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公爵令嬢ソフィアの計略

 お母様が死んだ。

 覚悟は出来ていたし、私はお母様の大切なこの公爵家を守らなくてはいけない。

 悲しんでいる暇もない。

 お父様は政略で結婚したお母様を嫌っていた。お母様に似た私も同じくだ。

 お母様が亡くなって時間も経っていないと言うのに、昔捨てた愛人を公爵家に引き入れようと探しているらしい。こんなクズでも未成年の私には後見人として必要な存在なのだから腹立たしい。

 他の親族が居れば直ぐに叩き出すのだが、数年前の流行病でエルドラン公爵家には血の近い親族が居なかった。


「いかが致しますか? ソフィア様」


 エルドラン公爵家に代々使える執事のアルフォンスが、お父様の行動の調査報告を手に私に指示を仰ぐ。

 使用人の掌握も出来ていないのに、公爵家の名前を使って調査をして私の耳に入らないとでも思っていたのだろうか?


「そうね……」


 アルフォンスが調べた報告書に有る名前は二つ。

 お父様の愛人だった元下女とその娘。現在は下町の連れ込み宿で娼婦をしている女とその娘だ。

 娘の方は私と同い年の妹らしい。

 やはり排除するのが簡単で公爵家へのダメージが少ない。

 お父様が見つける前に適当にお金を渡して王都から出してしまえばいい。だが……。


「この娘の方は使えるかもしれないわね」

「と言いますと?」

「我がエルドラン家には政略結婚に使える者が居ないわ。この娘が使えるなら丁度良いと思わない?」

「それは……」


 お父様は遊び歩くだけで公爵家の者としての仕事なんてしなかったし、お母様は療養していたので長く社交界から離れていた、私は未成年なのでお茶会やガーデンパーティーは兎も角、夜会での本格的な社交には出れなかった。

 その為、エルドラン家は公爵家にしては政治的な力が低い。

 下位貴族なら問題ないかも知れないが、公爵家として政治力が低いのは不味い。

 これを手早く補うのなら婚姻による繋がりを得る事が簡単だ。

 しかし、私は次期当主で、第三王子の婚約者でもあるのでこの手は使えないと思っていた。なので此処で妹が出来るのは悪くない。

 貴族にとって庶子を迎える事はそこまで大きなダメージにはならないし、そのダメージも私が成人すればお父様と共に捨てられる。

 後に残るのは私と罪の無い妹だけだ。

 愛人の方は分からないが、分を弁えるのなら生活に困らない程度には援助しても良い。


「この調査結果をお父様に流しておいて」

「よろしいのですか?」

「ええ、妹が使えるなら儲け物でしょ? 我が家は公爵家。直系では無い庶子でも使えるなら高位貴族の次男か三男、辺境伯家か伯爵家の嫡男辺りと婚姻させられるし、能力的にダメでも分を弁えるなら下位貴族の嫡男か高位貴族の後妻に出来るでしょう。何方にしても場末の娼婦になるよりは、良い生活が出来るわ」

「しかし、もし当家に害を成すとしたら?」

「それこそ、その時に追い出せば良いわ。場合によっては始末する事も可能だしね」

「承知いたしました」


 こうして私は継母と妹を公爵家に迎える事にしたのだった。

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