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4. 勇者隊の始まり

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 ラスタール帝国はさまざまな魔物を編成して大陸全土に向けて進軍を開始した。

 帝国と隣接するレイティス皇国は大陸最強と謳われる皇立騎士団を有している。だが、その精鋭部隊をもってしても魔物の進撃スピードをわずかに鈍らせるにとどまり、前線は皇都の目前にまで後退を余儀なくされた。

 元来、皇国には魔法を使える者がいなかった。早くから南東に「中洲」と呼ばれる大穀倉地帯を抱えたため、呪術や占術に頼らずとも国民を養っていくだけの文明をいち早く築くことができたからだ。

 そのぶん大規模戦闘に備えて組織戦に長けた騎士団が整備され、戦時に召集される傭兵たちも数多く皇国に滞在している。

 傭兵の中には、魔術を心得えた異国人もおり、彼らが登用されて宮廷魔術師として働く。そのような事情があるため、皇国の魔法技術は大陸内でもひときわ低い。

 魔物の中には通常の武器では傷さえつけられないものもいる。宮廷魔術師を総動員しても皇国の劣勢は否めなかった。

 対して他の中小国は皆なんらかの魔術や剣術に長けている。反面、魔術や剣術に頼る戦闘を行なうため正規軍の物理的な攻撃力に乏しい。帝国はそういう国に対して魔法の効かない魔物を主力に据えてくる狡猾さを見せ、いずれの国もあと一息で帝国に膝を屈するところまで差し迫っていた。


 そんなある日、レイティス皇国に一人の青年が現れる。異世界から来たと称するその青年は、国王に認められて皇国軍師の座に着いた。

 軍師はすぐに帝国以外の国と通じて「反帝国連合」を成立させる。そして諸国から選りすぐった精鋭部隊を編成するとそれを率いて瞬く間に帝都を攻略したのだった。

 これにより帝国軍は統制を失って魔物たちは四散し、各国は大きな脅威を取り除くことができたのである。

 しかし、散り散りになった魔物が各地に棲みつき、住民に危害を及ぼすことが懸念された。


 レイティス皇国はラスタール帝国を所領し、自らを「レイティス王国」と称することとなる。

 そんなレイティス王国軍師は、帝都を攻略した精鋭軍の中から高い戦闘力を有する者を選抜して「勇者隊」を六つ組織する。彼らは各国家直属の「勇者」となって、その国に巣食う魔物を掃討する役目を与えられるのであった。



 レイティス王国には帝都攻略戦の主戦力となった第七騎士団において「異端児」と称される青年がいた。

 彼はつねに騎士団の先陣を切っていた。無謀なほどの勇ましさで血路を開き、ラスタール帝国軍に大きなくさびを打ち込んだのだ。


 またレイティス王国にはあらゆる魔物の知識を有する壮年の賢者がいた。

 皇国軍師に魔物の情報とくに弱点を伝え、帝都攻略戦において反帝国連合の優位を築き上げた逸材である。


 レイティス王国領内にセスティナ聖国という小さな自治国家がある。豊穣の女神セスティナを奉り国教としていた。神話の時代より「中洲」と呼ばれていた大穀倉地帯の上流域に位置する。

 神官や巫女により神の御業「奇蹟」が呼び起こされていた。そして数十年に一度と頻度こそ少なかったが女神の降臨し、聖国には神気があふれている。

 「反帝国連合」に居住する怪我人や病人の多くが入国していた。神官や巫女の中でも戦場に赴いて「奇蹟」を呼び起こす者をとくに「戦神官」「戦巫女」と呼んでいる。その中でもとくに「神の娘」と称された天才戦巫女は、先陣を務めるレイティス王国第七騎士団に従事して彼らを鼓舞し続けた。


 レイティス王国の北に位置し王国に次ぐ国力を有するセラフ公国には双剣の届く範囲の敵を一瞬で斬り倒す女戦士がいた。

 彼女は剣舞の使い手であり、一年に及ぶ帝国との戦いでも傷ひとつつけられたことがない。

 騎士団が空けた血路をさらに大きく押し広げる任務を確実に遂行する。

 セラフ公国は交易国家であり、魔術付与武器が広く流通していた。民兵であっても金さえ払えば魔術付与武器が使い放題なのである。女戦士の所有する双剣も敵を撫でるだけで斬り裂く魔術が付与されていた。


 レイティス王国の南西に面するセタガ侯国に天下無双の剣士がいた。侯国は神話の時代にボッサム帝国の南部に位置した地域である。レイティス皇国成立後、冊封により興された国だ。

 野獣が数多く棲むため国民男子は全員がなにがしかの剣術道場に通っているほど剣術が広く普及している。

 中でも硬い鱗を持つグラリア、皇国軍師の言うリザードマンをも一刀両断する剛の者がいた。


 セラフ公国の北に隣接するシン侯国は魔術が盛んである。

 手付かずの自然が豊かなため魔力に満ちていた。物理技術よりも魔術のほうがはるかに効率のよい地なのだ。

 反面金属の精錬が不得意であり、剣や矛などの鋼素材はセラフ公国から輸入している。

 反帝国連合の魔術付与武器や防具はセタガ侯国の装備鍛造にシン侯国の魔術師が立ち会って魔術を練り込んでいた。それが天下の市場であるセラフ公国から各国へ買われていく。

 そんなシン侯国において素性不明の天才魔術師がいた。

 とくに「隕石落とし」やエナジー系魔術という膨大な魔力を必要とする魔術を用いて侯国に攻め寄せる魔物を次々と撃退している。彼無くして侯国の存立は成り立たなかったろう。


 以上六名がレイティス王国直属の「勇者隊」の一員になり、領内の魔物を掃滅する旅に出かけることとなった。




    了


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