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第188話:いろいろ準備が忙しい

 7月26日、土曜日。今日も晴れているが、昨日と比べると蒸し暑いような感じ。風もなく、不快指数が高いようだ。ランニングしても汗がべとっとして乾かない感じ。今日も八神が真剣に走っていた。黒の森で体力不足を改めて感じたようだ。


 ラウンジに戻ると、いつも通り志摩が待っていた。そのまま部屋に行って碁石を受け取る。今日も三万六千個あった。順調順調。ラウンジに戻ると、先に走っていた羽河が手を上げていたので、声をかけた。


「どうした?」

 羽河は左手に持った手紙をひらひらと振った。

「王女様からお礼の手紙が届いたわよ。今まで飲んだことの無い極上のワインだって」


 四十年物のワインのお礼みたいだ。羽河は笑顔で続けた。

「教会に対するレシピの公開と王妃様からのご招待の詳細を知りたいので、明日の昼過ぎにご訪問されるそうよ」


 絶句した俺に羽河は笑顔で話しかけた。

「今回は仕方ないと思うわ。向こうとしてもいろいろ確認したいでしょう」

 先生からの手紙に対する反応か・・・。王妃様との関係を探るために丁度良い機会と割り切るしかないな。


 俺はため息をつきながらこたえた。

「分かった。とりあえず正直なところを話してみよう」

「そうね、それがいいと思うわ」

 羽河は笑顔で頷いた。


 俺は今更ながらの質問をした。

「ところで、その王妃様の名前はなんだったっけ?」

 羽河はずっこけながらも教えてくれた。


「カタリナ・ファー・オードリー様よ。絶世の美女だって。ついでに王様の名前はグライコ・フォン・オードリー様よ。忘れないでね」

「分かった」


 食堂に行って厨房の様子を見ると、江宮が冷蔵庫の調整をしていた。冷えすぎているらしい。他の器械は問題ないみたいだ。調整が終わった江宮にちょっとした頼みごとをした。


 今日の朝御飯はうどんだった。そばに続いてようやく登場した和の麺に皆喜んでいた。納得のいく麺、納得のいくつゆの完成に時間がかかったようだ。柔らかいのに腰があるという矛盾する要望に苦労したみたい。


 具は、エビ(ジャイアントロブスター)天・小エビのかき揚げ・丸天(円形の天ぷら)・甘辛く煮込んだ牛肉薄切り・生卵・野菜のかき揚げから選べるようになっている。もちろん全部乗せにしました。香味野菜もたっぷりかけていただきます。


 先生は具を別皿にしてエールのつまみにしている。朝からご機嫌みたい。こういうのもいいよね。カットフルーツとミックスジュースもいつも通り、美味しく頂きました。食後、平野に呼ばれて王妃様へのお土産の焼き菓子の詰め合わせを見せてもらった。


 恒例の魔物クッキーの他にダックワース・フィナンシェ・ラングドシャ・カステラ・丸ぼうろが入っていた。洋と和の混合ダブルスのような感じだけど、これが今作れるベストの組み合わせなのだろう。礼を言ってから預かっておく。


 今日の講義は、出現する魔物についてだった。この山岳地帯で最も出現数が多いのはゴーレムだ。ゴーレムと一口に言っても素材によっておおまかに土・岩・金属メタルの三種類あり、大きさも異なる。


 ゴーレムは、動物と同様自らの縄張りを犯すものは排除する意思を持っている。厄介なのは一般的な魔物と異なり、手足を切っても血も出ず、活動を止めるには胸の奥にあるコアを砕くか取りだすしかないことだ。ロボット?


 それにしてもコアってなんだろ?動物でいう所の心臓?パソコンで言えばCPU?そもそも生物なのか?生物でなければ動力は何?元々ゴーレムは術者の魔力によって動くのだが、野生のゴーレムはそのへんどうなっているの?


 体の頑丈さで言えば、土が一番柔らかく、その次は岩で、金属が最も硬いそうだが、金属もグレードがあって青銅ブロンズ黒鉄アイアン白銀ミスリルの順に硬くなるそうだ。ただし、岩と青銅では硬さはそれほど変わらないらしい。


 真ん中山にいるロックバードは竜も一目置く魔物で、翼を広げると二百メートルあるらしい。怒ると口から超音波光線を放つそうだ。まるでガメラの宿敵の怪獣みたいだな。とにかく接触しないことが大事らしい。


 講義が終わって利根川の所に行こうとしたら先生に呼ばれた。

「今日の王妃殿の訪問ですが、私も同席することとなりました」

 良かった!俺は笑顔で礼を言った。

「先生、ありがとうございます。浅野をよろしくお願いします」


 しかし、先生の顔がさえない。

「一つ条件が付きました」

「何でしょうか?」

「タニヤマ様も同席せよとのことです」


 俺は再び絶句した。なんで?

「どうしてでしょうか?」

「最近王都で始まった新しい事業や産業、さらに娯楽ギルドと魔法科学ギルド、そのいずれにも関わる人物としてタニヤマ様はその筋では既に有名な存在です。どのような人物かその目で見定めたいと思われたのでしょう」


 目立つことは好きじゃないが、仕方がない。俺は覚悟を決めた。

「分かりました。七時でしたね」

 先生は俺を安心させるように微笑ほほえんだ。


「あくまで本命は浅野様です。タニヤマ様はあくまでついででしょう。そんなに気負わなくても大丈夫ですよ」

 俺は黙って頷いた。何もないことを祈ろう。


 王妃様へのお土産にするワインを貰うために利根川の地下室に行った。相変わらず合言葉を要求された。

「合言葉を言え、愛の戦士」

「レインボーマン!」


 扉が開いた。正解だったみたい。階段を下りて部屋に入ると、ジンの蒸留中だった。なんとも言えない香ばしい匂いがする。利根川が話しかけた。

「プレゼンの件で商業ギルドから返事が来たわよ。28日の夕方に来るって」

「ありがとう。江宮にも言っておこう」


 王妃様へのお土産用の四十年物のワインを六本、シャンプーとリンスのボトルを各一本預かってラウンジに行くと、江宮が紅茶を飲んでいた。シューズドライヤーのプレゼンを28日の午後やることを伝えると、江宮は笑顔で頷いた。丁度志摩がいたので、そのまま江宮の部屋に移動して大凧製作の打ち合わせになった。


 段取りとしてはまず畳二枚ほどの大きさの試作機を作って各種データを取り、その上で本機を作ることにした。製作場所は厨房用の機器を作った会議室がそのまま使えるそうだ。27日までに試作機を作り上げるので、28日に試験飛行したいとのこと。


 流石にこの大きさになると宿舎で飛ばすわけにはいかないので、練兵場を借りることにした。伯爵への連絡が必要だな。会議室に移動して竹を江宮が必要な分だけ渡した。紙とロープは江宮が手配するそうだ。山岳地帯の演習があるので、本機が完成するのは8月7日の週だな。

 

 ラウンジに行ってカウンターで、28日に練兵場を借りることと、29日に女神の森に行くための馬車の手配を伯爵へ依頼して貰うようにお願いした。そうだ、ついでに教会に行って養命ワインとジンジャークッキーの話をしてこよう。まずは見本を見せてからだな。レシピや契約書は後でもいいだろう。

うどんの具で一杯やるのって、なんか蕎麦屋でお酒飲むみたいでおいしそう。

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