謎の力
「君は誰なんだ?」
天道は目の前の少女に問いかけた。
「私の名はユキ」と少女は静かに答える。
「さっき『見つけた』って言ってたけど、どういう意味なんだ?」
天道はさらに詰め寄った。だが、ユキは黙り込むだけで答えなかった。
「なぜこんな場所にいるんだ?」
天道は苛立ちを隠せず、さらに質問を投げかける。
「君がまたここに来ると思ったから」とユキは目を伏せながら答えた。
「どういうことだ?」
天道は眉をひそめ、疑問をぶつける。ユキは天道の目をじっと見つめた後、短く答えた。
「着いてきて。そこで全てを話す。」
「冗談じゃない!何もしてないのに命を狙われるなんて……これからどうすればいいんだ!」
天道は苛立ちと不安が入り混じった声で叫んだ。
「それなら、私たちの隠れ家に来る?」ユキが提案する。
「隠れ家?」
天道は戸惑いながら尋ねた。
「ええ。私たちが暮らしている場所よ。多くの人が身を寄せているの」
天道はしばらく黙り込み、考え込んだ後、絞り出すように言った。
「少し考えさせてくれ。」
彼はユキに背を向け、歩き出した。
二時間後、天道は廃墟と化した街に辿り着いた。
「なんだよ、これは……」
目を見開き、呆然と立ち尽くす。ユキが辛そうな表情で口を開いた。
「ここは、1週間前にデネリウス軍が襲撃して廃墟になった街よ。」
「デネリウス軍?」
天道はその名前を繰り返した。
「昨日、あなたを襲ったロボットの軍団よ」とユキは唇を噛みながら答えた。
「なんだって?どうして俺が狙われるんだ!」
「それはまだ分からない。でも、あいつらは世界を支配しようとしている軍隊よ。」
夕方、自宅に戻った天道はベッドに倒れ込んだ。
「一体、これからどうすればいいんだ……」
彼は荷物をまとめながら、自分を嘲笑うように呟いた。
「たった一日会ったばかりの女の隠れ家なんて、無防備にもほどがあるよな……」
そのとき、不意に涙がこぼれ落ちた。
「なんで泣いてるんだ、俺……」
床に落ちた涙の滴が光を放ち始めた。
「なんだこれ……」
床には謎めいた文字が浮かび上がる。天道は読み上げた。
「汝の眠りし力、決して悪用に使ってはならぬ……」
彼の胸中に新たな疑念が湧き上がる。
「眠りし力……?俺にそんなものがあるのか……」
その時、外から爆音が響き渡った。天道は窓から外を覗き込む。
「なんだ、この音……!」
街が炎に包まれていた。そして、あのロボット――デネリウス軍の姿があった。
「やつらか……!」
ロボットに囲まれ、天道は絶体絶命の状況に追い込まれていた。
「貴様は我々にとって大きな脅威だ。命令により、ここで殺す」
隊長らしき人物が冷たく告げる。
「くそっ!俺はまだ死ねない!」天道は叫んだ。
その瞬間、再び轟音が響き渡る。
「何事だ!」隊長が怒鳴る。
「未確認の機体が接近中!」兵士が慌てた声で報告する。
謎の機体はデネリウス軍を次々と突破し、天道の前で静止した。
「助けてくれたのか?」天道はコックピットを覗き込む。だが、そこには誰もいなかった。
「無人機……?どういうことだ……?」
機体は天道を誘うように開き、中へと迎え入れる。彼は迷いつつも、その操縦席に座った。
「なんだ、この懐かしい感覚……」
無意識に操縦桿を握ると、機体が天道に応えるように動き始めた。
「行くぞ……!」
天道は機体「真王」を駆り、デネリウス軍と戦い始める。
「わかる……相手の動きが見える!」
やがて、真王の右手が変形し、天道の意志に応えるかのように巨大なビームを放つ。
「グラビティ・ブラスト……!」
敵を一掃し、デネリウス軍は撤退を余儀なくされた。
「これが……俺の力……?」
緊張から解放された天道は、そのまま眠りに落ちた。
――世界はまだ、彼が手にした力の意味を知らない。




