を用意する様に侍女に命じるのだった。