ヘンゼルとグレーテル III
「まぁヘンゼルとグレーテルの余談は置いといて、本題の怖い話をしようか」
いや、ヘンゼルとグレーテルでもちょっと怖かったんですけど。
チキンな俺の本能と、女子の前で情けない態度をとりたくない俺とが、なんだかせめぎあっている。
結果、見栄っ張りな俺が勝ってしまった。
「ふーん…暇つぶしにはなるだろうし、なんか話してみてよ」
やっとのことで言った声は震えてなかっただろうか。
「そうこなくっちゃね。私が今から話すのは、この学校であった本当の事件のこと…」
*
そんな昔でもないちょっと昔のことなんだけどね、この学校に一人の生徒がいたんだって。
大人しくて成績もそこそこいい子だったんだけど、友達がいなかった。
当たり障りのない子だったからね。
問題児でもなく、本当に普通の子。
そんな普通な子に限って残酷な事件が起きた。
高校一年生の愉快犯。
話題性欲しさに殺人事件を起こした。
狙われたのはその子。
居残りの校舎で、
ハラを、人差し。
翌朝惨殺されたその生徒が見つかったけど、
誰も、一筋の涙も流さなかった。
*
「そして、その血痕は今でもどこかに残っているのでした。めでたしめでたし!」
「めでたくねぇよ」
「その子は 友達が最期までできなかったのが心残りで、今でもトモダチを探しているんだって。血痕を見つけるとその子に会えるんだって」
「友達になってやったら?」
「ううん。私じゃ絶対無理かな」
目暮はふるふると首を振った。
俺としては、“で、オチは?”ってかんじなのだが。
「そうだ、血痕を探してみようよ」
「ヤダ」
「ほら、そう言わずに。私は向こうを探してくるからー!見つけたら教えてね」
そう言うなり目暮は走り出してしまった。
そうして、俺は一人取り残された。
ありがとうございました。