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第199話:商業ギルドにプレゼン2ー2

 次のプレゼンはシューズドライヤーだ。実物を見せて江宮が説明してくれた。ブーツだけでなく、普通の靴でも使えるように改善してあった。靴を履く人の共通の悩みだけに商業ギルドの四人は凄く食いついてきた。


 エントランスさんが聞いた。

「これは火の魔法を使っているのでしょうか?」

 江宮がこたえた。

「原理的にはドライヤーと一緒です。火の魔法と風の魔法を使っています」


 四人は納得した顔で頷いた。他の家電製品と同じく、魔法科学ギルドで製造&発売するとのこと。ライセンス料は他の家電製品と同じく、10%に設定することにした。


 続いて利根川がブーツ関連の商品として消毒薬(乾燥剤も兼ねる)と水虫薬をプレゼンした。消毒薬は小麦粉のような白い粉で、ブーツの中に適量放り込んでよーくシェイクするだけ。しばらく時間を置いてからブーツの中の粉を捨て、乾いたタオルで中を拭けば終わり。


 水虫薬はピンク色をしたクリームだった。こちらは手に適量とって患部に塗り込むだけでOK!どちらかというと予防に使った方が効果が高いそうだ。かかってから使っても悪化するのを止める効果はあるが、完全に治療するには相当の時間がかかるようだ。


 水虫薬についてはもちろん光魔法の使い手に頼んで治癒の魔法をかけてもらうのが一番だが、高い治療費を取られるので庶民にとっては朗報ではないかとのこと。しかし、四人とも難しい顔をしている。何か問題があったか?ジョージさんが顔をしかめながら話した。


「消毒薬と水虫薬も素晴らしい発明だと思いますが、少し問題がございます」

 俺は正直に聞いた。

「どういった問題でしょうか?」


 ジョージさんは淡々と話した。

「ギルド間の争いを事前に防ぐために、関係するギルド間では基本的な協定を結んでおります。お話を聞く限り、消毒薬と水虫薬は薬師ギルドで取り扱うべき商品であると考えます」


 言葉を無くした俺にミハエルさんが話しかけた。

「ご安心ください。薬師ギルドとの調整は我がギルドが責任をもって行いますので、契約は我がギルドにお任せください」


 消毒薬と水虫薬は、契約は商業ギルド・製造&販売は薬師ギルドになるようだ。ライセンス料は他と同じく10%に設定することにした。契約書はドライヤーと合せて出来上がり次第、持ってくるとのこと。


 プレゼンはこれで終了したので、ジョージさんから近況の報告があった。

「菜種油の製造が順調に進んでおります。既にお得意様に営業をかけているのですが、価格設定次第では一挙に市場を占有できそうな手ごたえがございます。その影響か、油の価格が先月より一割下がりました。

 来年の話をするとオーガが笑うということわざがございますが、砂糖を売り出す際にも同様のことが起きるのではないかと考えております」


 次にミハエルさんから提案があった。

「魔法道具に関係する製品を取り扱う魔法科学ギルドは来月開設する予定なのですが、いっそのこと服飾を含めたSlitsの全製品を展示するビルを一つ借り切って、その中に魔法科学ギルドを入居することを検討しております。

 開設費用・展示費用等は全て商業ギルドと魔法科学ギルドで負担致します。Slitsの製品を展示するにあたって、皆様のご賛同とご協力を頂きたく、よろしくお願い申し上げます」


 なんとなく大事になりそうな予感がするが、羽河がにこやかに同意した。俺は懸念事項を伝えた。

「魔法科学ギルドで展示が始まり、魔法道具の販売が始まると、機器に使用する魔石の需要が高まって魔石の価格が、特に火と風の魔石が高騰する可能性があります。今から対策を練るのがよろしいかとおもいます」


 ジョージさんが大きく頷いた。

「仰せの通りです。実は冒険者ギルドとの打ち合わせを始めております」

 流石はジョージさんだ。


 木田が手を上げた。

「もし、そういったビルを作るのであれば、レシピの販売に関して試食を行えるようなカフェを常設したらいいと思います。もちろんウェイトレスにはSlits製の服を着せて」


 エントランスさんが手を叩いて喜んだ。

「素晴らしいアイディアです。洋服を着てみた姿が実際に見られるのはまたとない宣伝になるでしょう。開設時期を含めて、早速王家と相談させて頂きます」

 話は引き続きファッションショーの話になった。まずはジョージさんから謝罪の言葉があった。


「王女様から是非開催したいとお言葉を頂き、場所も白鳥宮の雪の間を提供すると仰られたのですが、王宮でこのような一般向けの会を催すのは難しくあります。貴族・平民共に来場できる場所として市民街にあるダンスホールを会場として二か月借りたのですが、何をどうしたら良いのか分からず手詰まりの状態なのです。誠に不甲斐なく、申し訳ありません」


 ジョージさんは続けて話した。

「出来ましたらお知恵を、いえ、いっそのことファッションショーを取り仕切って頂けませんでしょうか?」

 王女様から聞いた状況と一致した。ミハエルさんを見たら、難しい顔で頷いたので、ギルドの総意で間違いないようだ。浅野・木田と顔を見合わせた上で羽河がこたえた。


「分かりました。微力ではございますが、生活向上委員会の総力を上げてファッションショーを成功させたいと考えます。まずは浅野と木田を専任として担当させます」

 浅野と木田が明るい声で話した。


「木田です。まずは会場を見せてください。その上で具体的なプランを検討します」

「浅野です。可能であれば、披露する品を追加したいと考えています」

 二人の力強い言葉に商業ギルド一行は安堵の表情を浮かべた。


 王家がファッションショーと同時にレシピのライセンスのための試食会を行うことについても賛成してくれた。レシピについてはどのみち商業ギルドを通じての契約となるので、問題ないみたい。


 全体の大まかな取り組みとしては、主催&宣伝&設営&営業:商業ギルド、企画&調理&音楽&音響&照明:生活向上委員会、営業:服飾ギルド、後援:王家という形になった。調理から司会進行まで全て含めた企画・製作料はお幾らですかと聞かれたので、金貨五十枚とこたえたらあっさり了承してくれて逆に焦った。


 人員の手配は商業ギルドと服飾ギルドで手配するが、ショーのモデルは白鳥宮の侍女から選抜し、会場を使って木田が特訓する。販売のターゲットは裕福な平民・下級貴族の子女・上流貴族の侍女だそうだ。


 ショーといってもオープンではなく関係者を対象にした内覧会の形を取り、招待するのは服飾関係の商会・両ギルドのお得意様・有力貴族・その他の関係者になるそうだ。レシピについてはテーブルについたら提供されるお菓子を試食して貰うことになる。


 ショーが終わったら服飾ギルドと商業ギルドの担当者達が客席を回って、服飾およびレシピの商談の日程を顧客ごとに調整するとのこと。


 ショーで披露する商品は、ワイドパンツ・スリットスカート・ジャケット・インナー・トートバッグに加えてゴムのスカートを追加することになった。ブラジャー・ショーツ・生理ショーツ・ナプキン・シュシュについては、個別の商談ベースの際に提案するとのこと。


 服飾関係の大本の契約については引き続き木田が担当することにした。また、試食に出す菓子類の選定は既に平野が行っていることを伝えた。日程的には八月いっぱい準備して、九月の開催を目指すことになった。会場の下見は明日、馬車を手配するそうだ。早いな。


 下見について木田から追加の要望があった。

「試食のための調理の都合があるので、明日は平野さんを同行させてください。また、同様に楽器の位置を確認するために野田さん、舞台を設営するために江宮君も同行させてください」

 もちろん、誰も異議は無かった。


 最後に娯楽ギルドについて打ち合わせた。まずは以下の日程について確認。

8月1日:娯楽ギルド設立。軍に先行販売。お得意様に営業開始。

9月1日:一般向けの販売開始。カップ戦の情報公開。

10月1日:カップ戦(第一回エリザベート杯)開催。


 販売する器具の製造状況は、以下の通り。

光闇(囲碁):〇

戦陣(将棋):△

大逆転リバーシ:〇


 戦陣は駒の絵付けで製造が遅れているようだ。一個一個手作業なので時間はかかるよな。碁石造りで協力したことについては、感謝の言葉を頂きました。基本的な情報を共有した上で、工藤が以下を提案した。


1.第一回エリザベート杯は製造が順調な光闇でやる。

2.広く早く普及させるために、サロンを王都内に複数展開する。出来れば、貴族街に二つ、市民街に二つ、平民街に四つ。

3.第一回エリザベート杯の決勝は、当日中央広場に巨大な碁盤を設置してリアルタイムで対局を中継する。


 3は工藤のアイディアだな。俺も良いと思う。サロンとカップ戦については、今日一番盛り上がった。盛り上がりすぎてまとめきれなかったので、娯楽ギルド内で一度整理することになった。建設的な意見が多かったので、うまくいきそうな予感。皆、笑顔になった。


商業ギルドへのプレゼンもうまくいったようです。物産展で新たな出会いがあるかもかーも。

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