第2話:祝福と職業とスキル
俺はため息をつきながらセリアに言った。
「大体状況は分かったよ。職業とスキルについて教えて」
まあ、やってやるよ、と言ったようなもんだな。セリアは手を打って喜びながら満面に笑みを浮かべた。
「職業とスキルの前に祝福について姫様の説明を補足しますね」
ポケットからメモのようなものを取り出して一瞥すると、人差し指を立てて説明に入った。
「一番目の言霊は皆様が言葉を聞いたり喋ったりするときのみ発動します。私からすると皆様は流暢にミドガルト語を喋っていらっしゃいますが、皆様からすると逆に私たちが皆様の母国の言葉で喋っているように聞こえると思います」
脳内グーグル翻訳のようなものだろうか?
「適用されるのはミドガルト語だけではありません。この世界の言語全てに応用されます。皆様であれば、ハイランド王国でもネーデルディア共和国でもエルフの国でも、果ては魔族の国でも会話で不自由する事はないでしょう」
うーん、凄い(チート)としか言いようがない。通訳として食っていけるかも。
「動物の言葉でも分かったりする?」
セリアは一瞬噴き出すと慌てて口を手で押さえた。
「すみません。流石に動物は無理です。どちらかというとそれはティマーの分野になるかもしれません」
まあそこまで万能ではないか。第二のムツゴロウは無理そうだな。
「ただし、適用されるのはあくまで会話、お喋りだけです。読み書きには一切適用されません」
セリアは白いチョークみたいなので地図の上にすらすらと文字のようなものを書いた。大変失礼とは思うが、酔っぱらったミミズがのたうち回っているようにしか見えない。
「これがミドガルト語の文章です。何か意味のある言葉がわかりますか?」
「ごめん、何もわからない」
セリアは深くうなづくと話を続けた。
「ミドガルト語の読み書きが出来るようになりたいのであれば、語学の講座を手配いたします」
「前向きに検討させてください」
あれを読み書きするのは無理だ。俺の本能がそう囁いている。セリアは指を二本立てると説明をつづけた。
「二番目の祝福は健康です。世渡りされる前の病気や怪我などが治っているだけでなく、これからは病気にかかりにくくなり、小さな怪我なら何もしなくてもすぐに直ってしまうでしょう。毒や状態異常に対する耐性も高く、人によりますが体力や身体能力も強化されている筈です」
劣化型のスーパーマン?地味だけど密かに嬉しい。尾上が言っていたのはこれだったのかな?
「最後に職業とスキルについて説明します。職業とスキルは連動しています。例えば職業が魔法使いの場合、スキルは風魔法、火魔法、水魔法などが付与されます。剣士の場合は剣術、強化などが付与されます。職業は一つしかありませんが、スキルは複数持つことができます」
「スキルが増えれば増えるほど強くなる訳?」
彼女は大きくうなづいて同意した。
「もちろんです。ただの剣士よりもスキルを持った剣士の方が強いです。また、スキルには剣士に対する剣術など、職業に応じてほぼ100%付与される固有スキルと、鑑定など発現がまれなレアスキルがあります。レアスキルが発現する条件は今だ解明されていません。学者は神の見えざる手、などと呼んでいます」
今思うと、レアスキル欲しいなーと思ったのが失敗だったのかもしれない。
「皆様の活動に応じて経験値が貯まると、レベルが上がります。レベルが上がると自動的に攻撃力や防御力が上昇します。皆様の現在のレベルは一、上限は百です。レベルアップに必要な経験値は上に上がるほど高くなります。
レベルがある一定を超えると、職業も剣士→剣豪→剣王→剣聖のように進化していきます。当然、剣士よりも剣豪のほうが強く、その上に剣王や剣聖がいます。また、レベルが上がるほど保持可能なスキルも増えていきますが、どのタイミングで何のスキルが付与されるかは不明です」
またしても「神の見えざる手」ですか・・・。うーん、まずはどんな職業になるか次第だな。
「セリアさんも職業やスキルを持っているの?」
「残念ながら私は職業が巫女というだけで、まだスキルは持っておりません。母が貴い血ではありませんので。この世界の人間は職業やスキル持ちは少ないのですが、皆様は世渡りの代償として渡し守から職業とスキルを、人によってはレアスキルを受け取られている筈です」
俺はごくりと唾を飲み込むと、かすかにしわがれた声で問いかけた。
「俺はどうなのかな」
短くてすみません。説明は次回まで続きます。多分。