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第127話:商業ギルドと打ち合わせ1

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 宿舎に戻ってラウンジに入るとカウンターに呼ばれた。既に商業ギルド一行は到着して会議室でお待ちだそうだ。早すぎだぜ。とりあえず俺は江宮の部屋に行って機械を預かることにした。それ以外の準備は羽河に任せた。


 江宮の部屋に入って冷蔵庫・加湿器・食器乾燥機・冷凍庫・製氷機を預かったが、どこかで見たことがあるような小さな機械がある。気になったので聞いてみた。

「あれはなんだ?」


 江宮は頬を微かに緩めながらこたえた。

「まだ作りかけだ。うまくいくかどうか分からないけど、シューズドライヤーだ」

 俺は驚いた。職業柄真夏でもブーツを履かなければならない俺達の様な人間には必須のアイテムではなかろうか?


「流石は江宮だ。ヒットするぞ、それ」

「だといいがな」

 笑顔になった江宮は機械の説明があるので、打ち合わせに同席して貰うことにした。


 ラウンジで俺と羽河と江宮の分のお茶を頼んでいると、書類入れを持った羽河がやってきた。気合を入れようと思って、会議室に入る前に三人でハイタッチしようとしたが、見事に空振りした。次回は前もって打ち合わせてからやることにして扉をノックした。


 ジョージさんと三人娘が待っていた。挨拶もそこそこにジョージさんが書類の束を差し出した。

「濾過器と植物油の契約書、砂糖・スリットスカート・ワイドパンツ・トートバッグ・ブラジャー・ランタン・添加剤の別紙、以上の正本各二部でございます」


 羽河は謹んで受け取ると、笑顔でこたえた。

「ありがとうございます。確認して問題なければ署名してきます。こちらから納品するのは、植物油は種とレシピ、砂糖は種または苗とレシピ、スリットスカート・ワイドパンツ・トートバッグは型紙、ブラジャーは型紙と取説、ランタンは既にお預けした現物のみ、添加剤はレシピの納品でよろしいでしょうか?」


 ジョージさんは笑顔で頷いた。

「問題ありません。よろしくお願いします。今までお預かりした見本はそのまま頂いてもよろしいですか?」

 羽河は笑顔で頷くと、書類を持って退席した。ひとまず打ち合わせは中断して、先日話題にした魔法科学ギルドについて聞いてみた。


「ギルド長に話したら諸手を挙げて賛成してくれましたぞ。娯楽ギルドと並行しての設立となりますので、私以外に専任を当てることになります。担当が決まり次第、ご挨拶にお伺いしますので、よろしくお願いします」


 ジョージさんの言葉に俺は黙って頷くことしかできなかった。展開が早すぎて、ついていけないよ。お茶のお替りが来たところで、羽河が書類と取説や型紙が入った箱を持って戻ってきた。


「全て問題ありませんでした。植物油の契約書に『原料の採集と製品の製造は全てスラムの住人を雇用して行い、それを王家が監督する』という文言があり、王女の署名があることも確認しました。署名入りの契約書と別紙です。お確かめください」


 ジョージさんが確認してから、羽河が納品物を一つずつ渡していく。植物油の種とさとう大根の現物は俺から渡した。菜種の群生地とさとう大根の育て方は口頭で説明する。シャンプーとリンスのラベルは羽河から渡してくれた。


 菜種が川岸に自然に生えていることを知るとジョージさんは驚きかつ落胆していた。

「春になると黄色い花が咲き、牛馬の良い餌となる雑草としか思っておりませんでした。我々は、目の前にあった宝の山に気が付かなかったわけですな・・・」


 今からでも今年の収穫が可能であることを伝えると、ジョージさんはすぐに立ち直った。

「まずは働き手・作業所・圧搾機の手配が必要ですな。来年のことを考えると、さとう大根用も合わせて農場の手配や各ギルドとの調整も詰めねばなりません。将来的には砂糖ギルドの設立も考えなければ・・・。忙しくなりますな」


 ジョージさんは顔を引き締めると新しい書類を差し出した。

「シュシュも製品化させて頂くことにしました。女神の化粧水、ハンドクリーム、日焼け止めクリーム、携行型のクーラー、生理ショーツ、ナプキン、ショーツ、シュシュ、以上の別紙の雛形でございます。生理ショーツとナプキンのライセンス料は本当に無償でよろしかったでしょうか?」


 俺は大きく頷いた。

「少しでもたくさんの人に使って頂きたいと思って、無償でライセンスすることにしました。ご理解ご協力いただければ幸いです」


 ジョージさんよりも三人娘の方が感激しているようだった。浅野の発案であることを告げると、さらに感動しているようだった。書類は羽河が謹んで受け取った。続いて渡された書類は娯楽ギルドの設立に関する契約書だった。


「拠出金や配当、ギルドの住所、人員、設立に要する費用・手数料などをまとめてあります。雛形を二部用意しましたので、一部は伯爵様に渡して頂けませんか?定款などは別紙にまとめてありますので、そちらもご確認ください」


 もちろん、俺に異論はない。ただ、ここで決めておかなければならないことがある。

「娯楽ギルドの販売についてですが、碁盤などを商業ギルドに卸すときの掛率は定価の七掛けでよろしいでしょうか?」

 俺としては結構強気の掛率だ。事前に羽河と相談した時には六掛けまでならOKと確認してある。しかし、ジョージさんは笑顔で頷いた。


「かしこまりました。七掛けで承ります」

 良かった。これで雑貨ギルドから仕入れるときに七掛け以下にできれば、その差額が娯楽ギルドの利益になる。商業ギルドとしては、定価で販売出来たら三割が儲けになる訳だ。


 俺の笑顔を見てジョージさんは新しい提案をした。

「ショーツやシュシュに使われている『ゴム』という素材は非常に有用かつ応用範囲の広い素材とお見受けします。是非、ゴムを素材として製品を限定せずに活用したく、許諾していただけませんか?」


 俺はにやりと笑った。想定通り!

「かしこまりました。サブライセンス権込みで金貨千枚でいかがでしょうか?」

 ジョージさんは顔色を変えることなく返事した。

「どこまでのサブライセンスとなるでしょうか?」


 俺は即答した。

「デルザスカル大陸全土とします。ミドガルト王国内だけでなく、他国へのライセンスも可とします。他へライセンスする場合の金額等については全て商業ギルドの自由と責任で行うものとし、生活向上委員会への報告やリベート等は必要ありません」


 ジョージさんも即答した。

「了解しました。その条件でお願いします」

 俺とジョージさんが握手するのを羽河と三人娘は呆然と見ていた。金貨千枚の取引が三分で終わったんだもの。しょうがないかな。興味がないのか江宮は知らん顔していた。


 ついでに念のため確認しておく。

「娯楽ギルドの拠出金については、火酒のライセンス料から差し引きして頂くという事でよろしいですか?」


 ジョージさんは笑顔で頷いた。

「もちろんです。今後も同様に我が方からの売掛が発生した場合は、生活向上委員会の口座から引かせて頂きます。娯楽ギルドについては契約成立後、拠出金百五十枚はひとまずお預かりして、一年後清算するという事でよろしいでしょうか?」


 俺は笑顔で頷いた。次はこちらからの提案だ。

ゴムのライセンスで金貨千枚ゲットです。こんだけ稼いで何に使うのでしょうか?

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