公爵庶子リリアの注文
文具を取り扱っている商会によって貰えるように頼んだのだが、なぜか馬車は貴族街に向かっていた。
「ねぇ、サラ」
「はい」
「文具を買いに行くのよね?」
「はい。この先のリール商会で取り扱っている筈です」
「え?」
リール商会は貴族の子弟が学院で使う物などを打っている商会だ。
多少安めの商品もあるだろうが、孤児達に配る物としては明らかにコストがかかり過ぎだ。
私は御者台のロデリックに声を掛ける。
「目的地変更よ。下町のブルーム商会に向かって」
「え、は、はい」
「ブルーム商会ですか?」
「ええ、手広く色々と取り扱っている商会よ。質はそこそこだけど安いわ」
「しかし、公爵家の者としてあまり安い買い物はどうかと思いますが?」
「良いのよ。私が持ち歩く物じゃないし、安ければそれだけ別の事にお金を使えるんだから」
「なるほど、確かにそうですね」
下町の舗装の甘いガタガタ道を公爵家のシンプルだが上等な馬車が進む。
窓から外を見ていた私は、ある看板を見つけて馬車を止めた。
ブルーム商会で紹介して貰うつもりだったが、ちょうど良く目に入ったので少し立ち寄ってみる事にした。
私がやって来たのは黒板などを扱っている工房だ。
下町の工房に突然現れる公爵令嬢。迷惑極まりないわね。申し訳ない。
大慌てで対応する工房主に幾つか依頼を出した。
持ち運び出来る大きめの黒板一枚と、小さな黒板を二〇〇枚だ。
小さい方は取り敢えず四〇枚くらいあれば良いかな。
これはノート代わりに孤児院に貸し出すつもりだ。
ノートより割高だが、ランニングコストを考えるとこちらの方が良いだろう。
裏に公爵家の名を焼印で入れて貰うのも忘れない。
これで勉強した孤児達は公爵家に恩を感じる事だろう。
貴族の名を入れるのは盗難などのトラブル防止の効果も期待できる。
代金の半額を前払いして私は当初の目的であるブルーム商会に向かって再び馬車を走らせるのだった。
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