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第109話:フォースアタック3

 草地に転がっている皆に聞くと、なんとレベルは20に上がったそうだ。キングメタルクラブがきいたんだろうな。びっくりだぜ。ちなみに俺はレベル1のままだった。ここまでくると逆にすがすがしいな。


 ヒデは一撃でぶっ飛ばされたので、打撲だけですんだようだ。骨折もしていない。受け身がうまいのか?すでにポーションとヒールで完治していたが、初音と洋子からみっちり絞られていた。ヒデが言うには・・・。

「俺もな、頭の隅ではまずいと思っているんだよ。でもあいつを見たとたんに足が勝手に動きはじめたんだ・・・」


 強敵と思ったゆえに闘争本能が暴走機関車になってしまったということか。なんとかブレーキをつけなきゃいけないな。この先どんどん強い敵が出て来るのに、いちいち突っ込んでいったら、どれだけ命があっても足りないや。


 俺は次に今回の一番の功労者である平井の所に行った。平井は一条や尾上と一緒にまったりくつろいでいた。

「流石は平井だな。まさか一撃で仕留めるとは思わなかったぜ」


 俺の賛辞に平井は頬を赤らめながらこたえた。

「一撃だから仕留められたのよ。魔力も体力も何もかも全部出し切ったからギリギリで勝てたんだと思う」


 平井は謙虚だった。俺は気になっていたことを聞いた。

「あの時、眼と髪が赤くなったのはなんだ?」

 平井は首をかしげながらこたえた。

「え?そうだったの?分かんない。呪文も唱えてもないし・・・」


 無意識にやっているのだったら厄介だな。まさか火神アグニの化身とか・・・そんな訳ないよな。すると、後ろから伯爵が声をかけてきた。

「タニヤマ様、またしても見事な采配でした」

 俺は後ろを振り向いてこたえた。


「いや、今日は大失敗です」

 伯爵は目を丸くした。びっくりしているみたい。

「どうしてですかな?怪我人も出さずにキングメタルクラブを倒したのですぞ。大手柄ではないですか」


 俺は口をよがめながらこたえた。

「いや、運が良かっただけです。ヒデを止められなかったし、平井も戦わせるべきではなかった。平井の命をかけてまでやることはなかった。いったん引いて、戦力を整えてから挑むべきでした」

 伯爵は腕を組みながらこたえた。


「物事には流れとか勢いというものがございますぞ」

「仰る通りです。しかし、一人も欠けることなく帰還することが絶対の目標なのです。もっと慎重に動くべきでした」

「今日の平井様は戦神の斧を温存しておられました。はじめから決戦を想定していたのでは?」

「いえ、単に切り札は大事にすべきと思っただけです。それに元々平井は剣士です。本来は剣を振りたいと思っているんです」


 伯爵は大笑いした。

「一本取られましたな。勝って靴の紐をしめよ、ということですな。それよりお願いがございますぞ。今日か明日、一緒に冒険者ギルドにお越しいただけませんかな?」

「どうしてですか?」


 伯爵は器用にウインクしながらこたえた。

「キングメタルクラブです。討伐のクエストは出ておりませんが、冒険者ギルドに持ち込んで買取に出せば、それなりのポイントが稼げます。買い取り額も高額になると思いますぞ」

「いつも通り練兵場に来てもらえば?」

「何を仰います!あれをどうやって運ぶのですか?馬車にはとても乗りませんぞ」


 伯爵は両手を広げて反論した。俺は納得した。確かに伯爵の言う通りだ。それにアイテムボックスに入れておいても容積を圧迫するだけだ。

「分かりました。善は急げというから、今日行きましょう」


 俺の言葉に目を輝かせたのは平井だった。

「冒険者ギルドに行くの?」

「おお・・・」

 俺は無意識に後ろに下がりながらこたえた。だって平井さん、何か胸に当たってます。当たってますって・・・何が?


「連れてって!」

 平井は叫んだ。目がキラキラ光っている。

「私を冒険者ギルドに連れてって!」


 スキーじゃあるまいし、どうしたのいったい。ただ納品に行くだけよ。

「冒険者ギルド?」

 回りで何人かの声が重なった。


 それから俺は混乱の渦の中に巻き込まれた。一人でこっそり行くつもりだったのに、平井・鷹町・浅野をはじめとする何人かが自分も冒険者ギルドに行きたいと言い出したのだ。鷹町が叫んだ。


「ロマンだよ。異世界物に必ず出てくる冒険者ギルドだよ。西部劇の酒場だよ。ここに行かなくてどうするの?」

 いずれ嫌でも行くことになるのに何がそんなに好きなの?俺は羽河に助けを求めたが、救いは得られなかった。


「良いじゃない。どっちみちお世話になるんだし、今日は各パーティーのリーダーと有志で行ってきたら?」

 羽河は笑顔でまとめた。皆はもちろん大喜びだ。目立つことが嫌いな俺は伯爵に文句を言おうとしたが、既に逃げた後だった。ちくしょうめ。


 誰かが腹減ったと言い出した。とっくに時間を過ぎていたので、お昼ご飯にした。いつも通り護衛の騎士と教会組にも分けた。もちろん伯爵には文句を言ったが、あっさり謝られてしまったので、それ以上追及できなくなってしまった。案外この人、俺のことを分かっているかもしれない。


 今日のメニューは肉まんだった。普通の合いびき肉ではなくて、遊牧民風というか、ラム肉の細切れと玉ねぎを炒めてハーブと黒胡椒で味付けしたシンプルかつスパイシーな肉まんだった。

 ヘタをくりぬいてチーズとハーブを詰めてオーブンで丸ごと焼いたトマトもうまかった。


 デザートはヨーグルトのジェラートだった。ヨーグルトの甘酸っぱさが、肉の脂をきれいさっぱり拭ってくれた。おまけに冷やしたレモンサイダーも付いていて気分爽快!こういうのを青空の下で飲めるって幸せだな。


 御飯を食べ終わって何の気なしに待機組を見ると、藤原がいない。少し離れた所にいたので、そばに行って声をかけようとしたら、藤原の前に真っ黒い塊があるのに気が付いた。

キングメタルクラブ撃破でめでたしと思ったのに、黒い塊はなに?

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