魔法が取得できない
打倒、明智ミヤビと掲げて早くも2カ月が経過した
アルバイトをしてどうにか手を出すことができた魔術書を毎日、読み漁っている
しかし、いまだ何一つ習得することができていなかった
「なぜだっ!?」
火、水、雷、土の各属性の初歩の部分を読み、詠唱を繰り返すも成果はなし
安全面も考慮し、学園の裏山で結界を張り何が起きようと問題ないはずだった
もしかすると内なる力が解放されるという淡い期待は始まって三日で消え去っていた
意地を通し、俺は虚空に手を伸ばし、全力で突き出して本日、何回目になるかも忘れてしまった唱える
「燃えろ! ファイアーボール!!」
拳は空を切り、擦り出す衣擦れの音が鳴り響くも魔法を出なかった
今のは初歩中の初歩の魔法。ファイアーボールだ
名前の通り、拳から放たる火の玉は魔法障壁などの遮るものがなければ可燃性のものは燃えてしまう威力はある
今、暮らしている王都ではこれを自由自在に操り、料理するのが日常だ。むしろ、俺みたいにガスコンロを使う方が少数派である
子供ですら制御することが簡単な魔法を俺はいまだに取得することができずにいる
「はあ、はあ、今日はこれくらいにしておくか」
なぜか息が苦しくなった俺はカバンに取り付けた腕時計の時間を調べる
気が付けば周囲は暗くなっており、だいぶ遅くなっていると思っていると短針は8時を示していた
明日もまだ学校がある。早く帰って勉強し、寝なければ生活に支障が出ると思い帰り支度をした
その時だった
「……」
ぞわっとした。急いで振り返るも誰もいない森の暗闇に幽霊でも出たかと思ってしまう
しかし、そこには誰もおらず暗黒の世界が広がるだけだった
「さ、ささっと帰るとしよう」
怖くなった俺はいつもの三倍近い速度で駆け足で帰った