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見るなのタブー

「ねえねえ、みっちゃん」

「なあに、けんちゃん」

「鶴の恩返しってあるじゃない?」

「あるね」

「罠にかかった鶴をおじいさんが助けてあげて、恩返しに来る話」

「そうそう」

「あれってさ、浦島太郎に似てるよね」

「確かに」

「浦島太郎は、亀を助けたお礼に竜宮城に連れていかれて、乙姫様から玉手箱をもらうんだけど、決して開けてはいけませんよって言われたのに開けちゃっておじいさんになっちゃう」

「そうだよね」

「鶴の恩返しも、決して中を覗いてはいけませんよって言われたのに、おばあさんが誘惑に負けて見ちゃうんだよね」

「しちゃいけないって言われるとしたくなるのが、人間のさがなんだろうね」

「あれって、見るなのタブーって言われているんだね」

「見るなのタブー?」

「そう。世界各地の神話や民話で、よくあるらしいよ。何かしているところを『見てはいけない』と禁じられていたのに、それを破ってしまって悲惨な結果になる。あるいは、決して見てはいけないと言われていたのに見てしまい、恐ろしい目に遭っちゃうというパターン」

「子どもなんかはさ、食べちゃだめよと言われると食べたくなっちゃうよね」

「うん、旧約聖書では、箱舟で有名なノアが酒に酔っぱらって裸で寝ていたところ、息子のハムが見てしまい子孫が呪われたと言うし、ソドムとゴモラが滅ぼされる時に神の使いから『後ろを振り返るな』と言われていたのに、ロトの妻が振り返って塩の柱になった話があるよ。ギリシャ神話では、パンドラの箱を開けてしまったために、あらゆる災いが世界中に飛び出したって話があるよね」

「そう言えばいっぱいあるね」

「これさ、どうして最初に理由を言わないのかな?」

「理由って?」

「実は私は、あの時に助けていただいた鶴なんです。お礼がしたいから着物を織らせてくださいって言えば良いんじゃない?」

「うーん、そう言うと『いやいや、礼なんか良いよ』って言われると思ったんでしょ」

「なるほど。結局、鶴だとわかってしまったから飛んでいっちゃうんだけど、おじいさんおばあさんたちは、もう娘として暮らしていたんだから、鶴でも別に出て行けとは言わないんじゃない?」

「うーん、確かに、出て行けとは言わないと思うけどね」

「ところでさ、夜八時以降は食べないって言ってなかったっけ?」

「えっ? ああ、ダイエットね」

「それは食べて良いの?」

「あ、これ? 太るから食べるなと言われても、やっぱり食べたくなっちゃうのよ」

「だよね、これが人間のさがだよね」

「わかってくれてありがとう」

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