ヘンゼルとグレーテルⅣ
かなり間を空けて申し訳ございません。
忙しい期間でした。読んでくれてありがとうございます。
「くっそ…。あいつふざけるのもいい加減にしろよ」
突然おかしな話をしたと思ったら廊下を駆け出してしまった目暮を探して早30分。
『そうだ、血痕を探してみようよ』
どうでもいいよ。
腹を刺された生徒の幽霊なんて信じてないし、早く帰りたい。
深夜の学校で血痕を探すなんてことがまずおかしいんだ。
見つけてどうすんだ?
本当にトモダチになるつもりかよ。
歩いていると武道場に着いた。
剣道部が置きっ放しにしている木刀を掴んだ。
…うん。
鍵が閉まっているんだし、俺たち以外に人がいてもおかしくない。怪しいやつだったらこっちが危ないからな。
幽霊なんかにビビってるわけじゃないからな。
木刀を手にしたまま廊下に出る。
目暮と合理したらもう一度トイレに行ってみよう。勘違いだったかもしれないじゃないか。
蝉の声も、もう聞こえない。
聞こえるのは自分の足音だけ。
なのに、どうして…。
後ろから足音が聞こえるんだ。
俺が止まると音も消える。
気のせいか?
早く出てこいよ。目暮。
「どこにいるんだよぉ〜」
『ズット、背後にイルジャナイ』
…え。
空、耳か?
「目暮‼︎」
『背後に、イルワ』
「違う!お前じゃなくて目暮だよ!」
空耳じゃない。
疑うことが許されない。怖くて後ろを振り返れない。
『今でも友達を探しているんだって』
目暮の声が蘇った。
『ミィーツケタ』
腕にヒンヤリとした感覚が走る。
「うわぁぁぁぁ‼︎‼︎‼︎」
慌てた俺は木刀を背後に振り下ろした。
ほら、幽霊ならどうせ当たらない。
案の定、当たった感覚は…あった。
は…?
何故俺の服に返り血がついているんだ?
『トモダチに、ナロウネ』
彼女は、血まみれで笑っていた。
目暮だった。
「はっ?おま、どうして…」
そのまま目暮は俺の脇に包丁を刺す。
そして…。
*
「ニュースをお伝えします。昨日未明S県の中学校で、その学校の生徒とみられる少年の遺体が発見されました。死因はわき腹に刺された刃物とみられています。なお、警察は…」
僕は朝のニュースをみて唖然とした。
「えっ⁉︎これあんたの中学じゃない⁉︎」
母さんも驚いている。
僕だってもちろんそうだ。
クラスメイトの双葉くんとはあまり話したことはないけれど、クラスメイトが死ぬなんて誰が予想できるだろう。
ニュースの続きを見る。
双葉くんは、どうも木刀を持っていた。近くに血痕の付いた木刀が転がっていたらしい。
けれどその血は誰のものかもわからない。双葉くんの服に返り血がついているから誰かを殴ったとみられているが、近くに遺体などはなかったようだ。
本当に、彼しかその校舎にいなかった。
学校でも、その話題で持ちきりだ。
噂によると、校内の防犯カメラに双葉くんは映っていたらしい。
「目暮」
と、叫びながら。
目暮って、誰なんだろう。
うちの学校に目暮、という苗字の人ははいない。
*
それで、しばらくしてから分かったことなんだけど、以前にも腹を刺されて死んだ生徒がいたらしい。
その生徒の名前は、
「目暮」
だそうだ。
彼は存在しない幻のクラスメイトを追って殺された。
何故こんなことが起こったかはわからない。
けど、ヘンゼルのように夜の校舎に迷い込んだ彼は魔女に喰われた。
それだけなのかもしれない。
双葉の返り血。木刀の血痕。
既に死んだ者のDNA鑑定は不可能ですね。
目暮がラスボスなのは分かりやすかったですね。それしか選択肢がないのですから。