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第129話:商業ギルドと打ち合わせ3

評価ありがとうございました。

「谷山君・・・・」

 俺たち三人だけになった静かな部屋の中で羽河の低い声が響いた。なぜか「たにやん」では無かった。


「な、なにかな?」

 俺は出来るだけ可愛い顔をしながら答えた。江宮は必死に笑うのをこらえているが、羽河の顔は能面のように冷ややかだった。


「冷蔵庫・冷凍庫・製氷機・加湿器・食器乾燥機はいいわ。クーラー見て大体想像はついたから。デザイン料の話も良かったと思う。みんな喜ぶと思うわ。でも・・・」

 羽河の沈黙に耐えられなくなって俺は聞いた。


「でも、何?」

 羽河はいきなり叫んだ。

「ゴムの金貨千枚は何なの?聞いてないわよ!」

「す、すまん。サブライセンスを入れたらノってくるんじゃないかと思って」


「いきなり金貨千枚なんてびっくりするじゃない!おまけに金貨千枚の話がどうしてあっさり決まるのよ」

「そうだね、なぜかな?俺にも分からないや」

 あははははと笑うと、羽河は疲れたようにため息をついた。


「もういいわ。でも今度こそ約束して。大きなあきないの話をする時は、事前に相談して頂戴!分かった?たにやん」

 俺は笑顔で大きく頷くと、早速相談した。


「それじゃあ、今いいかな?」

「え?もうあるの?」

「うん!」

「うん!じゃないわよ。ちょっと心の準備をさせて!」


 羽河がお茶を飲み終わるのを待ってから、俺は話し始めた。

「江宮、化粧水とクリームの瓶、本当はネジ式も出来ているんだろ?」

 江宮は驚いたような顔をした。

「良く分ったな。その通りだ。この世界の技術レベルを考えてコルク栓にしたんだ」


「何の話なの?」

 たまりかねたのか、羽河が話に割り込んだ。

 俺は笑顔でこたえた。

びんふただよ。こっちの世界はまだねじ式が無いんだ」


「ねじ式?」

「つげ義春のことじゃないぞ」

「それくらい分かるわよ」

「だからそのネジをライセンスしようという話さ」


 地球でも瓶の蓋がねじ式になったのはここ百年くらいの話だ。地球規模で考えたら、ネジ蓋は割と新しい発明だと思う。


「幾らで?」

「サブライセンス権と改変の自由も込みで金貨千枚」

「どこに?」

「雑貨ギルド」


 羽河はしばらく考え込んでから頷いた。

「言われてみればそうね。可能性はあるわ。さすがね、たにやん」

「実は器械の第三弾もあるんだ」

「何?」


 江宮の顔を見たら頷いたので、俺は続けて言った。

「シューズドライヤー」

 羽河は歓声を上げた。

「いいわね、それ。私も欲しい」


 お、なんかいいみたい。俺は追い打ちをかけた。

「実はシューズドライヤーに関連して頼みがあるんだ。ブーツの消毒剤と水虫の治療薬を利根川に頼んで作って貰えないかな。シューズドライヤーとセットで売れると思うんだ」


 羽河は笑顔で頷いた。

「分かったわ。私から幸ちゃんにお願いしてみる」

「ありがとう。助かるよ。もう一ついいかな」

「いいわよ」


「さっきの女の子も言っていたけど、トートバッグ用にワンポイントのデザインがあると良いと思うんだ。スマイルマークとかナイ〇のマークとかキースヘリング風とか、この世界でも使える物をアレンジして提案するのはどうだろうか?」


 羽河の目が輝いた。

「著作権的にはどうかと思うけど、いいわね、それ。それにストライプやチェックだっていろんなパターンがあるし、デザインの可能性は大きいと思うわ。木田さんが張り切りそう。みんなと相談して決めるという事でいい?」

「もちろん」


 羽河の機嫌が直ったので、解散となった。利根川の地下室に行くという羽河の背中を見送りながら、江宮が話しかけてきた。

「お前もいろいろ苦労するな」

「そうなんだ。分かってくれるのはお前くらいだぜ」


 江宮は俺の背中を軽く叩いて、そのままラウンジに戻った。江宮はねじ蓋の容器の見本を取ってくるというので、ラウンジで待っていると、クレイモア一行が帰ってきた。もちろん、三平と冬梅も一緒だ。利根川が笑っている所を見ると、うまくいったようだな。三平が笑顔で話しかけてきた。


「たにやん、うまくいったよ。小エビもアサリも取れた!」

 早速見せてもらったが、体長六センチ位のエビと三~四センチ位の立派なアサリがどちらも山ほどあった。

 

「凄いな。大漁じゃないか」

 俺は心から喜んだ。どうやってとったか三平が得意げに説明してくれた。まず、頭の中で小エビをイメージして竿を振ったら、糸の先が網に変化して一投ごとにバケツ一杯ほどエビがとれたそうだ。


 次にアサリだが、冬梅に相談すると、妖怪軍団(小豆洗い・砂かけ婆・猫娘・子泣き爺)をまとめて召喚して、河童と一緒に砂浜を掘りまくって取ってくれたそうだ。三平がジャイアントロブスターをたくさん釣ったので、バイト代として一人(?)一匹やったら大喜びだったらしい。


 対照的に冴えない顔をしていたのは平井だった。残念ながら今日は上に乗れるような大物がいなかったそうだ。この前キングタートルに乗ったばかりなのに、贅沢な奴だなあ。


 冗談で「俺が乗せてやろうか?」と言ったら「良いの?」と目を輝かせたので、慌てて「冗談だよ」と取り消した。すると、平井は本当にがっかりしていた。何を考えているんだ、こいつは。乗れれば何でもいいのか?俺は遊園地の遊具やお前のお父さんじゃないぞ!容器の見本を持ってきてくれた江宮もあきれていた。


 最後に佐藤から足場板とロープを回収しておいた。役に立ったみたい。利根川もヘケトを大量に捕まえたそうだ。蛙から何を作るのだろうか。ガマの油売り?まさかそんなことないよな?


 今日の晩御飯は鳥肉を使ったハンバーグだった。鳥のひき肉と玉ねぎのみじん切りに大葉に似たハーブを混ぜてあり、オレンジベースの甘酸っぱいソースがかかっている。ボリュームはあるのにさっぱりしていて、幾らでも食べられそうなハンバーグだった。


 青井が「俺に必要なのはこれなんだ!」と涙を流しながら五回もお替りしていた。筋肉増やすには良いかもしれないけど、いくらなんでも食べすぎだろ、お前。

 デザートはミントのアイスクリームに小豆餡を添えたものだった。異なる甘さのハーモニーという感じで面白かった。これも今日のお供えに追加しようっと。


 部屋に戻って窓を開け、ちらし寿司・蟹スープ・ミントのアイス&小豆餡・日本茶に似たお茶をセットした。目を瞑ると「美味し!」という声と共に、ペタンという音が聞こえた。なにかまた女神様がおかしなことを始めている気がするが、気にしたら負けなのだ。

ゴムの次はネジネジをライセンスするそうです。こういうのって地味なんだけど、何気に大事なんだよね。基本は大事って言うからな。なんて・・・。

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