表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/326

第80話:猫娘再び

 練兵場ではまず伯爵に契約書を二部渡した。伯爵は羽河の署名を確認してから笑顔になった。これで鍛冶ギルドとの契約成立だ。

「これからもよろしくお願いしますぞ」

「こちらこそ」


 次に水野と中原が抜ける事、利根川と佐藤が加入することを伝えた。伯爵は予想していたのか、動揺することなく各班のリーダーに集合をかけた。打ち合わせの結果、新たな班分けは以下の通り。


 3班は剣士がダブっていたので、一条を2班から1班に動かし、藤原を2班から3班に動かして、2班に利根川と佐藤を入れた形だ。事前に各々打診済みなので、大きな問題はなかった。

 ギルドの職員を呼んでパーティのメンバーを以下のように変更して登録した。


1<月に向かって撃て>

一条英華、菅原洋子、寺島初音、谷山隆(俺)、冬梅貴明、野原英雄(R)


2<クレイモア>

平井ゆかり(R)、夜神光、利根川幸、江宮次郎、佐藤解司、志摩豊作


3<炎の剣>

小山あずみ、鷹町菜花、藤原優海、青井秀二、尾上六三四、工藤康(R)


4<ガーディアン>

浅野薫、木田優菜、羽河鶫(R)、千堂武、花山治、楽丸幹一


 とりあえず、各班とも光魔法持ち(回復役)がいるので大丈夫かな・・・?2班が少し心配だけど、江宮がいるのでなんとかなるだろう。とりあえず俺の班は新しく加入した一条と打ち合わせた。やはり尾上と離れたせいか少しご機嫌斜めな様子だったが、北の草原に向かう馬車は止まらないのだ。


 昨日と同じ場所(草原が刈り取られているのですぐわかる)に着いてまずはトイレを設置する。冬梅が猫娘を召喚すると一条は目をキラキラさせた。これでなんとかなるかな。ミーティングから戻ってきたヒデが今日のミッションを伝えた。


「今日のミッションは昨日と同じだが、一つだけ追加がある」

「なんだ?」

「角兎と草蝮以外に何か一匹しとめること、以上だ」


 角兎と草蝮しか近くにいなかったんですけど・・・。冬梅が遠慮がちに質問した。

「あの、蛇はそのまま食べて良いのかな?」

 どうも猫娘から聞かれたようだ。


 ヒデは想定外の質問に驚いたが、皆の顔を見渡してから返事した。

「お、おう、好きなだけ食ってくれ」

 猫娘は満面の笑みを浮かべた。可愛いんだけど・・・。


 俺たちは昨日と同じく初音を先頭にして東南に向かって進んだ。猫娘は集団行動は苦手みたいなのでフリーにした。俺達と付かず離れずの距離で草蝮を自由に狩っている。


 捕まえると頭を首の所で食いちぎり、皮を一気に剥いで召し上がってらっしゃいました。いやー、ワイルドですな。口の回りが血と油でテラテラ光っておりまする。見かけの可愛さとのギャップがすげーや。蛇除けになっているのは助かるんだけどさ。


 角兎を五頭ほどしとめたところで、赤毛の牛さんを発見した。でかい。体重は三百キロはありそう。俺たちは固まって相談した。最初女子三人は牛を倒すことに反対した。可哀想だって・・・。まあ確かにそうなんだけど、他に適当な獲物がいないこと、歩いて帰るリスクや肉は売らずに持って帰ればステーキが食えることを説明したらなんとか納得してくれた。


 牛さんを確実に仕留められるのはヒデと一条だけだ。残り四人で反対方向から追い込んで二人のどちらかにやってもらうのが王道だが、練習も無しでいきなりの連携は無理だろ。


 俺はさっき江宮から受け取ったばかりの一つ目の道具を取りだした。ボーラだ。鉄球二個を一メートル位の紐で結んである。石器時代から使われていた歴史的な狩猟道具だ。ヒデが疑わし気な目で俺を見た。


「なんだそれ?」

「ボーラだ。こいつで足止めするからとどめを頼む」


 牛さんの十メートルほど手前で止まってから頭の上で鉄球の一個を持ってもう一個をぐるぐると回した。ぎりぎりこの距離までは逃げないことを昨日確認済みだ。俺の後ろではヒデと一条がバットと刀を構えて待っている。


 牛が不審者を見る目で俺を見たので、足元をめがけて投げた。ままよ・・・。ボーラはひょろひょろと飛び、狙った足元ではなく牛の顔に引っかかった。あれー・・・。


 俺も驚いたが、牛はもっと驚いたのだろう。角にからまった紐を外そうと首を激しく振った隙に、一条が素早く距離を詰めた。右側に回り込むと横から白刃一閃。牛の首は泡食った顔のまま胴と泣き別れになった。

 正面を向いた首から真っ赤な血が噴水のように噴き出し、草むらを染めていく。胴体がゆっくりと左側に傾いていき、ドンという重い音と共に横倒しになった。


「やったね」

 嬉しそうな声で冬梅が叫んだ。一条も満足そうな顔で血を払うとゆっくり納刀した。あの太い首の骨を一太刀で切り落とすとは恐るべし。ヒデはバットを構えたまま一歩も動けなかった。


 洋子と初音は「やったあ、ステーキだ!」と無邪気に喜んでいた。俺は「やっぱり二個タイプは難しいな。三個タイプに変更してもらおう」と誰に聞かせるわけでもなく言い訳した。なんで?


 猫娘が「頭だけでも欲しい」とねだったが、これ以上スプラッタな光景は見たくなかったので、丁重にお断りした。代わりに常時持っている動物クッキーをやったら喜んでいたので、良かったことにしよう。血に濡れたボーラと共に首も胴体もさっさとアイテムボックスに収納する。


 その後は兎以外に鳥と何度か遭遇したが、ことごとく逃げられた。鶏が野生化したような鳥だった。ボーラは使い方が難しい。唯一の収穫は鳥の巣に残されていた卵三個だけだった。とりあえず兎を十匹確保したので、馬車まで戻った。帰り道、皆で話して今日の分は牛も兎も売らずに持って帰って、平野に渡すことにした。

まずは牛を仕留めました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ