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魔法司書さん的童話考察  作者: セルバ
8/11

ヘンゼルとグレーテル 〜グリム童話〜 (case2 双葉俊)

ホラーテイストにしたいつもりです。


苦手な人ごめんなさい。

**


「おい、目暮‼︎‼︎返事しろよ‼︎‼︎」


俺の叫びに返す者はいない。

じっとりとした空気が肌にまとわりつくだけで、音一つ聞こえなかった。



そう、聞こえない筈なのに


後ろから聞こえる足音は誰なんだ。


油のささってない機械人形のように、ギコギコと首を後ろに捻る。



そしてそこにいたのはーーーー









最悪だ。


週末明けは期末テストだってのに数学の参考書を学校に置いてきた。


特にこの期末は落とすわけにはいかないんだ。

俺は絶賛受験生中。この地域の高校は内申点がものを言うので、学校のテストとて手を抜くことは許されないのだ。

ましてや俺の行きたい鶴見ヶ丘高校は甘くない。県内でもトップクラスの進学校なのである。



前回の中間は数学が一番悪かった。

これ以上内心は落とせない…



いけないことだと分かっていながらも、俺は夜の学校に参考書を取りに行くことにしたんだ。


受験に失敗するのと、先生に叱られること。


今後の人生においてどっちの方がリスクが高いかは一目瞭然だ。


真夏の夜は少し不気味な気もするがリュックを背負って玄関を出た。


「あんたこんな遅くにどこに行くのよ」

「忘れ物とりに学校。すぐに戻るから!」


俺が言うと母さんは何かを察したように無言で送り出した。



外では夜中でも元気に蝉は鳴いている。

蝉の声が響きすぎて、もはや静寂を感じるほどだ。

「岩にしみ入る蝉の声」とはよく言ったものだ。





本来なら、この時間に学校は空いてない。残業している教師たちもとっくに帰っている時間だ。


今ここで無理くりドアを抉じ開けようものならセンサーに反応して、防犯会社の人が飛んでくることになる。


そうなるのはめんどくさいので、表面上は学校に入るのは不可能なのだ。



そう、“表面上”は。



俺はこの時間に学校に入るのは裏技を知っている。知っていたから来たのだ。



ポイントはトイレの窓。


俺はトイレ掃除が担当だ。

テスト前に忘れ物をこうしてしてしまった時のために、こっそりと窓の鍵を開けた状態で閉めている。

誤解しないで欲しいのは、テスト前にしかやってないということ。


しかしトイレの窓が開いていたらセンサーの意味が全くない。


窓を開けている俺が悪いのだが、なんとなく大人の間抜けさに嘲笑してしまう。




トイレの窓に行くと、手はず通り鍵はかかっていなかった。

念のためゆっくりとスライドさせて、音を立てないようにする。


そのまま俺はストン、とトイレの地面に着地した。



はい、余裕。



あとは教室に行って参考書を取るだけだ。


そろりそろりと教室に入り、自分の机を覗き込む。



「よっこらしょっ、と。…ーーえ?」



な…い?


参考書が…無い?


嘘だ。

家には確かに無かったんだから。

教室にも無いとなるともう心当たりがない。



「ったく、マジかよ…」



「…探し物…?」


「ヒッっ‼︎‼︎」



突然背後から声がした。

この校舎には俺以外いない筈なのに…。


恐る恐る振り向く。


そこにいたのは、クラスメイトの目暮輝美だった。



「なんだよ、お前か」

「こんばんは、双葉くん」


ニコッと笑う目暮。

しかし本当に可愛いな…じゃなくて!


なんでコイツはここにいるんだ…?



教室の窓から差し込む月明かりが彼女の顔を照らす。



その夜は満月の夜だった。


読んでくださる方、本当にありがとうございます。


基本短編にしていくつもりなので、途中からでも気軽に読んでください。

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