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嶋子と亀姫

「ねえねえ、みっちゃん」

「なあに、けんちゃん」

「今日さ、子どもたちに浦島太郎の話を聞かせようと思ってね、調べてみたんだよ」

「えっ? 何を?」

「浦島太郎についてさ。読み聞かせる前に自分がよく知っておかないといけないでしょ? 学校の先生だってさ、明日の授業の準備をしておくって言うからさ」

「へー、けんちゃんすごいね」

「それでさ、面白い事がわかったから聞いてくれる?」

「いいよ、どうぞ」

「浦島太郎って、浦嶋子うら・しまこって名前なんだね」

「浦、嶋子? 苗字が浦で、名前が嶋子?」

「そうそう」

「男なのに嶋子なんだ」

「うーん、遣隋使けんずいし小野妹子おののいもこも男だしね」

「あっ、けんちゃん、今ネットで調べたらね、奈良時代の頃まで、男女問わず幼名に子をつける事が多かったらしいよ。親しみやすいという理由なんだって」

「へー、そうなんだ。じゃあ、浦島の名前が嶋子でも全然問題ないね」

「うん。それにね、浦って苗字も調べてみたら、全国に一万七千三百人もいるんだね」

「へー、そうなんだ、びっくりだ」

「だよね」

「みっちゃん、浦島太郎伝説はね、全国で四十か所くらいあるみたいだよ。その中でもベースになっているのが、京都の丹後半島に伝わる浦嶋子の伝説なんだって」

「なるほどね」

「丹後の国風土記では、筒川村に住む筒川嶋子つつかわのしまこは、別名を水江浦嶋子みずえうらのしまこと言い、容姿端麗で優雅な若者だったんだって。年齢は24,5歳だったと。嶋子は一人で海に出るんだけど、三日三晩経っても魚は取れずに諦めていたら、一匹の五色の亀が釣れたんだって。その亀を舟に乗せて寝ていたら、いつの間にか亀が美しい女性に変わってた。彼女は、嶋子と親しくなりたくて来たって言うんだよね。この女性が、乙姫の原型みたいなんだけど、つまり、乙姫が嶋子に告白したんだよね」

「へー、そうなんだ? それほど嶋子はイケメンだったんだろうね」

「この女性は蓬山とこよの国の亀姫で、二人は結婚するんだけど、三年経って嶋子が故郷に帰りたいと言い出すんだよね。両親に会いたいと。亀姫は、永遠に私と一緒に暮らすと誓ったのに、と泣くんだけど、仕方なく嶋子を帰すんだよ。そして、私を忘れないでください、私とまた会いたいと思うなら、決してフタを開けないでって言って玉手箱を渡すんだよね。嶋子も決して開けませんって約束するの」

「うんうん、それからどうなる?」

「嶋子が帰ってみると村はなく、すっかり景色が変わっていた。三年だと思っていたら三百年が経っていた。そして、十日ほど経って、亀姫に会いたくなって玉手箱を撫でていたら、居ても立っても居られなくなってフタを開けちゃったら、おじいさんになっちゃったという話なの」

「そうなんだ。悲しい話だね」

「思うんだけどさ、亀姫は嶋子に復讐したかったんじゃないかな?」

「復讐?」

「うん。愛していたからこそ、裏切られた恨みが強かった。もしかしたら、玉手箱を開けたくなる催眠術でもかけていたのかも?」

「えっ、まさかの催眠術師?」

「あるいは、もし嶋子が開けなかったとしたら、遠隔操作で開けられるようになっていたとか」

「えー? 亀姫恐るべし」

「そう、実は浦島太郎は、亀姫悪女伝説の話なのかも知れないね」

「なるほど」

「現場からは以上です」

「了解」

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