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第147話:ポーションの始末

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 俺はラウンジに戻って羽河を探した。ポーションのことを相談しなければならない。空いている会議室は誰か使っていたので、江宮に頼んで厨房リニューアル準備室を借りた。部屋に入ると、壁際に厨房用の器械がずらりと並んでいた。なんか厨房用機器のショールームみたい。


「ややこしいこと?」

 羽河はストレートに聞いてきた。

「そうなんだ。それも二つ」


 俺は女神様から預かった小さな薬瓶を見せた。

「一つ目はこれだ。スキルをレベル8にするポーションだ。女神様から貰った。誰に使うのが良いと思う?」


 羽河は小首をかしげながら返事した。

「誰に使うかまで含めてたにやんに託したんだよね。だったら、たにやんが決めるべきだと思う」


 俺はしばらく考えてから頷いた。

「分かった。荷が重いけどやってみる。もう一つは戦神の斧だ。平井が炎の剣と両方使うのは無理だ。誰に使わせるのが良いと思う?」


 羽河はノータイムでこたえた。

「魔力的には鷹町さんか夜神さんね。でも鷹町さんは既にレイジングハートを持っているから、必然的に夜神さんしかないわ」

「分かった。ありがとう。イメージ的には花山や青井がぴったりなんだけど・・・。やっぱ羽河は頼りになるな。すっきりしたよ」


 羽河は笑顔で変なことを言い出した。

「多分、夜神さんにはたにやんが説明した方が良いわね」

「え、そうなのか?」

「そうなの。少なくても私が説明するより百倍良いと思うわ」

 羽河の笑顔には変なプレッシャーがあったので、了解するしかできなかった。


 部屋を出てまずは江宮を探して礼を言った。

「終わったよ。ありがとう助かった。ついでに凧や竹トンボもありがとう。子供たちが大喜びしていたぞ」


 江宮は嬉しそうな顔でこたえた。

「浅野や木田から何度も聞いたよ。役に立てて良かった。それと、例の論文というかレポートできたぞ」


 俺は驚いた。

「え?熱吸収の魔法の論文か?器械を作りながら書いてくれたのか?」

「おお、交互にやると良い気分転換になってはかどったぞ」

 江宮は笑いながら答えてくれた。こいつにはかなわないな。


 とりあえず、江宮には話しておこう。

「実はあの論文、先生から王女様に献上して貰おうと思うんだ」

「なんで?」

「先生が魔法学校か魔法科学ギルドに再就職するための実績作りさ」


 これだけで江宮は理解してくれた。先生とは明日打ち合わせてくれるそうだ。丁度、チェンバロの音が聞こえてきたので、食堂に行った。


 今日の晩御飯はうな丼だった。昨日獲れた鰻を早速料理してくれたのだ。平野が丼を雑貨ギルドに注文した時には、何に使うのだろうかと疑問に思っていたのだけれど、もしかすると今日この日が来ることを予感していたのだろうか。


 このうな丼もしょっつるが出来たことによって実現したメニューなんだろうな。腹開きした鰻を蒸さずにたれを付けて焼く関西風のかば焼きだった。しっかり脂がのった濃い目の味付けで、うますぎて涙がでそうだった。


 残念なのはお替りが一杯までという制限だろうか。花山や青井やヒデは食の細い女子に頼んで得たお替りを食べまくっていた。本当は反則なんだろうけど、うますぎるから仕方ないよな。


 デザートは小さくカットしたフルーツや小豆を混ぜたかき氷にミルク味の蜜をかけた、いわゆるシロクマだった。蜜の上品な甘さと香りは蜂蜜を使っているに違いない。昨日女神の森で貰った蜂蜜を使ったのだろうな。これもお供えしなければならないようだ。


 のんびりお茶を飲んでいると水野が食堂に入ってきた。なんか殺気立っているので話を聞くと、ゴミのリサイクル事業が大変だったらしい。昨日から始まったばかりなので仕方ないかもしれないが、役割分担や段取りが一切決まってなかったそうだ。


 混乱する現場で水野が現場監督として孤軍奮闘することで、少しづつ業務として形が出来つつあるらしい。

「レベル25ともなると、村人でも大したものみたいだぞ」


 水野は笑って言った。一般人であれば、どんなに仕事に励んでもレベル10が限界なのだそうだ。レベル25故の怪力(普通の人からはそう見える)で、力自慢の男たちを有無を言わさず従えているそうだ。


「たにやん、俺は感謝しているんだ。非戦闘組を含めてクラス全員でクラン「三年三組」を作ってくれただろ。お陰で今、凄く助かっている」

 水野の笑顔になぜか救われたような気がした俺なのだった。


 平野にお供えを用意して貰いながらポーションのことを相談した。スキルがレベル8まで上がると言うと驚いたが、以外にも平野の返事は「いらない」だった。

「なぜ?」


 平野はきっぱりとこたえた。

「これ以上スキルにひきずられたくない」

 水火刃の包丁にアイテムボックスと鑑定のスキル。これだけでも持て余しているのに、これ以上スキルレベルが上がったら料理人としてのプライドが危ないのだそうだ。


 ポーションを得たのは平野の料理に起因しているので、平野に相談したのだが、あっさり振られてしまった。どうしようかと悩みながら、食堂を出て厨房リニューアル準備室の扉をノックした。


 江宮は冷凍庫(?)をチェックしていた。既に平野チェックは終わったそうで、機器全般の高さと内部の奥行きを調整したそうだ。

「どうした?」

 江宮の質問に俺はこたえた。


「ウエストポーチを作ってくれないか?」

 江宮は驚かずにこたえた。

「ウェストはどの位だ?」


 俺はしばらく悩んでからこたえた。

「多分・・・六十センチ位」

「分かった」


 江宮はにやにや笑いながらこたえた。こいつ絶対誤解しているな。でも面倒臭いので、説明するのはやめた。

「材料はウォーターシャークの皮で頼む」

「鮫皮か・・・」


 江宮はしばらく考えてからこたえた。

「やったことないから失敗するかもしれんぞ」

 俺は頷いてこたえた。


「それでも頼む。どの位あれば作れる?」

「試作する分を含めて一メートル四方位用意してくれるか」

「分かった」


 俺はアイテムボックスを操作してウォーターシャークの皮を1.5メートル四方の大きさで切って、右クリックした。メニューに「皮をなめす」があったので、迷わずクリックした。これでなんとかなるだろ。


「論文なんだけど・・・」

 と江宮は話し始めた。先生と熱吸収に関する論文の打ち合わせを行ったのだが、もしかすると先生と江宮の連名になるかもしれないとのことだった。先生が強く希望されているらしい。


 俺は素直に祝福した。

「良かったじゃないか。俺達の中で歴史に名を残す人間第一号決定だな」

 江宮は頭を掻きながらこたえた。

「そういうのは苦手なんで出来ればパスしたいんだけど」


 相変わらず黒子役に徹するのが好きみたいだ。

「先生は凧が相当気に入ったみたいで、自分にも作ってくれと頼まれたんだ。絵柄は任せると言われたんだが、何が良いと思う?」


 俺は即答した。

「龍だな。この世界と俺達の世界で共通する存在だし、縁起も良い」

 江宮も頷いた。

「流石だな。それにしよう」


 部屋に戻って、お供えを並べた。今日は、ちゃんぽん・うな丼・しろくまだ。目を瞑ると「美味し!」の声と共にペタン、ペタンと音がした。二回目のポーションが貰える日も近いかもしれない。お供えをやめたらスタンプごっこも終わると思うのだが、そうすると別の問題が発生しそうだ。どうしたらいいものか・・・。

戦神の斧は夜神さんが持つことになりそうです。

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