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Ep: 6-0 男の娘天使、降臨……?




 ーー人生の息苦しさに悩む全ての方に、この作品を捧ぐ。







 暗い夜の空。そのてっぺんで、大きな丸い月が、冷たい光で輝いている。



 怪しい色で道を塗りつぶす、月明り。



 本来人で賑わっているはずの、この町一番の繁華街には、人々の悲鳴がこだましていた。



 阿鼻叫喚の中心地で、巨大な怪獣が天を睨み、牙を剥く。



 黒い影からそのまま出てきたかのような漆黒の怪物。その両腕に有した巨大な爪が、アスファルトを容易に切り裂いていく。逃げ惑う人々。



 黒い獣は無慈悲にも、その巨躯を操り人々の冷静さを奪っていく。



 ――ヒタリ。



 小さな子供が、親とはぐれたのであろう無防備で矮小な一人の子供が、冷たいアスファルトの上へ突っ伏した。


 

 影が、黒い影が子供を覆う。



 子供が空を見上げた時、その視線の先に映ったのは、おぞましい腕を伸ばす巨獣の姿だった。



 「――――っ」


 

 幼子は何一つ声を上げない。巨大な恐怖が、子供の心を押しつぶす。



 悲鳴や怒号をあげられるほど成長していないちっぽけな存在は、闇に飲まれていく自分自身を、曇りなき澄んだ眼でただ傍観するしかなかった。



 ――だが、そんなことを誰が許すものか。



 「やめなさい!」



 鋭い声と共に放たれた光が、眩く閃いた。地響きと共に、怪物が地に伏す。



 光によって不意を突かれた怪獣が、唸りながら声の降ってきた方を仰ぎ見る。

 そこには、ビルの屋上に凛とした姿で立つ、三人の女性の姿があった。



 一切の濁りが無い、純白の衣を纏う、神々しいオーラを放つ女性たち。

 頭上の光輪は厳かに輝き、背の翼が月明りにぼうっと浮かび上がる。


 

 彼女らは華麗に宙を舞い、地面へと降り立つと、怪物と真正面から対峙した。



 「さぁ、審判の時よ」


 

 光に溢れる眼が怪物を見つめ、彼女らは高らかに名乗りを上げた。




 『天より降り立つオトコの娘! 幸せ育む頬の色! 

  笑顔の天使、スマイレル!』



 『天より降り立つオトコの娘! 麗しき、一輪の華! 

  美の天使、ビューティエル!』



 『天より降り立つオトコの娘! 煌めく思い指先に! 

  夢の天使、ドリーメル!』




 聖なる光が、闇を裂く。たじろぐ怪物の前に、裁きの天使は舞い降りた。


 

 地上を蝕む醜い悪魔を、清き光で滅するために。




 『可愛くなりたい! 綺麗になりたい! 自分らしさでマキヤージュ! 

  私たち、オトコの娘天使《エンジェルカ=アンジュルカ》!』




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