第320話:王女来襲5-7
ラウンジに移動すると平野がお客様にお渡しする品を用意していたので、一人一人に手渡しする。王女様には俺からのプレゼントも渡した。
「今日は青木と尾上がお見苦しいものをお見せしたことを深くお詫びします。害意は決してございませんので、野田も合わせて何卒お許しをお願います」
王女は花のような笑顔を見せて言った。
「無礼講と言ったのは私ですよ。青木様も尾上様も野田様も誰も何も心配はいりません。でも、谷山様からのプレゼントは謹んでいただきます。何が入っているか本当に楽しみですわ」
王女の馬車が準備出来るまでの間、ユニックさんと工藤から相談を受けた。光闇の決勝戦をどのように行うか迷っているそうだ。俺は工藤に言った、
「あれしかないだろ」
「あれか?」
「あれだ」
「分かった!」
何が分かったのかさっぱり分からないが、後は工藤とユニックさんで決めて貰うことにした。なんとかなるだろう。いい加減すぎると言わないでくれ。俺だって忙しんだ。
ついでに伯爵とジョージさんと打ち合わせて軍手と塩キャラメルについては、商業ギルドにライセンスするが、軍との間に特約を結んで優先的な供給を行ってもらうことにした。軍専用にするには勿体ないので。
ジョージさんは炬燵(四角形と六角形)・火鉢・懐炉・湯たんぽ・アンカ・プレイングカード・軍手・塩キャラメル・キルティングについての契約を準備するそうだ。見本を渡したので大丈夫だろう。
浅野は王妃様へプレゼントする予定のガラスペンを王女様に見せていたが、王女様は口を開けて絶句していた。どうやら王妃様へのプレゼントがこんなに立派だとは思っていなかったようだ。手作りのクッキーとかそんなのを想像していたのかな。残念でした。
全員を見送ってから食堂に戻ると何故か打ち上げになっていた。盛り上がりの中心には青木と尾上がいた。宴席の打ち上げだそうだ。意味が分からないので平野からお供え用の料理を受け取って自分の部屋に戻った。ベッドが不自然に膨らんでいたが、無視して窓枠に皿を並べる。
今日のお供えはベーコンとチーズ入りのクレープ、塩焼きそば(宿舎の今日のお昼)、グラスドッグ、洋風茶碗蒸し、大ナマズのフライ、ピザ、ボンゴレビアンコ、鯉のから揚げのトマトソースかけ、鬼熊のステーキ、クリームパフェ、塩キャラメルだった。皿数が多かったけど何とか並べきった。
宴席とプレゼンが無事終わったことを感謝し目を瞑って手を合わせると、「美味し!」の声と共に、ペタン・ペタン・ペタン・ペタン・ペタン・ペタン・ペタンという音が響いた。女神様は「今日はご馳走じゃの」と喜んでいたが「ベッドの中の蛇に注意せい」とだけ言って消えた。
俺はベッドに行くと一気にシーツを剥いだ。そこにいたのはイリアさんだった。いるだけならまだしも、素っ裸だった。半ば予想していたが、一応聞いておこう。
「何やっているんですか?」
イリアさんはゆっくりと上半身を起こして横座りになった。魚の腹のようにぬめぬめした白い背中が青みがかった月光に反射してぞっとするほど色っぽかった。背中に向けたままイリアさんはかすれた声で囁いた。
「何のとりえもない女子が精いっぱいの勇気を振り絞って、惚れた男の寝屋に忍び込んだのです。黙って抱いてくれませんか」
何のとりえもない・・・精いっぱいの勇気・・・?何を言っているのかさっぱり分からないが、とりあえず言っておこう。
「どんな事情があるのか知りませんが、何か着てさっさと部屋から出て行ってください。洋子が来たらえらいことになりますよ」
イリアさんは悪戯ぽく笑いながらこたえた。
「菅原様でございましたらお友達やお傍係と女子会とやらでお楽しみのようです。お酒も入っているので、今晩はお越しにならないかもしれないですね。それに・・・」
これを聞いたら面倒になるなと思いながら聞いてしまった。
「何かあるんですか?」
イリアさんは俯いて答えた。
「何もなしで帰ったらきつい仕置きが待っております」
「・・・・・」
「お願いします。哀れな女子を助けると思って・・・」
俺は長いため息をつくと服を乱暴に脱いだ。
「一回だけですよ」
ベッドに上がって抱きしめたイリアさんの肌はひんやりと冷たかった。しかし、冷たい肌の下には熱い血潮が脈打っている、そんな感じがした。一戦終わって腕枕をしながら聞いた。
「何が聞きたいんですか?」
イリアさんは目を丸くして驚いた。
「谷山様はほんにお優しいですね。その優しさに甘えさせていただきます」
「一回だけですよ」
念を押してからイリアさんの質問にこたえた。予想通りの質問だったので、俺が知っているだけ答えた。ひとまず満足したようなので、今度はこっちの番だ。豊満な胸を揉みしだきながら口づけると、イリアさんは熱い息を吐きだしながら聞いた。
「一回だけではありませんでしたか?」
俺は首を振ると短く答えた。
「こっちは別です」
イリアさんは俺に全身で抱きつくと、耳元で「嬉しい」と小さく叫んだ。
何度か交わっていくうちに無性にいじめたくなって右の乳首を舌でなぶってから軽く噛んだ。イリアさんは首を大きくのけぞって震えた。次に左の乳首を噛むと、俺の頭を後ろから抱えて胸に強く押し付けた。そういう反応が嬉しくて全身を甘噛みしてやった。
なんだかんだで一時間くらいやってたと思う。ことが終わったベッドは二人の汗と愛液と唾液でどろどろになっていた。イリアさんは「立つ鳥跡は濁さず」と言うとシーツを新しいものに代え、汚れたシーツを畳んで窓から出ていった。忍者みたいだな。さよならのキスも何もなかったが、それで良かったと思う。
そのまま横にはなれなかったので、風呂に入ってから戻るとベッドの上にはまたもやお客様がいた。太郎だった。
「お前も眠れないのか?」
頷いたような気がしたので、俺もそのままベッドに入った。
トランプのプレゼンもうまくいったと思ったら、イリアさんの奇襲にあいました。頑張れたにやん、負けるなたにやん。




