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第155話:黒の森6

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 工藤から投擲用の槍を五本預かった。投擲用については楽丸と話して同じ槍を使うことにしたそうだ。迎えの馬車が来たので玄関に出ると、七台並んだ馬車の二番目の前に三平が立っていた。今日でなくてもいいから、東門から出た所の川沿いの聖域(?)を見てくれるように頼むと、三平は笑顔で了解してくれた。


 今日も太郎と一緒かと思っていたが、藤原によると太郎は食べ過ぎで動けないとのことで欠席することになったそうだ。昨日食べさせ過ぎたのかもしれない。精神的には楽だが、戦力的には低下するかな。大丈夫かな。


 俺たちの馬車は環状線から南門を目指した。環状線沿いの冒険者ギルドの裏口の前でイントレさんが若い衆と立ち話をしていたので、手を振ったら恥ずかしそうにそっぽを向いた。なんだろ?恥ずかしがり屋?


 昨日と同じく広場に着いたので、まずは先頭の順番を決めた。昨日はガーディアンが最後だったので、昨日と同じく我が月に向かって撃てが先鋒を務めることになった。昨日と違うのは志摩と藤原も最初から俺のサポートについて貰う事だ。


 また、これも昨日と同じだが冬梅に頼んで猫娘を召喚して貰った。俺と志摩が道路工事、藤原の鳩が上空からの監視、猫娘が斥候(?)という役回りだ。ロボはいつも通り浅野の横に控えている。


 打ち合わせから戻ってきたヒデによると、今日の目的地は集会所跡から南に三百メートルほど進んだ噴水跡だそうだ。ここも魔物除けの魔法陣が縁石に刻んであるので、安全地帯になっているそうだ。


 広場から集会所までは道幅の拡張を続けながら進んだ。昨日の段階で幅四メートルになっていたが、さらに一メートル広げる予定だ。もうちょい頑張ったら馬車でも行けそうだな。左右から魔物と思われる視線みたいなのを感じるが、何も襲って来なかった。


 昨日と同じく二列縦隊で進んだ。一刻ほどで集会所跡に辿り着いた。出番の無かった初音とヒデが不満そうな顔をしているが、仕方ないだろう。先頭は、クレイモアに代わって貰った。


 見るとリーダーを務める平井のスタイルが変わっていた。大剣を腰ではなく、背中に斜めにしょっている。右の肩口から手一本で抜き取れる形だ。専用の鞘のお陰だな。小山みたい。思わず声をかけた。

「それいいな。忍者みたいだ」


 平井は嬉しそうに答えた。

「そう?あずに手伝ってもらったの」

 腰履きだと子供がおもちゃの剣をさしているみたいに見えたので、こっちの方が断然かっこ良い。するとクレイモアで斥候を務める江宮が話しかけてきた。


「あのウエストポーチ、戦神の斧絡みとは思わなかったよ」

「洋子がいるのに他の女を口説かないよ」

「そりゃそうだな。疑ってすまん」


 分かってくれたなら問題ない。志摩と一緒に今日も道路作りがはじまった。集会所から南に向かうのだ。目的地は噴水の跡。しばらくいった所で江宮が俺を止めた。

「羽音が聞こえる」

「俺には何も聞こえないけど?蚊か?」

「違う。それよりもっと大きくて重くて早い」


 何かを感じたのか利根川と佐藤がやってきた。

「昨日のクレイジーモスキートとは違うみたいね」

 利根川の言葉が終わると同時に敵が姿を現した。


 蜂だ。地球で最大級の蜂であるオオスズメバチと比べても明らかに大きい。佐藤が何か呪文を唱えると同時に、透明な壁に黒い煙のような蜂の群れがぶつかって二つに分かれた。佐藤が瞬間的に張った結界に、ぶつかったようだ。


殺人蜂キラービーだな」

 佐藤が呟いた。蜂が大粒の雹のように全方位から突撃してくるが、透明なバリアはびくともせずに全部はじき返している。佐藤が瞬時に張った結界は俺たち全員を囲んで、なおかつ十分な強度を持っているようだ。


 キラービーは羽を広げると三十センチ位、頭から尻尾までが二十センチ位あった。尻尾の先には銀色の針が鈍く光っている。あれに刺されたら即座に毒消しのポーションを飲まないと、命が危ないそうだ。危険なのは針だけではない。大きくて頑丈な顎には鋭い牙が並んでおり、噛まれたら骨まで達する程の傷を負ってしまう。


 蜂は結界の回りを黒い煙のようにぐるぐると周回している。確かに結界の中にいる限り安全だが、どうやって反撃するのか?


 俺の視線を感じたのか、佐藤は不敵に笑うと再度呪文を唱えた。俺達を囲うドーム状の結界の外側にもう一枚、ドームのような結界を張ったのだ。蜂は二重の結界に挟まれてしまった。どうするのか見ていると、佐藤は二枚の結界のそれぞれ地面と接する部分をくっつけて一つの結界にしてしまった。


 その後は簡単だった。佐藤は結界をどんどん小さくしていく。最後は直径三メートルほどの巨大な球体になってしまった。中にはピクリとも動けない蜂の群れがぎゅうぎゅうに詰まっている。球体は蜂のエネルギーを受けてビリビリと震えていた。


 利根川は地面に置かれた球体の前に立つと、佐藤に合図した。佐藤は頷くと何か呪文を唱えた。よーく見ると小さな穴が利根川の前に一つ空いている。利根川はアイテムボックスの中から紫色の液体が入ったコップを取りだすと、大きな声で叫んだ。


「フ〇キラー」

 フラスコの中の液体は意志あるように飛び出すと、穴の中に吸い込まれていった。見る見るうちに球体全体が紫色に染まっていく。結界は爆発するのではないかと思うほど大きく振動したが、数十秒ほどたつと振動は急速に衰えまったく動かなくなった。


「終わったのか?」

「多分」

 佐藤が結界を解くと、ピクリとも動かない蜂が地面にドサドサと山積みになった。試しにアイテムボックスに収納したが、一匹残さず収納できたので、もれなくお亡くなりになったようです。蜂の死骸は後で受け取る(大事な素材になるそうだ)とのことで、そのまま俺のアイテムボックスに入れておいた。


「凄いな」

 利根川は満足げに頷いた。

「水虫の消毒薬や薬を試作する過程で、いろんなものができたのよ。これは特に昆虫に効く、いわば殺虫剤ね」


 名前はどうかと思うけど、凄い発明だと思う。しかし、俺はそれ以上に佐藤の結界術に驚いていた。

「佐藤も凄いな。結界を二重に張って閉じ込めるとか普通考えつかないぞ」

 小声で説明してくれたが、利根川の研究開発のために結界のあらゆる利用方法を模索したそうだ。今日のもその応用らしい。石鹸作りが魔物退治に役立つとは思わなかったぜ。


 伯爵とイリアさんは手放しで褒めてくれた。

「素晴らしい結界でしたな。あの数のキラービーの襲撃で無傷とかありえないですぞ」

「通常は防御にしか使えない結界を攻撃にも使うとは素晴らしいと思います」

 念のため、佐藤にはマジックポーションを渡した。 


キラービーをフマ〇ラーで撃退しました。ああ、ロマンのかけらもない(嘆)。あらすじに追記しましたが、この物語には悪役はあまり出てこない予定です。悪役がいた方が盛り上げやすいのですが、魅力的な悪い奴を書くのは難しくて苦手です。

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