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未来への道  作者: BAKU
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出会いと始まりの日

世界第決戦の遺産。


約千年前、地球は荒廃していた。空は灰色に染まり、土地は砂漠化し、人々は飢えと貧困に喘いでいた。絶望的な環境の中、一つの国が戦争を仕掛けたことを皮切りに、世界全体が争いに巻き込まれていった。その戦火は100年にも及び、地球全土を焼き尽くした。


――それを人は後に「世界第決戦」と呼ぶ。


100年戦争の終焉は、一人の英雄によるものだった。彼が成したことは語り継がれ、戦後の世界は平和と繁栄を目指して進み始めた。荒廃した地球を再生し、協力の末に生まれた平和は、長い年月を経て確固たるものになった。


だが、その裏側ではいまだ貧困がくすぶり、不満と絶望から生まれるテロは絶えることがなかった。


――そして迎えた西暦3673年。かつての戦争の教訓をかみしめながらも、現代の人々は平和を享受していた。


だが、その平和を「退屈」と感じる少年がいた。


少年の名は天道剣

天道剣は、どこにでもいる普通の少年――とは言い難い。彼は学業も運動もトップクラス、全校の注目を集めるカリスマ的存在だった。日本屈指の名門高校に通う彼には将来を嘱望される才能があり、その輝きはどこか近寄りがたさを伴っていた。


しかし、内心では退屈していた。平穏すぎる日常。予定調和の未来。彼は心のどこかで、この閉じた世界を壊すような何かを渇望していた。


その「何か」は、突然やってきた。



――崩れる日常。


ある日の午後、天道は友人と遊ぶために訪れた高層ビルで、突如としてその瞬間に遭遇する。


轟音――。

巨大な爆発がビルを揺るがし、破片が吹き飛ぶ。衝撃で壁に頭を打ちつけ、意識が闇に沈む直前、彼の耳に混乱した人々の叫びが聞こえた。


目を覚ましたとき、天道の目の前に広がっていたのは悪夢そのものだった。


「……なんだよ、これ……」


崩壊したビルの中、床に転がるのは数えきれないほどの死体。その匂いが鼻を突き、辺りには無残な景色が広がっている。


外から聞こえてくる轟音に、天道は震える体を無理やり立たせた。恐る恐る崩壊した壁の外を覗くと、そこには兵士たちとテロリストが火花を散らす凄惨な戦場があった。


「……テロ、なのか……?」


状況を理解しようとする間もなく、さらに悪夢は続く。


崩壊した壁の向こうから、見たこともない巨大な機械――ロボットが姿を現した。その鋼鉄の巨体は無表情で死体を焼き払い、かすかな命をも残酷に踏みつぶしていく。その様子を目撃した天道は、反射的に逃げ出した。


「なんだよ、あのロボットは!」


息を切らしながら逃げ惑う中、天道はそのロボットたちがテロリストたちさえも容赦なく殺していく光景を目撃する。まるで何もなかったかのように、ロボットたちは戦場を一掃し、去っていった。


天道はなんとかビルから脱出したが、その光景は目に焼き付き、頭から離れなかった。


その夜、彼は震えながら布団の中で目を閉じた。だが、眠ることなどできない。昼間に見た地獄の光景が、閉じたまぶたの裏で繰り返し蘇った。


出会い

翌日、天道は学校を休んだ。昨日の出来事を確かめたくてたまらなかった。何かが自分を再びあの場所へ引き寄せる――そんな衝動に突き動かされ、彼は爆発のあったビルへ向かった。


瓦礫の山を踏み越え、昨日の自分が立っていた場所までたどり着く。そこにいたのは、一人の少女だった。


長い黒髪と白いワンピース。場違いなほど静かにそこに立つ少女は、どこかこの世の存在ではないような、不思議な雰囲気をまとっていた。


天道は思わず息をのむ。その目は少女の姿に釘付けとなり、言葉を失う。


しばらくして、少女がこちらに気づいた。まっすぐに天道を見つめると、彼女は一言だけ口を開いた。


「……見つけた。」


そのたった一言が、天道剣の運命を大きく変えた。


少女との出会い――それは彼の人生の歯車が大きく回り始めた瞬間だった。平和な世界の裏に隠された真実が、徐々にその姿を現そうとしていた。

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