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魔法司書さん的童話考察  作者: セルバ
9/11

ヘンゼルとグレーテル II


誰もいない夜の教室で、目暮と向かい合っているってのも気まずくて俺は口を開いた。


「どうして目暮はここにいるんだ?」


「んー…とね。忘れ物をしたから」


「俺と同じじゃん。ってかなんで一瞬考えたんだよ」


「…双葉くんなら言っても大丈夫か考えてた」


「ふーん…」


なんか腑に落ちない気もするが、それ以上追求するのも面倒なので黙った。

彼女は忘れ物を取りに来たと言うわりに、手には何も持っていない。まだ探している途中なのだろうか。



「それで、双葉くんの探し物は見つかったのかな?」


「ちっ、それが無いんだよな」

「奇遇ね。私も」


俺は忘れ物が見つからなくてかなり焦っているのに、目暮は余裕そうに微笑んでいた。夜に取りに来るほどなのだから、見つからなかったらそこそこ焦ると思うのだが。



「あーっ、もういいや。見つかんないから家に帰ってもう一度探すわ」


「そっか」


「俺はもう帰るけど、目暮はどうする?」


俺が尋ねると目暮は目を伏せた。長い睫毛が綺麗な顔に影を落とす。


「ん。私もついていく」


そのまま俺たちは教室を出て、あのトイレに戻っていった。





「は⁉︎嘘だろ⁉︎」


あ か な い


窓が開かない。



「…っ‼︎おかしいだろっ‼︎内鍵なのに開かないって…‼︎」


「…まぁこの校舎も古いし、どの窓も立て付けが悪いしね」


「さっきは確かに開いたんだ‼︎突然開かなくなるなんておかしいだろ‼︎」


どうすればいい。本当にまずい。


「こうなったら…、窓を割るしか…」



「おすすめはしない」



俺が呟くと目暮がボソッと言った。


「窓なんて割ったら警備員がすっ飛んで来るよ」


そうだ。確かにこの時間帯は警備員が見回りしているはず。

頭を抱えこんだ。


ーー詰んだ。


詰んだなんて、リアルで初めて使ったよ。

これほど「詰む」という言葉が相応しい場面があるだろうか。


「別に、一生出れないってわけじゃないでしょ?いいじゃない。暫く学校にいれば」


「…え」


「まさか怖いなんて言わないよね?」


ニヤリと笑う目暮にカッとした。


「んなわけねーだろ!平気だよ、そんくらい」

「じゃあ暫くこの学校で仲良くしようか」


そういうと目暮は俺な腕を引いてルンルンと歩き出した。なんだか乗せられてしまったようで悔しい。



「それにしてもあっついなー」


じっとりとした空気が肌にまとわりつく。なぜかあんなに元気だった蝉の声も聞こえない。



「ねえ、こうやってただ廊下を歩いてても退屈じゃない?」


目暮が不意に俺を見つめてきた。


「怖い話でもしようよ」


思わずギクリとしてしまった。

怖い話は、ちょっとばかり苦手だな、なんて。さっきトイレで声を上げたのも見栄を張っただけかな、なんて。



「ところで双葉くんは童話は好きかな?」


「童話?」


「このシチュエーション、ヘンゼルとグレーテルによく似てると思うんだ」



ヘンゼルとグレーテル…?

ああ、あれか。幼い兄妹が夜に追い出されてお菓子の家にたどり着くって話か。



「どこが似ているんだ?」


「夜に家を飛び出して、学校まで来た。おまけに学校からは出れないじゃない」


「俺がヘンゼルで、お前がグレーテルって訳か」


「そう。そして物語でもその日は満月の夜だった」



そっか。満月の夜だったから道に落とした石が見えたんだっけ。

ふと窓の外を見やる。


そこには見事な満月が浮かんでいた。



「でもここはお菓子の家じゃない」


「そうかな?お菓子の家ってただ、お菓子でできてるだけじゃないじゃない」


「そこまでヘンゼルとグレーテルについて覚えてねーから」


ヘンゼルとグレーテルはお菓子で何をしたんだっけ。

そこからどうなったんだっけ?





「魔女に、喰われるのよ」





目暮はなんでもないように微笑みながら言った。


「喰われかけた、が正しいけどね」


「おいおい、喰われる方ってまさか…」


「そ。ヘンゼルの方。背後には気をつけてね♪」



そう言われると、本当に背後に何かがいるような気がして、

バッ‼︎

と背後を振り返った。


当然だがそこには誰もいない。


「…つ。何を安心してんだ、俺は」


どうも動揺しすぎだな。

今の段階では、2日に一回とか自分では異常なほど早いペースで更新してます。

ので、そのうち遅くなるかもしれませんが見捨てないでください(笑)

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