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第319話:王女来襲5-6

 カードそのものやルールを一通り説明してからババ抜きを始めようとしたが・・・ゲームの名前として「ババ抜き」という名前がまずいような気がするので「魔王抜き」にした。心なしか非難の視線を感じるけど、知らないふりをする。


 昔読んだクイズの本に書いてあったのだが、「ババ抜き」の原名はold maidオールドメイドで、日本語に訳すと「婚期を逃した女性」即ち「行き遅れ」や「オールドミス」になるそうだ。


 カードもジョーカーを使わず、クイーンを一枚抜いて51枚でやっていたそうだ(ジョーカーを加えた場合は53枚になる)。つまりはクイーンをオールドメイドと呼んでいたわけね。もしゲーム名の由来を聞かれたら、先生やイリアさんの手前困ると思いませんか?


 俺の苦労も知らずに先生は物凄い笑顔で喜んでいたが、ゲームが始まると一瞬で授業の時のような厳かな表情に変身した。ポーカーフェイスは他の三人も同じで、流石みんなそれなりのポジションにある人たちだけのことはあると感心した。


 息詰まる戦いは浅野のアドバイスのお陰か王女が優勝し、先生が最下位だった。喜ぶ王女の隣で先生と伯爵がものすごい勢いで再戦を要求したが、時間が無いので七並べの説明に入った。皆初心者なので、AエースKキングが隣接する設定(Kまで出ると次はAから出す)は無しにした。


 七を全て出して縦に並べる。光の七を出したのが伯爵だったので、伯爵からスタートした。このゲームはジョーカー(魔王)や6と8を出すタイミングが重要なのだけれど、誰が何を持っているか考えながら冷静にカードを切った先生が優勝した。


 最後の神経衰弱はイリアさんの独壇場だった。表になったカードを完璧に記憶しているだけでなく、野生のカンで初めて同士でもドンドン当てていく。全カードの半分を取った所で勝負は決まった。記憶力が抜群でカンが良い。ケンカでも交渉でも相手にすると厄介な人だなあと思ったのだった。


「炬燵を買ったお客様にはこのカードと遊び方の取説を進呈する予定です」

 ユニックさんとジョージさんから「俺もやりたい」という不穏な空気が流れてきたが、お二人にも試作品を貸し出すことを江宮が伝えると、何とかおさまった。試作を繰り返してた結果、既に六セット以上あるみたい。


 六人を代表して王女がお礼を述べたので、感想を聞いてみた。

「面白かったですか?」

 王女は満面の笑みでこたえた。

「はい、とても」


 俺たちは顔を見合わせて喜んだ。見えない重しが外れたように肩が軽くなった。念のため聞いておこう。

「景品として使うことで販促効果はあるでしょうか?」

 王女は首を大きく縦に振った。

「あると思います。むしろ景品目当てに複数購入を希望する者が出てくるのではないでしょうか」


 ジョージさんも同意した。

「初回に限り一家につき一台とか、何らかの制限が必要かと存じます」

 そこまで効果があるのだろうか?ここで先生が手を上げた、

「炬燵の形は四角形だけでしょうか?」

 江宮がこたえた。

「円形も長方形もできますし、大きくはなりますが四角形以上も可能です。五角形とか六角形とか・・・。また円形も可能です」


 先生は笑顔で頷いた。

「それはよございました。この世界では六にこだわる人が多いので、是非六角形の炬燵もご検討いただければと思います」

「言われてみて気が付きました。検討します」


 王女が遠慮がちに聞いた。

「本日三種類の遊び方を教えて頂きましたが、このカードの遊び方はどの位あるのでしょうか?」

 江宮が答えた。

「全部知っている訳ではありませんが、おそらく五十種類くらいはあると思います」


 王女は驚いたような顔で聞いた。

「そんなにあるのですか・・・。それでは今日教えて頂いたのは?」

 江宮は笑顔でこたえた。

「人気があって誰でも知っています。入門用というか比較的ルールが簡単で分かりやすいゲームです」


 王女はさらに驚いていた。

「囲碁や将棋はルールが少し難しいと思っていましたが、カードは初心者用でもこんなに面白いとは驚きです」

「初めてやったからではないでしょうか?」


 王女は首を振ってこたえた。

「むろんそれもあるでしょうが、それだけではないと思います。炬燵の販売がうまくいけばカードも単独で販売すると考えてよろしいでしょうか?」


 俺は笑顔でこたえた。

「カードを景品に付けるのは炬燵の発売記念キャンペーンだけの特典にしようと考えています。おまけを付ける期間は商業ギルドさんと相談して決めようと思います。以降は単独で販売する予定です」


 ジョージさんを横目で見たが、笑顔でウインクしてくれたので良かったみたい。王女は聞いた。

「ジョージ殿、何か問題はありませんか?」

 ジョージさんは断言した。

「ございません。商品のみならず販売促進策も新たな挑戦となるのですな。武者震いしそうです」


 伯爵が叫んだ。

「このカードは大陸全土で売れる商品になりますぞ」

 ひょっとすると伯爵はゲーマーだったのかしら。


 水野がおずおずと言った。

「新しい遊び方の周知については、キャンペーンで購入してユーザー登録したお客様に定期的に手紙でお知らせするのはどうだろうか?もちろん期限付きで」


 先生が聞いた。

「ユーザー登録とは何でしょうか?」

 江宮がこたえた。

「購入者の名前・住所・生年月日・職業などの情報を登録させて頂くことです。いわばお客様の人別帳を作ることで、購入後のサービスや販促に使おうという考え方ですね。既に商業ギルドさんでも同種の仕組みはあると思いますが」


 ジョージさんが頷いた。

「仰せの通りです。得意先の台帳はどこのギルドや商店でも持っております。それを有効活用しようということですな」


 工藤が手を上げて発言した。

「カードの遊び方は一年後とか適当な時期に本にして発売すれば良いんじゃないかな」

 全員が拍手して江宮のプレゼンは無事終了したのであった。

トランプのプレゼンもうまくいったようです。ババ抜きの名前が変わってしまいましたが・・・。

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