表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/10

四字熟語

新しい物語を書いていきます!

おもしろいと思ったらブクマや評価が励みになりますので是非お願いします…是非!!(懇願)

 日差しは窓から突き抜けるように差し込み、一之瀬(いちのせ) 隼人(はやと)の顔を照りつける。瞼を焦がすかのような光は隼人の意識を覚醒させる。

 隼人は目を覚ますと枕元の時計を胸に抱き込んで時間を確認する。

 アナログ時計は針を回し続け、1番短い針があと少しで9を指すことに気がつき、一瞬の間を置いてから隼人は事の重大さに気づく。


「遅刻だ……」


 言葉にして状況を整理する。

 今日は異能力養成学校の入学式で……9時までに着かなきゃいけなくて……。


 ブツブツと呪文のように口にしながら、ハンガーにかけてある制服を手に取り光の速さで着替えるとゴミや脱ぎ捨てられた服で散らかった廊下を進み、下駄箱で靴を履く。


 腕時計を確認すると8時57分。ため息を吐きながらも隼人は足に力を込める。

 そうすると隼人の足元には電流が走り、塵埃が舞い上がりはじめ、エネルギーで空気が歪んだようにも見える。


「疾風迅雷っ!!」


 朝の静かな町に大きな声を鳴らす。隼人の元いた場所には先に舞った塵埃だけが残り、隼人の身体は素早く動く忍者のように家の屋根を蹴りながら物凄い速度で町中を進んでいく。

 隼人は普通の人間ではない。言霊の力を持った選ばれた人間だ。その証拠に常人ではありえない電流を起こし風のように空を走る事ができる。


 学校までの距離約10キロメートル。しかし、風と化した隼人に3分もあれば充分すぎるほどの時間であり、あっという間に学校につく。


「おい、お前。ギリギリだぞ」


 先生らしき人が校門を閉めようとしている。重々しいゲートの合間になんとか滑り込み、冷たい視線で見送られながら校内へと入っていく。


 校門をくぐったすぐ先には見るものを圧倒する建物がそびえ立つ。あまりにも大きく、真っ黒に塗りたくられた建物は、住民からはブラックボックスなどと呼ばれている。

 この施設は言霊の力を持った者だけが入学し、言霊の力を磨くために存在する。

 これは言霊の力を持つ者にとっての義務教育であり、力の制御と解放をして、その力を社会に貢献させるための学校である。故に力をもたない者とは全く別の人生を歩むこととなる。


 隼人は入学式用の体育館の案内板を見つけ、あまり整備されていない渡り廊下を渡ると体育館の熱気が噴き出してくる。体育館には既に全員が集まっている様子だった。隼人は最後尾にこっそりと並ぶと9時のチャイムと同時に学校長らしき人が壇上に出てくる。30代後半といった感じで、厳格な目付きに、うっすらとした髭を生やしている。スーツを着ているが筋肉が滲みでている。おそらく戦闘のプロでオーラまで隠しきれていない。その校長がマイクを自分の口元に直すと、新入生に向けて話しかける。


「言霊を持った学生達、入学おめでとう。ここでの長話は無駄だな、君達は今から自分の進みたい分野を選んでからそれぞれの教室に行ってもらう事になる。本館から各々受付を済ませてくれ。じゃあ解散」


 入学式が簡潔に終わり、体育館からは人がゾロゾロと出ていこうとする。もちろん隼人は1番入口に近いので1番最初に出ることになる。

 各所に先生が立っていて本館まで案内され、本館へ着くと受付の人が手招きしてくれる。受付の人からは、笑顔で1枚の紙とペンを差し出される。

 そこには、個人情報の他に進路希望が大まかに記されている。


 国のために働く公務員。

 言霊を持った敵対勢力を排除する兵士。

 言霊の謎を解明する研究員。


 このうち3つから進路を選ぶのだが、隼人は兵士の欄に思い切り丸をつけた。小さい頃から悪者を倒すのには憧れていたし、隼人自身の能力が戦闘に特化されたものだったからだ。受付の人は隼人が書類を書き終えるのを確認すると、部屋までの行き方を教えてくれる、その部屋に行くまでの廊下を渡っている間の隼人はこれからのことが楽しみで仕方なかった。


 無駄に長い廊下を渡りきり突き当たりの部屋に着く。中学校の時と変わらぬスライド式の木のドアを思い切り開けると、そこにはスーツ姿の先生が一人、教卓を前にして立っていた。


「君が一番目だ、好きな席に座ってくれ」


 簡単に纏められた一言から、無駄な事はしない性分である事が伺える。寄り道回り道ばかりをしてきた隼人とは真逆の人間である。


「あと2人来る。それまで待っててくれ」

「あと2人だけ!? 入学生は他にも沢山いましたよ?」

「後で説明する、落ち着いて待ってろ」


 口調が鋭くなり、それ以降話はしてくれないであろう雰囲気になる。隼人は多少驚きながらもこれからの事を勝手に想像しながら10分を費やした。それから木のドアを開く心地良い音が聞こえて、それと同時に優しそうな男と、可愛らしい女の人が入ってくる。


「二人とも好きな席に座ってくれ」


 入ってきた二人は入口の近くにあった席に適当に座る。隼人だけが先生の真ん前に座り、教室の中の空間には妙なくすぐったさが残る。

 先生は2人が座るのを確認すると口を開く。


「俺の名前は赤瀬(あかせ) (りゅう)だ。そして、これからこの4人がチームとなる。」


 ここまで淡々と言うと一息つき、質問をしたそうにうずうずしている隼人に、喋らせまいと軽く目で威圧したあとにもう一度話を続ける。


「ここは学校と言うよりも訓練所だ。君らが去年まで行っていた中学校とは違う。ここを拠点とし生活をし、訓練や座学を受けてもらう。それと並行して兵士としての仕事も行ってもらう」


 龍は三人の目をそれぞれ見ると、全員の意識がしっかりと自分に向いているのを確認してからひとつの提案をする。


「これは基本的な事だろうから言っておくが、互いに自己紹介をしないか。名前も知らないのはおかしいだろう」


 その提案に隼人が真っ先に反応する。手を思い切りあげ、龍の許可が下りる前に勢いよく席から立ち上がる。


「俺の名前は一ノ瀬 隼人! 兵士になって悪さをする奴を倒したいと思ってる! 俺の人生の目標はこの世の全てを扱える『全知全能』の四字熟語を手に入れる事! ちなみに俺の今の四字熟語は『疾風迅雷』! これからよろしく!」


 全てを言う隼人に対して、その教室にいる全員が半ば呆れた顔をする。情報とは戦の時代において物凄く重要な事を隼人は理解していない。

 少しの間が空いてから男の方が手を挙げて立ち上がる。


「僕の名前は二宮(にのみや) 裕太(ゆうた)です。特に高い志は持っていませんが、これからできる仲間は大切にしたいと思っています。」


 それだけ言うとすぐに座る。色々と含みのある言い方だったが、仲良くできそうな事に隼人は安心する。どうして能力名を明かさなかったのかは隼人にとっては謎だったが。

 そんな事を思ってるうちに、女の人が立ち上がり自己紹介を始める。


清水(しみず) 花梨(かりん)です! 頭を使うより体を動かす方が得意なんで兵士を希望しました! 能力名は全知全能です……なんちゃって」


 冗談混じりに終えた花梨の自己紹介は掴みどころのないものだった。面白く顔立ちも良いので、普通の高校に行っていれば間違いなく、その高校の華となっていただろう。

 とても個性的なメンバーで結成されたその班長の龍は、少し笑うと班員に向けて最初の司令をだす。


「1時間後にトレーニングルームAで俺と実戦を行う。君達の適性診断みたいなものだ、基準点に満たなかった者は地獄のトレーニングだからな」


 兵士を希望する三人の目付きがガラっと変わる。もちろん隼人も完全に「ヤル気」に満ち溢た目で龍を睨みつけている。

疾風迅雷:

【意】素早く激しいさま。速い風と激しい雷から。

【技】疾風と迅雷を自在に操る事ができる。能力者自身のコントロールが大切(対面戦闘タイプ)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ