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日記1 終わりの始まり




男は瓦礫の中で目を覚ます。戦闘服は破壊され左腕はつぶれたようだ。戦闘服の止血機能により潰れた腕は分離され断面は包丁で切られたように平面となっている。

男は状況を把握するため瓦礫を退けようとしたが戦闘服のエネルギーが流出しているため体を動かすこともできなかった。

次に、ドローンを飛ばし救援を呼ぶことにしたが男はドローンから送られた映像を見て絶句する。あたり一面が平面となっていた。

男が戦っていた場所は市街地だったはずだ。並んだ高層ビル群は見事に根こそぎ取られ、地面には落下した残骸とめくれ上がった地面だけ。

男は隆起した地面の層に助けられ衝撃で飛ばさずに済んだようだ。

慌てて、ゴーグルに表示されたMAPから仲間の信号を探すが、近くて2km離れたところで大半は圏外だった。

最後に送られたデータを確認すると、そこにはレッドアラート「アトミック」のマークが表示されていた。

急いで戦闘服の傷を塞ごうとしたが穴は大きく近くのものでは対応できなかった。男は諦め、戦闘服の緊急脱出装置を起動させ、戦闘服解除の衝撃で瓦礫を飛ばすことに成功した。

起き上がった男は近くの板を拾い、太陽の日差しを避けながら2km先の仲間の元へ向かった。

赤道付近でないにもかかわらずものすごい熱を感じたためだった。

空は雲のひとつもない快晴。核弾頭が使用された後の空ではなかった。というより今まで観測されたことの無い天候。


男は仲間の所へ着くまで瓦礫の山と砂しか見ていない。風は強く、四方八方から吹く。まるで竜巻の中にいるようだ。


何とか、仲間の信号の元へ到着した男はそこへ捨てられた戦闘服を見つけた。


「い、生きてるかもしれない……」

男は意識を取り戻してから初めて言葉を話した。

だがその希望は脆く崩れ去ることとなる。

そこから遠くない場所で頭がない遺体を見つけたからだ。

近づいて確認するとアルファ-001、分隊長のマークを発見した。


「なんだ、分隊長か。」

男はそう吐き捨てその場を去る。その分隊長は能無しだった。


この様子だと、生き残ったのが俺だけとかありそうだと思った男は日陰へ行ってうずくまった。

男はそこで1時間ほど感傷に浸っていた。

その間、周囲で爆発音が聞こえたり残骸が落下していたが気にもとめなかった。男は生きる気力さえ底つきかけていたのだ。


しかし、死ぬほど喉の乾きを感じ、居てもたってもいられず再び歩き出す。

水はひとつも見つからなかった。


男はゾンビのように水のことだけ考え、さまよう。日差しはもっと酷くなった。多分、ちょうどお昼時なんだろう。


砂を被って砂漠のように見える市街地でひたすらさまよって数時間、あたりは夕方になりかけた頃、ようやく水分を発見した。


軍のトラック、男はもつれる足を引きずって荷台に登る。そこには鉄の箱に入った水と食料。日陰で開封するため運転席へ移動したとき、驚愕の事実が発覚。これは敵のトラックだったようだ。

中には2名の死体。どちらも破片でやられている。

この際、関係ないと男は2人を下ろし座席に座る。

水の箱を開けると三本のボトルを発見。一本目で全身に水をかけ洗う。僅かでも放射能を流すために、二本目は全部飲みほした。次に食料、これは残った水と一緒に保管することにした。

今日はここで休息する。男は死んだように寝た。





男は喧騒によって起こされる。

気がついた時あたりは車内ではないことを確認し、銃を抜く。

だがすぐに銃を戻した。

男がいた場所は医療キャンプだった。


驚いたことに敵兵おも収容され、生き残った人々を集めている様だ。

それでも周りの人数は3人と治療に当たっている2人の計5人。

そのうち2人は重症ときた。これは助からないだろう。

数分も経たないうちに1人は息絶え、もう片方は既に死んでいた。

残りの2人のうち片方は酷く咳き込んでいる。


男は2人に感謝の礼をした。


時刻は既に深夜くらいか。焚き火のあかり以外何も見えない。


「ギース・グレイハルト。エルトリア兵だ。お2人は?」


「ギースさんですか。よろしくお願いします。この方は話すことが出来ないので私だけお話させて頂きますね。名前はソル。ソル・レイレンシア。」


「ソルさんか、地元はカルディナか?」


「えぇ、カルディナ出身です。看護婦をしておりました。」


「そうか、助かった。ありがとう。」


「いえいえ、こちらこそです。生きてる人に会えると思いませんでしたので。」


そういう彼女も至る所が怪我しており、看護服らしきものは血で濡れていて医療従事者と思えないほど損傷していた。


「隣の方は?」


「この人は多分、隣町の人かと思います。会ってから1度もお話にならないのでどこか悪いのでしょうね。」

彼女は肩を落としてそう話す。話せない彼はひたすら頷くだけであった。


「もう、夜も遅いですし捜索もできません。見張りを交代しつつ眠りましょう。初めは私で、次に彼が最後はギースさんの順番でお願いします。交代は2時間毎で。」

そういい、彼女はテントからでる。俺は1番出口に近い場所を陣取って寝ることにした。彼は焚き火から動くことは無かった。




次に目を覚ましたとき、彼女の悲鳴が聞こえた。

飛び起きると、テントの支えを喉に指して自殺した彼がいた。

交代の順番が来なかったため、既に朝だった。


彼女は腰を抜かし、顔を抑えて突っ伏す。

俺は2名の遺体と同じように布に寝かした。


「限界が来たんだ。たぶん話せなかったのはショックからなんだろう。兵士が戦場から帰ってきた時、同じように自殺するケースがある。」

ソルにそう伝える。

振り向く彼女の顔は涙に溢れぐちゃぐちゃになっていた。

泣けるだけまだマシと言えよう。この子は精神を崩壊させてない。


彼女から離れ、テントからでる。外は昨日見た景色と変わらない。

日差しは強いままだ。肉体の以上を常に感じる。

俺もそのうち、動けなくなるだろう。彼女もそうだ。

テントに戻ると、彼女が遺体を焼いていた。


「このまま、放っておいてもダメでしょう。せめてお墓は立てないと。」


2人は遺体を白骨化させた後、埋め墓を立てる。お墓に礼をして、その場から移動することにした。


俺は計画を立てた。このまま歩き続けても汚染で死ぬだけだ。なら汚染されない状況を作ってしまえばいい。そのためにはどうするか、エルトリア軍基地をたよる、これしかない。市街地は破壊尽くされ、医療機器が残っている可能性が低い。なら地下まである基地はどうか。

2人はテントを細工しマントに変え、それに身を包み移動する。テントの布は幸い、軍の物資で紫外線対策がされているだろう。


ソルから俺を見つけてくれた場所まで案内してもらい、再びトラックへ到着。

「ギースさん、確かこのトラック壊れてたかと。」


「俺は機械修理技能持ちでな。」

俺はそう言って右手を伸ばす、すると腕が分裂し小さい腕が10本現れる。トラックをスキャンして最低限、走行可能な状態まで快復させた。


「よしっ、これでエンジンをかければ……」


俺がエンジンスイッチを押した時、システムの盗難防止システムが起動する。車両上部からカメラが現れ、俺たちをスキャンした。


「ソル!離れろ!」

俺が叫んだ時には遅く、トラックが自爆した。


衝撃で俺は宙へ投げ出され、それに合わせるかのように強風が吹き、風に流される。あっという間にトラックはみるみる小さくなり、地面の衝突と同時に気を失った。




気がついた時今度は、機械の中で目を覚ます。


それは見覚えのある機械、ではなく機体だった。



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