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第126話:新スキルの確認

 木工ギルドの馬車と入れ替わりで馬車が四台やってきた。一台は利根川が在籍するクレイモア(リーダーは平井)が湖沼地帯に、残り三台は練兵場に行くのだ。クレイモアには、冬梅と三平が同乗する予定。


 冬梅が抜ける代わりではないが、江宮は商業ギルドとの打ち合わせがあるので、俺達と同行して貰うことにした。また、夜神も役に立ちそうにないから、といって練兵場に行くそうだ。


 ラウンジに行くと冬梅と三平がいた。大丈夫とは思うけど、冬梅に話しかけた。

「あまり特殊な奴は召ばないほうがいいぞ」

 冬梅は笑顔で頷いた。

「大丈夫。今日は今まで召んだ奴だけにするよ」

 

 三平は頭を抱えていた。どうやら平野に無理なお願いをされたらしい。

「ジャイアントロブスターと小エビと貝類を頼まれたんだ。ジャイアントロブスターは大丈夫だけれど、小エビと貝はどうしたらいいのかな?どうやって釣る?」


 俺はしばらく考えてからこたえた。

「小エビは太公望の竿が何とかしてくれるんじゃないかな?貝掘りは冬梅と相談したら良いと思うぞ」

 三平は素敵な笑顔を見せてくれた。

「分かった、やってみる」


 佐藤がやってきて俺に頼みごとをした。

「すまん、先週使った足場板を貸してくれないか」

「分かった。一時的にコネクトするぞ」

 

 佐藤が頷いて差し出した右手を握ると、俺のアイテムボックスを通して佐藤のアイテムボックスが見えた。感覚的には俺のアイテムボックスの中に佐藤のアイテムボックスを開いた感覚だ。


 俺のアイテムボックスの中の足場板を八枚まとめて掴んで、そのまま佐藤のアイテムボックスに移す。ファイルをフォルダからフォルダへ移動するイメージだ。ついでにロープも入れておいた。


 佐藤のアイテムボックスも大きくなったみたいで、3DKくらいの容量がありそうだった。この世界的には十分規格外の大きさだと思う。パーティションの関係で、利根川のは見ることはできなかった。見たくもないが。クーラーは佐藤のアイテムボックスの中に入っていた。


 食堂に行って平野から今日のお弁当を受け取る。中身はまだ分からない、楽しみだな。「あれ出来た?」と聞かれたけど、今朝預かったばかりだよ。明日以降になると伝えると、残念そうな顔をした。


 外に出ると、利根川たちは既に出発していた。俺達も羽河と工藤にクーラーを渡すと出発だ。練兵場に着くと、伯爵と鍛冶ギルドのバーニンさんが待っていた。まずは伯爵からお話があった。


「皆様、レベルアップおめでとうございます。また、新規スキルを獲得された方、おめでとうございます。今週はレベルアップした身体と新規スキルに馴染むための準備期間でございますぞ。来週の森林地帯で十全の活動ができるようよろしくお願いします。

 また、明日以降草原地帯・湖沼地帯で腕試しをなさりたいパーティは、早めに申し出をお願いしますぞ」


 皆は歓声と拍手でこたえた。盛り上がっていますなあ。冷めた目で見ていると、バーニンさんが近寄ってきた。差し出したのは夜神の黒い鞭だった。

「できたんですか?」


 バーニンさんは笑顔で頷いた。

「芯をミスリル線を束ねたものに取りかえました。重さは前と同じですが鞭の威力と丈夫さが上がっただけでなく、魔力の伝導性が飛躍的に向上しましたぞ」


 ふらふら寄ってきた夜神に渡すと大喜びで振り回した。時々先っぽから紫色の光を放っている。電撃の魔法みたい。当たると痺れそうだな。一応聞いてみた。

「どうだ?」

「ごっつええわ、これ」

 満面の笑顔でこたえてくれた。良かったみたい。 


 一応バーニンさんに聞いてみよう。

「お代はお幾らですか?」

 バーニンさんはウインクしながら答えた。

「全て王家に請求いたします。ご安心くださいませ」


 気持ちだけでもと思って、マッドクラブを蒸したものを五杯渡すと大喜びで貰ってくれた。手裏剣やブーメランも好調に売れているようで、一安心。バーニンさんはニコニコ顔で帰っていった。


 ちょっと早いけれどここでランチタイムにした。今日のお昼ご飯はピロシキだった。炒めて味付けしたひき肉と玉ねぎ+潰したゆで卵とハーブを詰めたパンなのだけれど、焼くのではなく、パン粉をまぶして油で揚げているのが日本風だった。

 デザートは紅茶のジェラートだった。紅茶の香りと渋みが口の中の油をきれいに拭ってくれた。


 昼からは、今回のレベルアップで付いた新規スキルの中で気になるものを見させてもらった。まずはヒデと花山に付いた「咆哮」だ。実際にヒデと対面して体験してみると、ヒデが吠えると体が倍以上にでかくなったかのように感じた。

 鬼神と対面した様なプレッシャーだった。ゴブリンやコボルト程度ならこれだけで蹴散らせるのではなかろうか。


 次は楽丸についた「絶影」だ。極論を言うと止まっている状態から瞬時にトップスピードで動けるというとんでもないスキルだった。自動車を例にとると止まってる状態からトップスピードに到達するには、停止→一速→二速→三速→四速→五速トップと段階的に上がっていくのだが、絶影の場合は、停止→五速なのだ。


 瞬間移動とはまた異なる感じで、力を溜める感じも無いのに瞬時にトップスピードになるのだ。さぞかし体に負担がかかるのではないかと思うのだが、それが全く無いらしい。物理や慣性をまったく無視しているのがまさしく魔法だ。持続できる時間に制限はあるみたいだが、文字通りストップ&ゴーで動かれたらお手上げだ。


 花山の二つ目の新規スキルの「強力ごうりき」は文字通り、パワーを増加するスキルだった。体感的にはニ割から三割くらいパワーアップする感じらしい。もともと力強いのにさらに強くなってどうするんだよ。


 初音の「隠密おんみつ」は盗賊シーフや忍者に最適なスキルだった。スキルを使うと、透明になるというか存在感が希薄になるのだ。目の前にいるのになぜか認識できない。悪用するととんでもないことになるかも。


 面白かったのは江宮だ。元々弓道をやっていて天才と言われるほどの腕があったので、なんで今更「弓術」がついたのか本人的には不満らしい。でも、同じタイミングで同じスキルを得た藤原が教えを請いに来たのが嬉しいみたいだ。


 藤原は藤原でティムした馬か何かに乗りながら弓を射るという戦闘スタイルに憧れがあるみたいだ。遊牧民みたい。二人で弓をいろいろ試してみて、藤原に向いた弓を探しているのが微笑ましかった。


 ヒデの地獄の千本ノックの練習に付き合ったり、夜神の電気鞭の練習相手になったり(俺が一歩的にやられるだけ。盾越しでも電撃は結構痛かった)、藤原とウイリアムテルごっこ(絶対に真似しないでください)をしているうちに鍛錬は終了した。


 パーティのメンバーと相談して、明日も練兵場に行くことにする。ヒデがまだ千本ノック用のフォームが固まっていないそうだ。宿舎に戻ると、商業ギルドとの打ち合わせが待っている。

みなさん戦闘力が上がったようです。

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