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7 白い天井


 そして、俺は――白い天上の部屋で、目を覚ました。


 左腕は点滴の針が刺してあるから、動けないけど……右の腕は、もっと重くて暖かい感触を感じた。


 ちょとだけ……甘く感じる匂い。明るい色のショートカットと、寝息を立てるピンクの唇が――俺の視界の中にある。


「あ、あのさあ……ちょっと、榊エリカさんだよね? どうして、俺の腕を枕にしてるのかな?」


 俺の声に――エリカは『うーん……』と声を漏らして……寝ぼけた顔を上げてると、

 俺と目が合ってから、約三秒――顔を真っ赤にして、いきなり立ち上がった。


「え、えと……エ、エイジ君、おはよう!」


 そう言ってから……暫しの沈黙。

 俺は――ちょっと沈黙に耐え切れなくなって、思わず声を掛ける。


「あ、あのさ……エリカ……まずは、状況説明をしてくれよ?」


 しかし――俺の言葉なんて、何の意味も無かったんだ。


「え、え、え……エイジくーん! よかった、生きてたんだねー!!!」


 いきなり抱きしめられて――温かくて柔らかい感触と甘い香りに、俺は生涯初めて神様間に感謝しながら……それでも、強い疑問を懐いていた。


「えーと……エリカ。とりあえず……落ち着こうか? 俺は今置かれている状況が、一ミリも解っていないんだけど?」


「う……うん、解って……もう少し待って……私も、落ち着くから……」


 俺を抱きしめたまま、エリカはそう言って――俺が待つこと、十七分。


 エリカは黙ったが――今でも俺をギュっと抱きしめている。

 伝わってくる体温と匂いと……柔らかい感触が、兎に角ヤバい。


「えーと……エリカさん? そろそろ……良いかな?」


 俺が恐る恐る口にすると――


「うん……良いよ、ごめんねエイジ君……私も、もう落ち着いたから……」


 それからエリカが語ったのは――俺の醜態だった。

 ドローンから落ちるなんて……マジで、あり得ないだろう?


「え……どうしたの、エイジ君? 顔が……真っ青だよ?」


 それも、そうだろう――史上最強と謳われた異能者である筈の俺が……敵に撃墜された訳でもなく、よりにもよって、自分で足を踏み外して墜落するなんて――


「ア、ハハハ……何て言うか、もう何でも良いかな……」


 張り詰めていたモノが――バシッと音を立てて切れた気がする。

 確かに異能者って言っても、能力を発動していなときは唯の人間だけど……俺だけは違うと、思っていたんだ……


「なあ……エリカ? 悪けど……もう、一人で大丈夫だから……帰ってくれないか?」


 後で思い出すと――なんて自分勝手な台詞だと、自分でも思うけど。

 この時の俺は……いっぱいいっぱいだったんだ……だけど……


「駄目だよ、絶対駄目……こんなときに……エイジ君を、一人に何てさせないから……」


 エリカはさらに強く――窒息しそうなほど、俺を胸に抱きしめた。


「……う、うぐぐ……」


 柔らかくて幸せな感触と、温かい体温を感じながら――俺は再び、意識を失った。


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